Hands 和了役

   (34)てんでんバラバラ


 麻雀覚えたての頃、手の内にとあるときが出た。思わずポンと言うと、「アホか、お前は!
 (そうか、これはポンできんのか....) 次に上家がを切ったので「チーッ」と云ったら、今度は殴られた、なんて話はなかったけど。(笑)

 「ほいじゃあ、集めてカンってのもやったろう?
え〜え〜、やりましたとも。(^-^; でもね、あれは明カンじゃなくて暗カンだった。(笑)

 こんな経験はσ(-_-)だけじゃないと思うが、いずれにしてもこんなものはポン・カンできるわけがない。しかしところがギッチョンチョン。たしかに中国でもポン・カンできないけれど、自分で3枚集めた場合は それなりに1セットの組み合わせとして認められるルールがある。

  の3枚1セットを紅喜(ホンシー)と呼ぶ。「(ホン)」は紅中(ホン)の紅ではない。中国では、めでたいことは紅色で表す。めでたい組み合わせだから紅喜というわけだ。そのルールでは、配牌に紅喜(ホンシー)があると、その時点で、「紅喜(ホンシー)、紅喜(ホンシー)=めでたい、めでたい)」と言ってご祝儀をやりとりするという。

 この紅喜、日本のローカルルールでも、豆三元まめさんげん)とかいう名前で一翻と認められるという。それも配牌でご祝儀をやりとりするのではなく、普通の面子として扱われるらしい。なら、そのルールではポンもできるのかな?。

 中国の紅喜も、ご祝儀をやり取りしたら終了ではない。特殊なアガリ役の1面子として手牌で使うこともできる。しかしそれについては後回しにして、とりあえず風牌の話を先にする。

 三元牌が紅喜なら、風牌だって同様である。、あるいはなどの3枚1セット風喜(フォンシー)と呼び、配牌にあるとその時点でご祝儀をやりとりする。また特殊なアガリ役の1面子として手牌で使うこともできるのも同様である。

 おまけに配牌でとあるものは四風喜(スーフォンシー)、4枚揃いであるから、とうぜん3枚セットの紅喜風喜より値段が高い。

 こういう変則組み合わせを有効とするのは数牌にもある。 という組み合わせは幺喜(ヤオシー)、五喜(ウーシー)、九喜(チョーシー)と呼び、それぞれご祝儀の対象となる。紅喜風喜はともかくとして、実はこの異種同数字牌3枚1セットが本来の麻雀の組み合わせ。

 現在の麻雀は1種類に4枚の同一牌がある。そこでという同種同数字の組み合わせ=刻子を作ることが可能となっている。しかし麻雀が現在の形になる前は、同一牌は1種類に2枚であり、字牌は現在のような形で存在しなかった。

 そこで順子以外にできる形は、 という異種同数字3枚の組み合わせしかなかった。これを連子(レンツ)といい、連子(レンツ)のみが得点の対象となるメルドであった。※詳しいことは郭雲亭に会ふの記を参照されたい。

 もちろんこの連子の時代には159という牌だけではく、234678の牌による連子も有効であった。それが牌のデュプリケーション化とともに同種牌による3枚セット、すなわち刻子が台頭し、連子は自然消滅した。しかし頂牌である159だけ、幺喜五喜九喜としてローカルルールに残っているわけである。

 まぁ、そいでも紅喜や風喜、あるいは幺喜・五喜・九喜なんかは話が判る。しかし次の形の1セットなどがご祝儀対象と云われると、さすがにウ〜ン。

両幺挟風(リャンヤオチャオフォン)
一萬西一筒(任意の幺牌2枚に任意の風牌1枚)

両風挟幺(リャンフォンチャオヤオ)
南一索西(任意の風牌2枚に幺牌1枚)

 こんなのはまだまだあるぞ。

孔雀東南飛(ホーチャオトンナンフェイ)
一索東南
 “孔雀()が東南(恵方)へ飛んでいったから目出度い”って、ちとこじつけじゃないのか....

西北飄(シーペーピャオ)
西北白
 “つむじ風(飄=)が西北へ巻いていった”って。孔雀東南飛を使ったから、今度はを使いたかっただけじゃないのか....

撃鼓咢曹(チークーアースォ)
白一筒二索
 大勢()で太鼓を打つ。そりゃあまぁ、は太鼓、はバチに見えんことはないが...※撃鼓咢曹には、「大勢が言い争う」の意もある。

 しかしこんなんで驚くのはまだ早い。ローカルルールとなれば何でもアリ。それが下記にあげた乱子系の組み合わせ。北方系統の役ということだが、本当にこんあるかしらん。(?_?)。

乱数和(ランシューホー):数牌14枚、かき集め。
二萬五萬六萬七萬八萬八萬九萬一索二索三索三索二筒一筒一筒

乱中和(ランツォンホー):タンヤオ牌14枚、かき集め。
二萬五萬六萬八萬八萬八萬八萬二索三索三索二筒七筒八筒八筒

乱将和(ランチャンホー):258の数牌14枚、かき集め。
二萬二萬二萬二萬五萬八萬八萬二索五索五索八索八索二筒八筒

乱七対(ランチートイ):乱対子の七対子。
一筒一索三筒三索六萬六筒八索八筒九筒九索東西白發
 ルールによっては数牌の対子に限られるらしい。って何がルールなんだ。(笑)

乱対々(ラントイトイ):連子の対々和。
一筒一索一萬三筒三索三萬六萬六筒六索八索八筒八萬九筒九索

乱混一色(ランホンイーソー):混一色牌14枚、かき集め。
一萬一萬三萬三萬三萬三萬五萬六萬六萬九萬西西白中

乱清一色(ランチンイーソー):清一色14枚、かき集め。
一萬一萬一萬三萬三萬三萬五萬六萬六萬七萬九萬九萬九萬九萬

乱幺九(ランヤオチュー):19字牌14枚、かき集め。
一筒一索一萬一萬一萬九筒九筒九索九索東西西西西

乱老頭(ランロートー/役満貫):19牌14枚、かき集め。
一筒一索一萬一萬一萬九筒九筒九索九索九索九索九萬九萬九萬
 うみゅう、いくら乱れ打ちでも、こりはムツカシイ....

乱字和(ランツーホー/役満貫):字牌14枚、かき集め。
東東東東南西西北北白白白發中
 これも相当むずかしそうだ。

乱風一色(ランフォンイーソー/役満貫):風牌14枚、かき集め。
東東東東南南南西西西西北北北
 こりゃあ、むずかしさ一番だろう。

 たしかに役満クラスは大変と思うが、「組み合わせ」というより、“勝っ手にやっとれ”という感じ.... ほいじゃあ、我々はこういう組み合わせにまったく縁がないのかというと そうでもない。ひょっとしたら、下記のような形に対して点数を払ったりしてないか?

一萬五萬九萬一索四索七索一筒四筒七筒東西白發

 そう、かの有名な十三不搭(シーサンプター)、俗名、十三バラバラだ。(笑)
いやあ、こんなアホなモンに点棒は払っとらん」というなら、これはどうだっ!間違いなく点棒払っているだろう。

一萬九萬一索九索一筒九筒東南西北白發中裏向き

 ではローカルルールはともかくとして、中国公式ルールでは、このたぐいの役は採用されていないのかというと、実はちゃんとある。まずは泣く子も黙る(笑)組合龍(ツーハーロン)。

一萬四萬七萬二索五索八索三筒六筒九筒

 これだけ見ると(@_@)であるが、並べ替えるととなっている。つまり組み合わせると一気通貫(龍)。そこで俗名(-_-)ばらばら一通とか、筋一通。しかしなんだか目がチラチラしてくる....

 この組合龍で大事なことは、一つの筋は同種の数牌でなければならないこと。つまり は筋牌で並べ直してもホントにバラバラ。  これでは筋が通らない。(笑) 

 でも思うけんど、ばらばら一通があるくらいなら、こういうでたらめ一通があってもいい。いつか中国関係者と会う機会があったら、とにかく数牌で1から9まで揃っている形をでたらめ一通として採用するよう、提案してみよう。点数は1点でもいい。(^-^;

全不靠(チェンプーカオ)
一萬四萬七萬二索五索八索三筒九筒東南西北白

 全部ばらばら(不靠)
となれば、十三不搭(シーサンプター)とよく似ている。しかし十三不搭は配牌が対象であるのに対し、全不靠は手作りOKである。

 また十三不搭は数牌がバラバラでありさえすればいいのに対し(筋となっていなくても良いし=、異種数牌が同じ筋でも良い=  )、全不靠は必ず異種数牌の筋となっていなければならない。つまり組合龍形になっていなければならない。

 そこで例題の形はの三門張であるが、でアガると組合龍(ツーハーロン)が同時にできる。そこででのアガリが最高目ということになる。

※「靠」は「側に寄る」とか「ささやく」という意の字。
 「告」は宣告の告で、「はっきり告げる」の意。その「告」に「非」が加わると、「はっきり告げるに非ず=ささやく」の意となる。「ささやく」ためには側による必要がある。そこで「側による」の意が生まれた。その靠をさらに「不」で否定する。そこで不靠は「側による」の反対で、「離れる=ばらばら」の意となる。


七星不靠(チーシンプーカオ)
一萬四萬七萬二索五索三筒九筒東南西北白發中

 全不靠と非常によく似ている。七星(チーシン)とは北斗七星の意であるが、ここでは7種の字牌を表す。そこで七星不靠は字牌7種が揃っていることが前提となる。とうぜん数牌は組合龍の形にはなり得ない。とはいうものの、どれをとってもてんでんバラバラなんか本格的なドンジャラのような....

 漢字といっても、もはや日本と中国では発音はもとより用法も字体も異なる。いまやまったく異なる文字といっていい。麻雀ゲームもまったく同じで、同じ道具を使って見た目なんとか似ていても、日本と中国では囲碁と連珠ほども異なる。

 それはそれでいいけれど、それほど内容・発想が異なる中国麻将を、あたかも全麻雀の代表のごとく、国際ルールと称するのだけは勘弁しちくれ....

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