チーポンのとき、一般麻雀では発声のあと捨て牌し、そのあと目的牌を取得する。しかし純麻雀では発声のあと目的牌を取得し、そのあと捨て牌する。これは別に純麻雀独自の方式ではない。競技麻雀では、だいたいこの方式で行われている。競技麻雀が後切りとしているのは、もちろん摸(取牌)のあと打というのが原則だからである。
純麻雀や競技麻雀が後切りでプレーされていることに対し、以前、「後切りは先切りより時間がかかる。これは早く打つという純麻雀の考えと矛盾しているのではないか」という疑問が呈されたことがある。しかし決してそんなことはない。
たしかに純麻雀ではどんな局面でもノータイムで打つことを前提としている。いわゆるシンキングタイムというものはない。そこでコンスタントにおおよそ2秒半前後で摸打される。しかしノータイム=早切り競争ではない。常に2秒半前後で摸打すれば充分である。
すなわち一般麻雀より早く摸打されることになるのは、結果であって目的ではない。そこで仮りに先切りが後切りより多少短時間で行為完了できるとしても、摸打の原則を曲げてまで対応することではない。
そして実際には、先切りが後切りより短時間で行為完了できるというのは、単なる錯覚にすぎない。それどころか先切りと後切りでは良くても同タイム、平均すると先切りのほうが時間がかかる。
まず「良くて同時間」というのは簡単に理解できる。
先切り=捨て牌する→取牌する→副露する
後切り=取牌する→副露する→捨て牌する。
順序が違ってもやることは同じ。であれば合計タイムにしても同じようなもの。
では順序が違っても合計タイムは同じほどであるのに、どうして先切りは後切りより短時間で済むという錯覚があるのか。それは先切りでは先ツモが行われているからである。
上家の行為が完了する前にツモア動作を開始することを先モーション、ツモ牌までしてしまうことを先ツモという。両方とも非常によろしくないが、特に先ツモはイカサマの始まりと云われるほどのよろしくない行為。ところが先切りでは錯覚によって、この先ツモが堂々と行われている。
すなわち先切りであっても、捨て牌した段階で行為が完了しているわけではない。そのあとチーポン牌を取得し、副露を終えて完了である。しかし多くのプレーヤーは捨て牌した段階でチーポンが完了したと錯覚している。下家も同じ錯覚をしているので、上家の捨て牌が済んだ段階で摸動作を開始したりする。
上家がチーポン牌を取得するために手を伸ばすのと、下家がツモのために手を伸ばすのが同時であると卓上で手がぶつかる。「失礼」と云って、そのときのタイミングでどちらかが手を引っ込める。こんなもん、先モーションの下家が失礼に決まっているが、時には上家は、下家が先ツモを滞りなくお済ましになるまでチーポン牌の取得を控えたりする。
チーポン牌を取得しても、そこで完了したわけではない。その後、副露の作業が待っている。とても「短時間で済む」どころの話ではない。
この先切りの悪弊は身に染みついているので、急に後切りでプレーすると、どうしてもモタつくことがある。しかしそれをもって「後切りは時間がかかる」というのは、本末転倒である。この部分は慣れの問題にすぎない。
チーポン時に限らず先ツモを励行すれば、たしかにゲーム時間は全体的に早くなる。むかし知人の経営していた「騎士」という雀荘に通っていたことがある。アットホーム的な雀荘で、メンバーは常連ばかり。そんなこともあってか、そこではツモは4人がほとんど同時に連続して行われていた。
東家が切る前に北家までツモが終了しているので、東家が打牌すると同時に、南・西・北家が連打する。途中でポンがあると、「おっ」という感じで、壁牌めがけて牌がぞくぞくと戻ってくる。(笑)
それこそ半荘平均30分、連荘が無ければ20分というゲームであった。しかしこれは一般道路における信号無視麻雀みたいなもの。純麻雀の求めるノータイム麻雀とは問題が異なる。
|