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マングローブ林の外側には広大な干潟が広がっています。そこは川から砂が運ばれてきて堆積し、やや硬い地面が形成されています。
干潮の時間、その干上がった地面を歩いてみると、いくつもの動物たちの痕跡、また動物そのものを見つけることが出来るでしょう。
左写真>広大な干潟の土が全て耕されたかのように柔らかく浮いている。歩けば、ふかふかとし、自分の足跡がしっかり残ってしまう。潮が引き始めたばかりの干潟ではこんなことにはならないのに、何故だろう?
よく見てみれば、地面を小さな土の粒が埋め尽くしている。掌でそっと押さえてみれば、すごくふかふか!
これは一体なんなのだろう?
しばらく歩いていると、僅かに水が残る水路と思しき流れの岸に、蠢く無数の小さな丸いものが見える。
あれは、なんだろう?
近づいてみると、いつのまにかその影は消えている。
まだ遠くにも見えるのでそちらへ向かってみるが、近づく頃にはもう消えている。それの繰り返し。埒があかないので、今度は走って行く。すると・・・
ミナミコメツキガニ
種子島以南の暖かい地方の干潟や海岸線に生息する小型の蟹。
潮が引いた陸地に現れ、表面の泥をその湾曲したハサミ足で摘み上げ口に運ぶ仕草が、杵で米をついて粉にする様子に似ている為にこのような名前がついたと考えられる。
ミナミコメツキガニのこの行動は勿論、採餌行動であり、彼らは口に運んだ泥の中の有機物だけを濾しとって食べている。残って吐き出された泥は丸まった粒状になり、彼らの移動後にその跡に残される。
これがふかふかした泥の正体。
干潟の富栄養化を防ぐとともに、無酸素状態の泥に酸素を供給して、細かい有機物を更に分解してくれるバクテリアの活動を促すことに一役かっていると言っていいだろう。
ミナミコメツキガニの体は丸く、横歩きよりも前後の移動の方が得意そうである。大集団となって同じ方向に行進していく様子から、外国では兵隊ガニとも呼ばれている。
危険が迫ったり、潮が満ち始めるとその場の泥の中に潜ってしまうが、潜る時には体を横にして、素早く螺旋を描きながら器用に入っていく。深さは10〜15センチぐらいか。このことは同時に彼らが巣穴を持たないカニであることも示している。
さて、危険が迫って隠れた場合には2,3分もその場所でじっとしていれば、やがて少しずつ様子を見ながら出てくる。観察者はこの場合、動かないことが肝心。動けばまたしばらく出てこない。少し出てきてそこらを歩き出せば、その足音や気配が安全のしるしにでもなるのか、呼び水に誘われたかのように次から次へと現れ、再びミナミコメツキガニの大集団が形成される。集団は影を嫌うのか、人間のいない方へいない方へと移動していく。
ところで、幼いカニと成長したカニは棲み分けをしているようで、僕の観察では幼い集団はよりマングローブ林に近い場所。成長した個体の集団は海側に多い。また、幼い個体では体色が濃い紫紺であるのに対し、成長した個体では薄水色に変化する。
メスを巡ってか時には喧嘩もするようで、お互い向かい合ってハサミを左右に大きく広く広げ、挟みあわないまま、じりじりとした威嚇を続ける。
この時ばかりは人が近づいても滅多に隠れない。
観察するには非常によい材料になる。
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口いっぱいに泥を詰め込んだミナミコメツキガニたち。