3/11 三重県
安濃川

■発眼卵放流実施効果調査■


3/11 ビュオオオオオ・・・・・・!


さ・・・・寒い!家を出る時、あまりの風の強さに顔が引きつった。
先週は桜でも咲きそうな暖かさだったのに、この豹変ぶりは何?北日本や北陸では、大雪注意報が出ているらしいが・・。

安濃川へ車を走らせ、ロッドを繋いでいると・・・

まさか、こんな時期にこんな場所で雪に降られるとは(泣)。
雪がなくて各地のスキー場が営業終了した後で降るなよ。しかも、三重県にまで降るのは、なんかのサービスか?

ガタガタ震えつつ、「もう、何でもいいから1匹釣れたら帰ろう」という壮大な目標を自ら設定し、発眼卵放流ポイントを釣り上がる。

ピチッとフライに飛び出した魚、軽く合わせてハイ、目標達成。

しかし、釣っている間に風裏に入ったのか、風が若干弱まり、寒さが幾分和らいできた。
「たまには、放流ポイント以外も釣ってみるか・・・」

せっかく休日を犠牲にして(と言っても、家から30分だけど)来ているので、他の場所も見て回ることに。

移動先は、5年ぐらいは入っていない支流の上流のさらに上流。

殆ど足を踏み入れない理由は簡単。過去、釣れたことがないから。
しかも、足場が悪く遡行しにくい上に、木が覆いかぶさっていてロッドを降りにくく、なおかつ3歩でまたげる川幅のため、一人でも先に入っていたら100%その日は釣れないであろうという場所だからである。

随分昔の記憶を頼りに、車を停めて少し歩き、薮を掻き分けて川に入る。川岸が水で削られ、様相は一変していた。

下に降りられそうな場所を探していると、4m四方の大きな(ここでは)プールが現れた。下に降りる前に、提灯釣りのようなスタイルで、フライを2〜3度流してみた。



突然のことだった。



白泡にフライを落とし、流れ始めたフライの真下から黒い影がゆっくり浮上した。

その影は、何ら警戒することもなく、パクリとフライをくわえて沈んでいく。一瞬訳が分からなくなり、それでも無意識に立てたロッドには、確かに魚の重さが乗っていた。


グネグネとした感触が手に伝わる。しかし、こちらが明らかに分が悪い。ランディングのために、今から川辺まで降りなければならないのだ。
9Xのティペットが水を切る感触が手に響く。木の根、突き出した岩、安定していそうな足場に目星を付けて、飛び降りるように一気に降りる。

ゆっくり、ゆっくり、慎重に。

せいぜい20cmクラスの魚。しかし、この川で自分にとっては、他で釣れる40cmのアマゴより価値がある。

息を呑んだ。
下流には、魚が越えられない砂防堰堤。素人が歩いて入れる場所で釣れたこの魚を、「天然」と呼ぶには語弊があるが、この狭いフィールドで再生産された個体である確率は高い。

 発眼卵放流後、2年前から度々この川を訪れているが、いつも期待に反して大き目の魚が釣れてしまう。かなり上流部とはいえ、アマゴが生育できる水質・水温を保っていることが確認できたことは、素直に喜ばしいことだ。

この1匹で俄然やる気が沸いてきた。今日は行ける所まで行ってやる。

上流へどんどん進むと、やはり川の流れは貧相なものだった。
フライを普通に流せるスペースは殆ど無く、2m四方で深さが30cmもあればそこは1級ポイント。狙う場所のほとんどは、ピンポイントでフライを叩き込んで20cmだけ流すとか、ボー&アローキャストでフライを打ち込んでいく釣り方。

アマゴが水面近くにいたらフライが突き刺さりそうだ。

 

さらに小型2匹を追加。朱点が薄くて小さい、昔この川で釣れたタイプのアマゴに似ている。

さらに釣り上がりながら、周囲をよく見ると、自分の背丈を遥かに越える高さにもかかわらず、川岸が削り取られた(流された)新しい浸食の跡が残っている。この支流ではかなりの大水が出たのは間違いない。
見た感じからすると、数年の出来事のようだが、すると、2004年のあの集中豪雨の爪痕なのだろうか。

では、今釣れるこの魚達は・・・?

 

さらに1匹追加。このサイズ(栄養失調で小さいようには見えない)が釣れる以上、どう考えても、自然に再生産しているか、誰かが個人で放流している。これ以外には考えられない。

さらに・さらに釣り上がり、そして、ある異変にようやく気付いた。

「小さな滝が無くなっている・・・」

管理人も、フライを初めて11年目に突入した。
10年近く前のある日、入門セットのロッドを片手にこの支流に突入し、当時の自分はとにかく上に行けばパラダイスがあると信じていた。
若さに任せて強引に釣り上がり、「これ以上は無理だな・・・」と引き返す事を決めた、あの日の自分の目には、小さな滝が映っていた。

無論、高巻くか取り付けば体力勝負で超えることは可能だった。
しかし、そこまで釣ってみた釣果と、その奥に見える急勾配を流れ落ちるか細い流れは、釣り人を諦めさせるには十分な条件を満たしていた。



そして、今日。
おそらく、自分が立っているのはその滝の上。左手斜面には崩落の跡。こんな形でこの場所を越える事になるとは。


流れはさらに急勾配となり、何本かの筋となって水は流れ落ちている。

少し進むと、水深が少しありそうなプールが現れた。
手前にいるであろう小さな魚から狙う・・・そんなセオリーは無用。一投目、フライを落ち込みの白泡に付近に叩き込んだ。

何の疑いも無く、フライはゆっくりと、確実にアマゴの口に吸い込まれた。「バレる訳が無い」そう確信できたほどに。

朱点の極め薄い、23cm。
朱点の薄さが遺伝的なものか、餌によるものかは判断できないが、尾鰭の朱色を見る限り、カロチノイド色素を含む餌を十分摂取しているように思える。
宮川を含め、三重県では朱点の殆ど無いアマゴが、現流域、それも人が滅多に入らない地点で釣れたという話をたまに聞く。
イワメなどは最たる例だが、この川で注視すべきアマゴの系統はこういった魚なのかもしれない。

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