SAGE XP
(590−4  5番 9’00” 4ピース)


「めっちゃ飛ぶ」「生涯補償」「ライナップが豊富」
「硬い」「曲がらない」「フッキングと同時に魚が飛んでくる「物干し竿」



 フライを始めて5年目ぐらいだろうか。ロッドやリール、タイイングツールやマテリアルも一通り揃い、加えて経験もそれなりに積んできた頃だった。

当時の自分は混じりッ気なしの日本メーカー信者で、「日本のフィールドで使うなら日本のメーカーが作ったロッドが一番」と信じて疑わず、「外国製のロッドは、対象魚をニジマスを中心とした大型魚を見据えて設計されており、アマゴやヤマメ、管理釣り場でも30cmクラスが多い日本のフィールドではオーバーパワー」といった言葉を「まさにそのとおり!」とポムッと膝を叩きつつ納得して聞いていた。

さらに止めを刺されていたのが「小型が多い日本のフィールドでは、硬い竿ではその引きを楽しめない。柔らかいロッドはよく曲がり、引きを楽しめる上、魚の動きに追従するためバラシも少ない」という20世紀末のフライ業界では神の言葉岩○の言葉、のように語られ、スローアクション至上主義の礎となっていたお決まりのセリフだった。

 その結果、発売されるロッドはどれも柔らかいロッドばかり。あっちでペナペナこっちでクネクネ。当時はそれが普通だと思っていたが、高番手も今にして思えば柔らかいロッドが多かったように思う。

その頃の自分は、ロッホモアやフリーストーンといった、ごくありふれた#5〜6のロッドを片手に、芦ノ湖や長良川のミッジング、オープンして間もない大安トラウトレイク等で下手なキャストを繰り返していたが、どうもしっくりこない。
「もっと飛ぶロッドが欲しいなぁ・・。」
頭の中には、いつしか「SAGE」という文字がちらつくようになっていた。

 SAGEロッドと言えば、真っ先に思い浮かぶのがあの変な広告だ。
オッサンの顔がドデーンとアップで写ってるだけのもの、オッサンが岩に座って微笑んでるだけのもの、少し変わったものになると、白骨化したフライフィッシャーがロッドを握って川原に倒れてる写真など、とにかくオッサンだらけで意味不明。
唯一、広告だと分かるのはSAGEの文字だけという、売る気あるのか?と心配してしまう内容だ。(それに比べてF.A.○.Sときたら・・・。)
ちょこっと英語で書いてある文をよく読むと、オッサンが著名なフライフィッシャーだったり簡単な新製品の紹介なのだが、普通だったら飛ばしてしまう。

そんな訳で、どの店でも買えるロッドでもなく、どんなロッドかもよく分からないセージロッドは、自分の中では憧れでもなんでもなく、「よく飛ぶらしいが、よく分からんロッド」という印象だった。

しかし、転機は突然やってきた。
掲示板に「SAGEロッドが欲しい」と何気に書き込んだところ、このサイトの閲覧者の方から、「SAGEのXPを格安でお譲りしましょうか?」というメールが届いた。
当時のやり取りはコチラを参照して欲しいが、それまでXPって何?SLTってソルトウォーター用のロッドだよね?程度の知識しかなかった管理人は、全く偶然SAGEロッドを手にする事になった。

「気に入らなければ、無理に買って頂かなくても結構ですよ」と親切にその方は言ったのだが、2〜3投ほどですっかり魅了されてしまった。

確かに硬い。初めて振った2年前も、数々の場数を踏んだ今でもそう思う。
しかし、本来5番以上のロッドはこうあるべきで、今まで振っていた日本のロッドが意味も無く柔らかかっただけだと気付くのに、5分とかからなかった。

7m程ラインを出した状態で(それぐらいラインを出してないと、ロッドが曲がらない)フォルスキャストを開始すると、繰り出されるラインはタイトなループを形成し、矢のようなスピードで加速を始める。
慣れてしまえば2往復ほどで簡単に15m以上ラインは伸び、そのままシュートすれば20mを超える。
「これは本当に5番ロッドなのか」「今までの5〜6番ロッドは何だったのか」
率直な感想だった。

試しにそれまで使っていた日本の#6ロッドを振ると、柔らかい。柔らかすぎる。#6と言えば遠投用のロッドだ。それがどうしてこんなに柔らかいのか・・?根本から考えを改める機会となった。

そして、かねてより心配していた釣り味はどうなのかと言えば、硬いから楽しめない・ではなく、硬くても楽しめるが正解だった。
確かにバット〜ミドルセクションはキャスティング能力が示すように、一本芯が通ったような硬さがある。しかし、ティップは意外と繊細で、魚の引きに対して柔軟に曲がる。
その動きを受けたミドルセクションは、必要最小限に曲がり、バット部分は殆ど曲がらない。結果、どうなるかと言うと魚の動きがダイレクトに腕に伝わってくるのである。

スローアクション(パラボリックアクション含)のロッドで魚を掛けた時の感覚が”グワン・グワン”とすれば、XPは”ゴンゴンゴン!”といった感じ。
魚の動きを吸収してしまうスローアクションより、ダイレクトな動きを味わえるファーストアクションロッドの方が、引き味は面白いのではないか・・・他人の言葉を疑いも無く信じていた自分にとって、目から鱗が落ちた瞬間だった。

さらに、曲がらないロッドはバレ易いと言うが、果たしてそうなのだろうか?
柔らかいロッドは魚の動きにロッドが曲がって追従するとか、フッキングの時に違和感を感じないからスローアクションが良いと言われるが、人間には手がある。
フッキングはロッドを極力使わず、ラインを鋭く・短く引く事で軽い合わせは可能だ。
魚が走った時、急激な方向転換やダッシュをした時は、手首を柔らかく使い、ロッドワークでなんとでもなる。逆にバットにパワーが無いロッドでは、魚の動きを制することが難しい。
少なくとも、セージXPを使っていて、このロッドが特にバレ易いと感じたことは一度も無い。

硬いロッドを柔らかく使うことは出来るが、柔らかいロッドは硬いロッドのように使えない。それが結論だった。メンディングやロールキャストなどの小技では一歩劣るが、全く出来ない訳でもなく、それよりも少ないフォルスキャストで一気に飛ばせるのは大きな魅力だ。
ヘビーウェイトのフライを投げる時も、キャスティングアークを広く取ればワイドループで遠投も可能。

今となっては、5〜6番を使う釣り場では全てXPを使用している。よく出来たロッドは、一番よく使うロッドだと思うのだが、XPはまさにそれに該当している。
外国製ロッドと言うことで抵抗がある方は、是非一度ラインを通して振ってもらい一品である。
2ピースと4ピースがあるが、フィーリングは殆ど同じなので(4ピースの方が若干重く、硬い感じ)、購入する時はご自分のスタイル合わせたらいいだろう。


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キャスティング能力に関しては文句のつけようがないのだが、気になる点があるとすれば仕上げ。

ガイドの取り付けは日本人が好む薄塗りのラッピングではなく、ボテッとたっぷりコーティングされていてアメリカンな雰囲気をプンプン醸し出している。
見た目より機能重視なんでしょうか。間違いなく丈夫そうではありますが、好き嫌いが分かれるところだと思います。

さり気なく飾り巻きも入って頑張ってますが、もう少し綺麗に仕上げてほしいのが本音。
しかし、使っているうちにロッドのパフォーマンスに目が行ってしまい、どうでもよくなってきます(笑)。ブランクスだけで販売もしているので、取り扱っている店を探して組んでもらうのも一つの方法です。

ついでに、リールシートがちょっと細い。特に困ったことはありませんけどね。
ちなみに、SEGEロッドのリールシートは、全てスクリューロックで、TXL等#00〜の超ライトロッドも同様。そのため低番手のSAGEロッドは日本のモノに比べて10〜20g重くなっている。
SAGEロッド愛用者に、ウォーターワークスのリール愛用者が多い理由の一つかもしれない。

管理人はXPがきっかけで、ライトシリーズのTXLを入手しました。コチラも日本の低番手ロッドではありえないファーストアクションですが、非常に良く出来たロッドだと思うので、使い倒してから別の機会にレビューしたいと思います。


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