11/2 三重県
大安トラウトレイク


ガチャッ・バタン。 ザッザッザッ・・・。車から降り、早朝の大安トラウトレイク見渡す。


目印は、カーフテイル。

は、「浜崎あゆみのようにカーフテイルをしっぽのように付けておく。それが目印だ」と言っていた。

しかし、どこを見渡してもそんな変態男は見当たらない。


「やはり、この話は嘘だったのか・・? 話が出来すぎているとは思ったが・・」


俺は少し落胆し、タバコに火をつけた。5分ほどゆっくりタバコをふかし、適当に空いている場所に入った。

今日の大安トラウトレイクは、いつにも増して人が多い。しかしロッドが曲がっている人間はほとんどいない。11月だというのに、長袖Tシャツ1枚でも暑い位の、この気温が原因だろうか?





俺は、ある男を捜していた・いや、正しくは男か女かさえ分からない。
突然届いたメールには、自分にとってあまりにも条件の良い取引の内容が書きなぐられていた。

・・・しばらく釣りでもしながら待つか・・。


手早くミッジピューパ#16・黒を結び、水の中に投げ入れる。周りが釣れていない時はやはり難しい。

30分ほど粘って、ようやくインジケーターが水中に消えた。

上がってきたのは、良いサイズの虹鱒。水温が高いのか、釣れたのはべた底だった。

一息ついて、再び釣りを開始するが反応が無い。周りの人間もかなり苦戦しているようだった。

その後、スレで1匹追加。タナは合ってるはずなのだが・・・。



ボーっとインジケーターを眺めていると、不意に声を掛けられた。


「Are you Toshi?」

「!・・・YES・・・」

As for you the manager of the home page, ”Fly High Fisher”?

「・・YES. ・・・・・・・ARE YOU Mr”K”?」 


ニヤリ。
男は、不敵な笑みを浮かべながらこう言った。

「早速ダガ、取引ヲ始メヨウカ・・?」

男は自分の車に俺を案内し、「カチャリ」と車のトランクを開けた。

中には無造作に危険な”ブツ”転がっている。間違いない。男はあきらかに、この業界で危険な橋を幾度となく渡ってきたに違いない。

男はゴソゴソと”それ”を取り出した。銀色に鈍く光るそれは、メールで連絡があった物に間違いない。

ゴクリ・・。「まさか、本当にこんな物を・・・」













SAGE

XP590−4!!

※ロゴが歪んでるのは画像圧縮の影響


 簡単に説明すると、Fly High Fisherを見ていた人から、SAGEのXP(保障あり)を格安でどうですか?とメールが来て、その受け渡し場所が大安トラウトレイクだったと、2行で説明できる単純な事でございます。

実際は『俊さんですか?』『あっ!そうです』『はじめまして』『こちらこそ』
がっちり握手。
『それじゃ、早速ですがロッドを見てください』
『はいはい』という事実を基に、空想とやり取りのメールでの悪ふざけを基に適当に怪しく書いてみただけです。やめて!石は投げないで(泣)

+++

手早くラインを通して頂いて(#5ラインを持っていないので貸していただいた)、いざ試投。よくよく考えたら、Fly High Fisher管理人として人前でロッドを振るのは初めてなので、かなり緊張。

ヒュン・ヒュン・ヒュン!


この後、何回『何やこれ!?』と言っただろうか。

ラインが飛ぶ、ぶっ飛んでいく。意識していなくても恐ろしくラインスピードが上がり、勝手にタイトループになってしまう。上手く操れない。ロッドの性能を引き出せない。

『本当に#5か・・?』そう疑いたくなるほど、ロッドが秘めたパワーは相当なもの。3投して商談成立。Kさんも一緒に振って、ロッドの特徴などを聞く。

桟橋から上がると、数人の人から『Fly High Fisherの俊さんですか?』と声を掛けられる。
サクサクサクサク。なんか生暖かい視線が突き刺さる


御存知のとおり、当サイトはお上品で紳士的な文章が多数掲載されていますので、笑顔の裏に隠された「へー、こいつが・・」という深層心理を想像するだけで変な汗が出てくる。少ししかお話できませんでしたが、楽しんで頂いてるようで嬉しさ半分、恥ずかしさ全快(←計算が合わんだろ)

ただ、思ったのは想像以上に皆さん細部まで読んでる事。正直嬉しい。
あと、岩○派の人がいなくて良かった。だって、狂信的なファンが俺の前に現れたら多分、I’s3でぶっ叩かれてロングティペットリーダーで首絞められる


SAGEロッドを車にしまい、釣りを再開。フリーストーンFV#6が、やたら非力に感じて、こんなに柔らかかったかと思ってしまう。ついでに釣れない。



 この日は、9時から名古屋のフライ専門ショップラストホープさんが、第3桟橋でウィンストンの新製品・ボロンUXの試投会を行う予定だったので(それもあり、今日の客数は多かった)場所を空ける。

桟橋から上がろうとすると、Kさんがウィンストンロッドで軽快にラインを飛ばしている。
『あ、俊さん。ハイこれ、持ってて』『エ??』『どうぞ、振ってみてください』『エ?エ??』
成り行きで試投会に参加。



振ったのはSAGEXPと同じく#5だったが、コレがまた素晴らしいロッド。
SAGEXPを『ぶっ飛んでいく』と書いたが、ウィンストンボロンUXは『ラインがスルスルと伸びていく』感じ。

決して硬いと言うわけではなく、繊細なティップと素直に曲がるバット。それなのに何故か軽く振っているだけでラインが伸びていく。
周囲で振った人から、「ココがチョット・・」と言う声は聞こえなかった。

ウィンストンの技術の力か、ボロン・ロッドの特徴かは分からないが、機会があれば一度は触って見る価値有り。最高峰に位置づけられるメーカーのロッドはやはりスゴイ。


『Kさん、これっていくらぐらいするんですかねー?』

『えーと、確か・・』

ゴニョゴニョ

『ななっ・・・・・!?』

当たり前だが、お安くは無かった。



その後、第3桟橋で釣りを再開。2.5mほどの水深でミッジピューパをゆっくりリトリーブ。何故かまたスレで1匹。

Kさんと話しながら釣りを続ける。するとKさんと自分は、なんと同い年。フライフィッシングを始めてからの苦労や、考え方で共通する点が多かった。

タナを3m半ほど(底から50pぐらい)変更。


12:27

12:35

その後、10分に1回ほどアタリがあり、なんとか2匹追加。


『あと一匹釣れたら、帰ろうかな』とKさん。


12:51

厳しい条件の中、さらに一匹追加。見届けたKさんは帰り際こう言った。

『SAGEXP、可愛がってやってください』

ええ、ええ。可愛がりますとも。


ご飯を食べさせてあげたり(←食べない)

お風呂入れてあげたり(←入れるな)

添い寝してあげたり(←変態)


再びガッチリと握手して、いつか一緒に釣りに行く事を約束してお別れ。




その後しばらく釣って、さらに2匹ほど追加。

3時ぐらいから少し曇ってきて、ライズが多くなってきたので、フライをドライにチェンジする事に。
そこで、せっかくSAGEロッドを手に入れたのだから使ってみようと思い、WF6ラインをロッドに通して、#16のドライを結んで釣り再開。

ライズリングが広がると同時に、そこめがけてキャスト。フォルスキャスト2回で20ヤードぐらいは飛ぶ。


フワリと落ちたドライフライ。それは突然起こった。

ゆっくりと黒い影が浮いてきたかと思うと、当然水面が炸裂。反射的に合わせると見事フッキング!


しばらくのやり取りの後、無事ランディングしたのは丸々太ったグッドサイズの虹鱒。


良いファイトでした

ファーストヒットがドライで、しかもグッドサイズとは、なかなかこのロッドとは相性が良さそうだ。帰ったら早速お風呂にいr・・・(略)

一匹で分解してしまったフライ。オオユスリカがハッチしている時は、#12ぐらいでも釣れるので、大安ではドライは必須。

その頃には周囲は皆ドライフライオンリー。あちこちで歓声があがる。

ズィーロンのシャックを取り付けたフライでライズを狙い、再びフライが飛沫に消える。


周囲から『おぉ! 釣れてる!』という賛辞を頂き、無事ランディング。



ふと、リールの残りのラインを見ると残りがかなり少ない。試しにバッキングラインまで引き出すと、フルラインまであと5m。

『これはフルライン出せるな・・・』



ライズも減ってきたので急遽、キャスティング練習に切り替え。ソフトハックルを結んで、目指せフルライン。



ダブルホールを駆使して、フルラインまでなんとか残り3mまでは投げられる。


ココまでは比較的簡単に飛ぶのだが・・・

しばしキャスティングに没頭。

しかし、残り1mが何故か飛ばない。どうしても飛ばない。そうこうしている間に、極度の握力の低下と、腕の痺れが・・・・。

喜んで振り回していたのがまずかった。SAGE・XPは絵に描いたようなファーストアクションで、ロッドを曲げるのに結構力が要る。

『練習して、フルライン出す。このロッドの力をもっと引き出す』

一つの目標を掲げ、この日は終了とした。



メールでのやり取りから初めてFly High Fisher管理人として閲覧者と会い、話し、ロッドの取引までしたこの日は、思い出深いものとなりました。

Kさんの最初のメールに書いてあった一文。
”思い出のある一本。オークションで手放すのもさみしくもあります。・・・中略・・・釣り場で俊さんに会えれば愛竿の活躍する姿もまた見れることでしょう。”

長年苦労と喜びを共にしたであろうKさんのロッドは、確かにFly High Fisher管理人の俊が引き受けました。

いわばKさんの息子とも呼べるSAGE・XP、大切に使わせていただきます。


別の言い方をすると、『お前の息子は預かった!』


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