アマゴ発眼卵放流
2008年1月26日 三重県 安濃川 ボックス回収


さて、これはなんでしょう?


今回、安濃川に放たれた約10000匹の稚魚には、この目印が施されている。
この画像はアマゴの耳石(魚の頭の中にあり、平衡感覚を司る)。耳石を取り出して研磨し、紫外線を照射した際の様子で、耳石の中央部分でピンク色に淡く発光しているのはALC。

三重大研究室の学生さんから「ALC染色は成功したようです」とのメールと共に送っていただいた画像だが、宝石みたいで綺麗。クリオネみたいだという意見もあって、確かにそんな風にも見える。

「へ〜、うまくいって良かった」と単純に考えていたが、耳石というのは20cmぐらいの魚でも2〜3mmの大きさ。

アマゴの稚魚の大きさはメダカ位だったので、この耳石の大きさは・・・おそらく、0.1とか0.2mm位の大きさだろうと思われる。それを取り出して研磨するって世界が正直、想像できん。

このALC標識を持つアマゴが無事成長し、1年後ぐらいに大量に捕獲できれば、発眼卵放流は効果的である事が実証される。
一方で、アマゴはいるのにALC標識が確認できる割合が少ない(或いは無い)場合は、
 ・安濃川のどこかで大量に天然産卵がある
 ・養殖場産の魚は放流しても残らない(生き残れない、釣られやすい、安濃川の水温や水質に馴染まないetc..)
 ・ALC標識が失敗していた
・・・・仮説が一気に増えてしまい、迷宮入りしてしまう。

仮にALC標識のあるアマゴが全く捕獲されない場合は、発眼卵放流は、1万円札を数年間、川に流していたに等しいという、管理人にとって痛すぎる事態を宣告されることになる(汗)


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発眼卵放流から約2ヶ月、飽きもせずボックスの観察を続けたおかげで、稚魚の成育状況は分かっている。そろそろ川に解き放ってもいい頃なので、ボックスを回収する事とした。

遅くとも3月の渓流解禁までには回収する必要があるし、ヨークサックが殆ど吸収され、自力で餌が獲れそうな状態であれば、突然の大雨でボックスごと全滅するリスクは回避したいというのが理由。

回収日を学生さんらと何度か日程調整し、1月26日に決定。放流から丁度2ヶ月である。
当日、安濃川へ向けて車を走らせ、ようやく現地到着。







どこだよココ?!Σ( ̄□ ̄;)

冬将軍、大暴れ。本格的に積もる事があまりないこの川でも、見事に積もりました。

待ち合わせ場所で学生さん2名と合流。

「どうも〜お久しぶり。まさかこれほど雪が降るとは思わんだね〜」

「アハハハハ・・・」

ザッシュ・・ザッシュ・・ザッシュ・・(雪を踏みしめる音)

なんだろうな?この微妙な空気は。

「わざわざこんな日にやらなくてもいいんじゃねーか?」
「わざわざこんな日にやらなくてもいいんじゃねーか?」
「わざわざこんな日にやらなくてもいいんじゃねーか?」



多分ね、3人とも同じ事を考えてましたよ。私が日を指定したので、ある意味自業自得ですけど。
俺だって好き好んでこんな日を選んだんじゃねーよ!(泣)


愚痴っても仕方ないので作業手順を確認。
移動しながら二手に分かれ、ボックス回収→死卵カウント→ボックスを道路脇へ移動→後から学生さん達が回収・・という方法で手際よく作業を進める。

ちなみに水温は2℃。手がちぎれるほど冷たい!と言いたいところだけど、気温も同じぐらいなので水に手を入れてもそれ程冷たく感じなかった(ゴム手袋は内部が結露し、逆に冷たかったので私はほとんど素手で作業した)。多分、神経がおかしくなってたと思う。

稚魚の観察をしていないポイントはご覧のとおり。
シルトが堆積したり落ち葉が引っ掛かったりで、知らない人が見たら「ただのゴミ」。しかし、バイバート・ボックスを回収し、カゴを引き上げると何匹かの稚魚が確認できました。


麦わら帽子復活

新型ボックス作成のページでもレポートしているように、今回はかなり育った段階で解き放つ事ができました。改造が間に合わなかったボックスはかなり早期に脱出しているので、生存率が気になるところですが・・・。

ついでに、タモでカゴの周囲にいるカワムツの捕獲を試みる。それ程餌が豊富とは思えないこの川では、餌の少ないこの時期にアマゴの稚魚を食っているのではないか、という疑いを持たれているためである。

カゴの下にいたカワムツさんと、やたら丸々太ったタカハヤさんの2名を、重要参考人として連行する

吹雪の中、なんとか全てのボックスの回収を終える。しかし雪が降る降る。車は皆ノーマルだったので、移動にかなり気を使った。10箇所放流はやっぱり多すぎたかも。
今後の調査方法などの確認を済ませ、この日は解散。しかし寒い1日だった。



しばらくして、学生さんからメールが届く。
「土曜日に捕獲したカワムツとタカハヤはともに誤認逮捕でした。タカハヤは目の前に稚魚がいてもやはり食べないようです。」

ス・スイマセンでしたーー!

だって、あんな所で丸々太った魚がいたら間違うって!
普通に「なぁ?分かってんだよ?お前が殺った(食った)事ぐらい?さぁ吐いちまいなよ。今吐けばすぐに帰してやるからよ?」とか100%犯人扱いしてたのは事実だけど。何事も最初から決め付けるのは良くないね。うんうん(←反省してない)


ついでに、今回の放流の孵化率も判明。
10000粒から標識の実験・研究用や直播き、無標識卵などを除いた9320粒、その内、死卵は68粒だったので99.27%と大成功。

この魚が普通のサイズまで成長したとして、釣って楽しめるのは2010年。元気に生き延びて欲しい。


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