アマゴ発眼卵放流 2回目
2006年11月14日〜12月10日 三重県 安濃川
「今から取りに来れる?」
「は?」
今回の発眼卵放流は、この一言のおかげで当初の予定からは想像できないほど慌しいものとなった。
11/12(日曜日)、美濃フィッシングエリアへ向かう途中聞いたのは、予定より1週間早まった発眼卵出荷準備完了の連絡。
とりあえず、2日だけ遅らせてもらい、人手を確保することから始めた。
まず最初に、自分が動けなければ意味が無い。
Mission1:有給休暇ゲット(汗)
「スイマセ〜ン・・・。明日、用事があってお休みしますので、ヨロシク」
せめて2〜3日前に言えよ!って感じの痛い視線を浴びつつも、毎年職員全員が有給を消化できない我が職場、普段ならこれで「ハイ了解」と終わるはず。
私はその一言が飛んでこない事を祈った。神様に祈った。そして何事もなかったように席に戻った・・・が!
「わかりました。でも、急に何で?」
「なんで?」
「なんでだと?」
喝!喝!喝っ!喝っっ!!
年次有給休暇は法律で認められた労働者の正当な権利ですぜ?なぜ理由を聞く!?
仮に「娘がメチャクチャ可愛すぎて、ずっとそばにいたいから休みます」とか「明日は仕事で大ミスすると神のお告げがありましたので・・」とかだったら、休めないとでも!? え、何!? クビ?? ・・・・・(汗)
「アマゴの発眼卵を放流しに行ってきます」とはさすがに言えないので、咄嗟に出た言葉は「え〜・・あ〜・・ボラン・・ティア・・活動?」
何故答えてる方が質問してるんだよ、という痛い視線を再び全身に浴び、何かスゴイ悪いことをしてるような気分になりつつMission1をクリア。
Mission2:手下を確保
昨年同様、友人である消防士とコンビニ店長に、メールで実施日変更を伝え、協力を依頼する。
「去年同様、アマゴの卵を川に撒きに行きます。土日の予定でしたが変更になり、明日決行ですので来てください。来てくれないと不幸のメールが大量に届くかもしれません。むしろ来い、ボケ」
消防士から返信。「今日なら行けるけどねー(笑) 明日は仕事!」
ちっ!使えねー。
コンビニ店長から返信。「明日は酒販講習があって無理やわ。 ps 最近ゲームやり始めた。PSPのモンスターハンターポータブル最高! 面白いかr・・(略)」
黙れゲームマニアが!追伸の方が長い文章書くな!
「Re:俺なんかDSをゲットしたもんね。脳鍛えてます。PSPなんて、今時流行らないよ」
「Re:Re俺なんか鍛えすぎて脳年齢20歳です」
・・・何このゲーマー野郎?DSとPSP両方買う意味が分からないんですけど。・・・・クッ!(←28歳)
結局・・・いつの時代も、最後に頼れるのは己だけなのですね。帰宅後、一人で放流できるよう、準備に取り掛かった。
これが今回よりメインに昇格した「FlyHighFisher虫カゴ改造型ボックス(初期型)」
ナイロンバンドを複数箇所スリットに通し、スリットの幅が広がった事と、四隅に大き目の穴(直径4mm)を複数開けた事により、予想よりかなり早く稚魚が脱出してしまう問題がある。
ヨークサックが完全に吸収され、自然界と同様に稚魚が自発的に産卵床から脱出(浮上)する時期にスルーできる構造が理想的だが、バイバート・ボックスによる放流は、どうしてもボックスに入れる卵が500〜600粒と多くなるため、大雨や土砂をかぶって一気に全滅する危険がある。
なるべく遊泳力が付くまでボックス内にいてもらいたい、という側面と、全滅を避けるため、なるべく早く脱出して欲しいという微妙なバランスを考慮しつつ、試行錯誤を繰り返す。
そしてこれが最新版の「FlyHighFisher虫カゴ改造型ボックス:2型」。
豆腐保存容器の時のように、販売中止にはなりませんでしたが、虫カゴの色が変わり、取っての部分に付いていたカゴを閉めるための磁石が無くなった。スリットの幅などは変更なしで一安心。
第1回目の放流でも確認したが、ある程度ヨークサックが小さくなると、縦長のスリットは幅2.5mm程度でも稚魚が通過してしまう。よって、改造型ボックスは脱出用の穴を設けていない。また、ボックスが開かないようにする固定用のナイロンバンドも、簡素化とスリットを広げないよう、2箇所に穴を開けて通すようにした。
と、前振りが長くなったが結局ボックスは2個しか完成していなかったので、夜までかかって作り上げた。夜中に響き渡る電動ドリルの音は、付近住民にさぞかしご迷惑だったことだろう。
毎晩の娘の夜泣きの方がやかましいけどね(汗)
11/14
発眼卵を受け取りに美杉へ車を走らせる。片道50kmの道のりをぶっ飛ばす。
養魚場へ到着し、発眼卵を受け取るが、去年と比べて少し小さいような・・・?ついでに、白っぽくなった卵がチラホラ見られる。
前回は完璧な検卵のおかげで現場での死卵除去が不要だった。そのため、今回も大丈夫だろうと死卵除去用の器材を用意していない(汗)
数は多くなさそうだったのが唯一の救い。お礼を言って即座に安濃川へ向かう。
川へ到着し、事前に下見しておいたポイントへ向かう途中、いつも魚影が見られるプール(と言っても、5m四方)を覗き込む。
25cmクラスの綺麗なアマゴがユラユラ泳いでいた。喜ばしい光景である反面、砂の堆積には閉口。昨年よりさらに砂が流出したようで、稚魚が身を隠せそうなポイントが少ない。
どこも砂の堆積が酷かったが、幾分マシと思われるポイントに入り放流の準備に取り掛かる。2回目ということもあり、順序は心得ているつもりだ。
最初に、ボックスを沈めるポイントにこぶし大の石を沈めて、カゴを安定して置けるようにする。一人でやるのは大変だったが、この日は比較的暖かく、作業は順調に進んだ。
川の水で消毒液を薄め、ウェーダーや卵、器具を消毒。本当は別の川へ釣りに行くごとに、ウェーダーや釣具は消毒した方がいいんですけどね。
そして発眼卵の入った袋からお玉で一掬い。むむっ・・・!やっぱり死卵が多いなー。
袋の中身を見ると、はっきりと死卵とわかる卵の他、白い筋が入ってたり微妙な色合いになった卵が見える範囲で10粒ほど。去年が良すぎたのだろうか。今年は孵化率が低下しそうだ。
ボックスが流されないようロープで固定し、カゴの上に日よけ&重石の石を乗せて1箇所目の放流を完了。カゴの周囲に散乱している石は、私が放り込んだもの。
砂地が多いので、稚魚の隠れ家用に石を沈めておいたが、焼け石に水だなこりゃ。無事孵化し、成長してくれる事を願う。
2箇所目の放流ポイントに向かうが、やはり砂の堆積が酷く、放流に向いていない感じがする。少し下流はそれ程でもないのだが、カワムツが群れていて放流する気になれない。こいつらの餌になるのだけは勘弁して欲しい。
色々場所を探し、道路から少し入った所で良さそうなポイントを発見。
この川にしては川底に小石が多く、砂の堆積も比較的少なかったので残りのボックス4個もこの付近にまとめて設置することにした。カワムツも殆ど見当たらないので、ボックスから脱出した直後に食われる心配も少ないだろう(前回はボックスの下にカワムツが潜りこんでいた。格好の餌場になってた?)。
設置完了
ついでに、以前から試してみたかった方法を実践してみた。それは「直播き」。
3〜5cmの小石が多い場所に穴を掘り、流されないよう気をつけながら卵を沈める。
慎重に小石で上を覆い、大き目の石で周りをガード。こんな状態で卵を放置して大丈夫なんだろうか・・・と思ったが、これが普通なんですよね。プラスティックの箱に入ってることの方が遥かに不自然な状態か。
この作業を魚1匹が穴掘って卵産んで自分で卵隠すんだから自然の力ってスゲーな。
2粒だけお持ち帰りし、孵化の状態を観察することに。去年ペットボトルで飼育後、放流したアマ太郎・アマ次郎・アマ三郎は今頃どうしているのだろうか。
立派な尺アマゴだろうか。それともヒレピンの20cmだろうか。川の藻屑だろうか(←一番可能性高い?)
11/18
放流から4日後、川へ観察に行くと先日までやや強く降っていた雨の影響で、砂が流れたらしい。
重石をどけたボックスに、結構な量の砂が積もっていて卵の表面にも細かい粒子が付着していた。
この時点で孵化は殆ど見られず。そして予想通り、死卵が既に10粒ほど確認できる。発眼卵放流成功の基本は、やはり検卵の精度ですな。去年は99%以上孵化してたのになー。
「どうせ川に撒くだけだから、適当でいいよ!醤油味のイクラ混ぜちまえ!」とか養魚場の人に言われてないことを信じたい。
寄り道して前回大き目のアマゴがいたポイントへ。
元気そうに表層に定位し、時折ライズまでしていた。見た感じ魚体もかなり綺麗。このサイズまで成長できるんだから、この川はアマゴを養う力はまだまだ残っているように思う。
11/26
衝撃の光景が!
ガサガサと薮を掻き分け、放流ポイントへ接近。すると・・・・
なんか、大き目のアマゴ2匹が、キッチリとボックスの真後ろに張り付いている。
な・なんだねちみは! あ!カワムツから卵を守ってくれてるのか。いや違う。
ポロポロとボックスから脱出してくる稚魚達を、次々とパクパクとやってるのか??(恐怖)
このサイズのアマゴが2匹、この時期まで残ってる事は素直に喜ぼう。しかし、このマンツーマンでピッタリとボックス後方に張り付いたマークは、稚魚にとって脅威以外の何者でもない。
一瞬産卵か?と思ったが、体色からしてそれはなさそう(そもそも、定位している場所は砂と泥の川床)。おそらく、孵化した卵から染み出した臭いに釣られてきたのだろう。
この状況でやる事は一つ。腕まくりし、川の中へ。
ドポンドポンドポン・・・。
こぶし大の石を拾っては、川の底へ次々と沈める。その隙間に、1〜2cmの小石を満遍なく沈めていく。
「稚魚が隠れる事が出来る場所を」その思いだけで石を運び続けた。
で、なんとか上の状態に。
途中から「木の枝を立てといたら、落ち葉が引っ掛かって隠れる場所が増えるかも」とか「ボックスから脱出してぇー、普通少し流されるからぁー、こう来てーこの隙間に入るからー・・・」とか変なインスピレーションが働き、気が付いたら2時間川の中。
ふーやれやれ。これでボックスから脱出した瞬間、口の中へ運ばれるという魔のベルトコンベア状態は多少回避できるだろう。他のポイントをチェックしに移動する。
特に異常がなかったので、再び先程のポイントへ戻ってみると・・・
「ただいまー」
間違いなく、既に何匹か食われてるわ(泣)
12/4
ペットボトルの稚魚が孵化。これを見て川へ。
上の石をどけて見ると、なんと殆どの卵が孵化して上段から下に落ちていた。半分ほど砂に埋まってしまったボックスがあったので、一時引き上げると下段に稚魚がウヨウヨ。
隙間から脱出しようと頑張っていたが、まだ抜け出すことは出来ないようだ。ボックス回収はあと2週間ほど先だろうか。今年は寒い日が少なく、水温も高めなので稚魚の成長が早いように感じる。
12/10
何か土・日曜日の日課のようになってきた・・・・(汗)
飽きもせず安濃川へ。ついでに水中撮影を試みるが、ボックス周囲に稚魚の姿無し。
しかし、先週の感じからして既に脱出してカゴの周囲に身を潜めている稚魚はかなり多いと思われる。周囲の岩を踏まないように気をつけて撤収。
12月だというのに、#18ぐらいのメイフライがハッチ。今年はやはり暖冬なのだろうか?
以上、1か月分をまとめて報告とさせていただきます。次回はボックス回収時の予定。多分年末〜年始になると思います。
今回は全て一人の作業でしたが、5000粒の発眼卵放流は、1万円程度の費用で十分実施可能であることが分かりました。来年の解禁には、順調に行けば昨年放流した2年魚の顔も見れるかも。
もし、たった一人の自主放流で、ある程度の効果が認められるのであれば、次回以降、私はこの発眼卵放流活動を次の段階に持って行こうと考えています。期待せず待ってみてください。
追伸 今回は皆様よくご存知の理由により、放流直後の実施報告は控えておりました。理由は・・・まぁ、そういう事です(笑)
妨害されるとは思ってませんが、念には念を・・ということです。私は意外と心配性ですので。
追伸の追伸 放流の協賛金にご協力をお願いします。方法はこちらのページでお買い物。ティペット等の消耗品で結構です。前回もお願いしていましたが、微妙に助かりましたの(正確には分かりませんが、1000円ぐらいかな)。
ちなみにコレとかコレとかコレを買って頂くと、今回の放流に使った額は一気に回収できる計算です。ハッハッハッ!(←鼻息荒い)