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神の目サミュエルは、その地鳴りのような響きを持った声で言った。
「お静まりなさい。」
広大な天宮の広間に集まっていた溢れかえらんばかりのありとあらゆる世界の者どもは、その一声で平伏ししん、と静まり返った。
「長きに渡る獣王ルディリスとの闘いは、我々に多くのことを教え、多くの損害をもたらした。そろそろこの辺りでこの闘いに終止符を打とうと思うのだ。」
いつの頃からだろう?神の創りたもうたこの世界を、闇の輩が破壊し始めたのは。闇の勢力は最初は小さなものだった。だが、それは日増しに膨れ上がりこの世を蝕み続け、次々に闇に飲みこんでいった。
サミュエルは目の前に集っている、沢山の階級の天使、魔道士、吟遊詩人達の顔をゆっくりと眺めまわした。皆期待をこめた目でサミュエルを見つめた。
サミュエルは決意をこめた声でゆっくりと宣言した。
「聖女王を遣わすのだ。余が自らの魔道で生んだ娘を人の子として!」
辺りはほんの一瞬、息を飲んだかと思うと、沸き上がるような歓声が渦巻いた。
「お待ちください。親愛なるサミュエル!」
辺りの喧噪など吹き飛ばすほどの大声でそう言うと、すっくと立ち上がり前に歩み出た天使がいた。剣天使の長、大天使ミカエルだった。ミカエルはサミュエルの前に跪くと、丁寧に頭を下げ、言葉を続けた。
「恐れながら申し上げます。聖女王を遣わされるには、そのお方に見合うイアンの魔道士や剣天使、吟遊詩人が必要になります。」
「皆まで言うな。分かっておる。」
サミュエルは再び静まり返った大広間の皆に静かに告げた。
「聖女王付きのイアンの魔道士には、ヴェスタリアン・ナーシアンスを。剣天使にはサンディリエル・フェルディを。吟遊詩人にはアルフォラード・ミスティリディを任命する。」
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