軌跡~-_科学と旅_-~


標準化:国家戦略と企業戦略と現場


 ここ数年,国際標準化活動の重要性が認識され,(社)日本経済団体連合会が2004年1月20日に発表した「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」において,官民一体となった国際標準化への取組みが急務であると指摘されているのをはじめ,政府の総合科学技術会議による「平成18年度の科学技術に関する 予算,人材等の資源配分の方針」(平成17年6月16日)においても,研究開発の推進及び実証と共に,その成果を国際標準に反映することを推進するとされている.そして,我が国における標準化戦略は,知的財産戦略と一体的に進められることが,知的財産戦略本部による「知的財産推進計画2005」(2005年6月10日)に謳われている.

 このような提言や方針・計画における標準化戦略の具体的な項目は,戦略的な国際標準化活動の強化と支援,企業戦略としての国際標準化活動への取組みの促進,標準化活動を担う人材の育成等が主なものである.この中で,標準化人材の育成に関して,文部科学省科学技術政策研究所発行の『科学技術動向』2005年6月号掲載の報告「国際標準を担う人材育成について」(黒川利明)は,我が国における標準化人材育成の現状認識に基づき,産学連携によるシステム化された人材育成施策の必要性を訴えている.

 私は,長年の間,研究開発に従事する傍らで,標準化の現場でも活動してきた.本規格調査会の活動以外に,民間のフォーラムによる活動にも何回か携わった.その経験から思うことは,上記のような国家や企業における標準化戦略が具体的な施策となって実行される際に,戦略立案者の意図が活動の現場に十分に伝わるようなシステムが重要ということである.せっかくの優れた戦略も,細分化された個々の独立組織でその担当者の考えのみに基づいて進められることになれば,大きな成果が得られない可能性が高い.戦略的な国際標準化活動が推進されようとしている最近の動きを喜びつつ,政策立案側と実行側とを円滑につなぐシステムへの改革に期待したい.

[2005-12-14]