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猿島再訪より一年後

昨年春(2002年2月11日のことであります。)19年ぶりに猿島を訪れた世話人はその変わり果てた姿に愕然とした。
レンガの地下要塞のいたる所が閉鎖されて見られなくなっていた。
見ようと思えば崖からロープで降りて潜入しなくてはならないような状態だった。そんなキケンは冒したくない。
ちょうどその時、国から
横須賀市に猿島が無償で譲与され、市の「エコミュージアム」構想で、
現在閉鎖されている旧日本軍の兵舎などを修復公開するほか、自然と歴史的遺産を保存しながら都市公園として整備する。
というニュースを聞き、ひとまず猿島廃墟研究は今回で終わりにして修復後にまた見に行こうと思った。

いきさつ等は猿島再訪(上)、(下)をご覧ください。

ところが最近になってまた猿島のことが気になってきた。本当に修復して公開されるのだろうか?あまりに老朽化していて危険だ!
とかいう理由をつけて結局埋められちゃうんじゃないだろうか?そうなったらキケンを冒そうが何しようが絶対見られなくなってしまう。
それに整備されて、誰でも安全簡単に見られるキレイな廃墟なんてもう廃墟じゃないっ!

てな訳でまたまたやって来ました猿島へ!(2003年3月21日のことであります。)

一年ぶりであります。今回は装備を充実させた。ヘッドランプ、安全ベルト、そして肝心の10mのロープであります。
そう、それは例の崖を降りる為だ。10mとしたのは、もしそれ以上の長さが必要だった場合は計画を断念しようと思ったからだ。
(世話人としてはなんとなく10mが限度のような気がした。)

行ってみてまたまた驚いた!たった一年で随分と崩壊が進んでいる。いや修復の途中かもしれない。
いずれにしても前以上に封鎖され、切り通しからトンネル内までも立ち入り禁止だ。


以前の切り通し部分(1978年)

現在の切り通し部分、地面を掘り下げている


崩れた石には番号がふられている


特に切り通しの石積みの崩落は激しい。積み直すつもりであろうか?番号が符ってある。
樹木の浸食も激しくジャングルの中の遺蹟修復の現場を彷彿とさせる。

確かに危険だ。写真を撮っているだけでも落ち着かない。立ち入り禁止にするのも当たり前だ。
ここで時間を費やすのはやめて今回の最大の目的である地下壕潜入のため、島の頂上の広場に向かう。

崖の上から地下壕の開口部のある位置を窺うが樹木が生茂っていてよくわからない。
それとおぼしき場所から降下するのは危険すぎる。切り立っている。
結局、ちょっと離れているが多少ナナメになっている部分からロープを垂らして降りることにした。
降りた所から横への移動が可能ならばその開口部へ到達できると考えたからだ。

ところが実際に降りてみると、降りきった所のすぐ脇にその開口部はあった。以外と簡単に到達してしまった。
当初予測した地点とは水平距離で10m以上も離れていたので無理してヘンな所から降りていたら大変なことになっていた。

     
@ ここから潜入した。
以前より足場がかなり不安定だ
  

この場所は25年ぶりだ。(もっとも潜入ルートは全く異なる。前回は内側?、今回は外側?からだ。)
いやぁー感無量であります。
開口部の前が奥行き2mぐらいのテラスになっていたが、この25年で1mぐらい埋もれていた。立っているのがやっとだ。

窓みたいなところから飛び込むような感じで潜入する。この潜入位置は地下2階建の上の部分になる。空気がシンとしている。
何十年も前の空気のような気がする。いきなり床が大きく抜けて先に進めなかった記憶があったので暗い中を慎重に進む。
思ったより中は広く奥行きもある。2階全体の真ん中ぐらいの位置にその床のないところがあった。
そんなには大きくないスペースだ。だいぶ記憶違いをしていたようだ。
おそらくここは階段室だったらしい。木製の階段が老朽化して崩落したのだろう。
ここから先は今の装備では無理だ。また装備があっても行く気がしない。もう真っ暗だ。大変コワイ!
入口部分に戻って階段をはさんだ反対側の部屋に入る。ここはまだ小窓が付いていて光が入るので、多少気分は落ち着く。
ただ井戸みたいな昇降路がやたらある所なので足元には十分注意だ。脇の通路みたいな所から地上にハシゴで出られたようだ。
おそらく頂上の監視塔跡とつながっていたのだろう。位置的にもだいたい合うようだ。

手元資料と今回の探索をもとに地下壕の見取り図と立体的な構成を下に書いてみた。

ただ、この構造物をどうやって造ったのかその手順がよくわからない。中国のヤオトン(地下住居)を参考にすると、
強引に地下をくり抜いていったか、予めレンガで2階建の建物とトンネル状の物を造ってそれを埋めたかのどちらかだが、
構造的にはおそらく後者ではないかと思う。




G 相変わらずトンネル内は
閉鎖されている



B


これが全部地下に埋まっているわけだ。
写真では結構明るく写っているところもあるが、中は真っ暗闇だ。
怖いぜ!

C

D
E
   内部の壁も崩落している
F
   真っ暗闇の中、いきなり床のないところ
がある。恐怖!
A
   唯一小窓のある部屋。正面に
  煙突状の昇降路がある
  落ちたらもう発見されない


猿島に限らず、こんな場所にいると恐怖で一秒でも早くここから立ち去りたいという心境になる。
じゃぁー何故こんな所にわざわざ来たのかという矛盾はあるが、怖いけど見たいということだ。
怖くても見ておかないと絶対後悔するとわかっているから一歩進んで見ざるをえない。でもやっぱり怖いから見たらすぐに帰りたい。
ゆっくり廃墟に浸りたいという気分にはなれない。廃墟という所はあらゆる意味で安全性に乏しいのでこういったことになる。

世話人の場合はほとんど単独行動で、まして今回は崖を降りてきて、地下壕に潜入するという二重のアブナイ事をやっているので
一刻も早く地上に戻りたいという気持ちであせる。残してきたロープも気にかかる。
だから写真だけはバカバカ撮っておこうと思うのだが、あせっているのでストロボがチャージできてないのに撮ったり、
ブレまくったりたりで結局まともな写真が残らない。
何度も行くような所ではないので残念だが、その時はその時で必死だから仕方がない。

首尾よく戻ってこられた訳だけど、世話人がロープで崖を這い上がり柵を乗り越えて頂上の広場に出た時、なぜかアベックがいた。
非常に驚いていた。拉致されると思ったかもしれない。世話人もバツが悪かったので、そそくさとロープを丸めてその場を立ち去った。

いままでの写真をまとめて’さるしま写真館’というページも作ってみた。
猿島再訪(上)(下)と今回の探索記とを合わせてご覧頂ければ
猿島の廃墟的魅力がご理解頂けるかと思う。

 ディープな猿島へのご招待でありました。 猿島再訪(上)へ
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