「新人営業マン奮戦記 」 第一章 ニューフェース 6ページ

得意先から営業マンへは、さまざまな課題が出される。先輩たちはテーマによっては、ベテランの橋本さんに相談している。
この前は、[搬送レールの摩耗が激しく、その対策がテーマ」であった。流れるワーク の材質は、セラミックの中のアルミナで非常に硬い。レールの仕様は、焼入れしたハイ ス鋼。橋本さんは担当営業に、レールの材質を超硬合金に替え、その上にさらにDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングする方法を、客先に提案するよう アドバイスした。超硬合金の硬度は、ビッカースで一六00、ハイス鋼の約二倍。
DLCコーティングは、ビッカースで五000。超硬合金の約三倍。
膜厚は千分の一ミリと薄いが、結晶はアモルファス構造のため非常に滑りが良い。
実際に、一台八万五千円の試作品を納入した。従来の部品寿命が、十倍延びたという評価を得た。その結果、四十台計三百万円の受注となった。
またある時は、[絶縁部品の摩耗対策がテーマ]であった。従来品は、樹脂製でジュラコンという材質。すぐに摩耗してメンテナンスが大変だということであった。
橋本さんは担当営業に、材質をセラミックに変更することを、客先に提案するよう アドバイスした。セラミックの中でも、強度が強いジルコニアにするようにということ だった。試作の結果、やはり良好。ほとんど摩耗が見られなかった。三千個、計六百万円の受注となった。
僕は高校、大学と文科系だったので、機械や部品のことはほとんど知らなかった。その都度、橋本さんからカタログや資料を使って教えて貰えることは、幸運なことだった。本当に有難かった。材質のこと、表面処理のこと、機械加工のこと等々必死になって勉強した。解らない点は、そのままにしないで必ず質問した。
そうすると、さらに解りやすく噛み砕いて教えてくれた。橋本さんは、詳しかった。また、客先へ納める部品があれば、発送前に現品を見せてくれた。客先の業種、生産品目に対してどういう目的の部品なのか、現品を見ながらのレクチャーは、非常に参考になった。僕は、メモを取りながら聞いた。少しずつエンジニアリングセールスの知識を身に付けていった。




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