■□これがWiiのFF□■
ゲームキューブから始まったシリーズだが、本作で大きな仕様変更となった。マルチプレイもできるアクションRPGであったのが1人用のアクションアドベンチャーになったのだ。
売上を見ると、やっぱりシリーズファンはRPGを望んでいたようにも思える。Wiiで「モンスターハンター3」がそれなりに売れたのは、やはりシリーズの路線から大きくずれなかったことも影響しているのかもしれない。
任天堂HPにある「社長が訊く」やFFCCの公式ブログには「Wiiスポーツ」や「Wii Fit」だけで遊ぶのはもったいないなんて話もあったが、従来のゲーマーにもRPGや今まで通りのゲームばかりじゃもったいないとでもいったほうがいいのではないかと思ってしまう。
主人公のレイルはクリスタルベアラーと呼ばれる特異な存在で、クリスタルの力を帯びた者である。クリスタルベアラーは恐れられており、むやみにその能力を使ってはならないと法で定められている。そのことからもクリスタルベアラーは主人公だけではないとわかる。レイルには引力を操れる力があるが、クリスタルベアラーによって操れる能力が違うようだ。
本作は、その引力の能力を使った一風変わったアクションアドベンチャーとなっている。
経験値やレベルという概念はなく、クリスタルベアラーだけに主人公は初めから強いという設定だ。ファイナルファンタジーシリーズにしては主人公がネガティブではなく、底抜けに明るく天真爛漫で豪快。正義感があるのかないのか、貸しはきっちり返すという少年マンガの主人公のようなキャラクターで好感が持てた。
■□引力を操る□■
主人公の引力を使った能力は直接物に触れずに扱う。ポインターを当てると引力が使える物かどうかがわかる。Bボタンを押すとロックオンしてゲージが溜まり、その後はリモコンを左右上下に振って投げることが可能。ゲージの溜まる速度は物との距離にも関係している。
リモコンを上に振り上げるとその物を引き寄せられ、頭上に掲げたまま移動でき、ポインターで投げたい方向を指し示して放り投げることができる。
レイルの攻撃方法は物をつかんで投げつけて敵を攻撃するというもの。落ちている剣や銃器を拾っても投げつけるだけで装備して攻撃はできない。
敵も自分より軽くてダウンしている状態なら持ち上げて、別の敵に投げつけて両方にダメージを与えられる。
ナイフを投げてきたり、火炎放射で攻撃してくる敵を持ち上げたときはBボタンで数回ナイフや火炎を発射でき、他の敵を攻撃できる。
■□シームレスなフィールド□■
フィールドのエリア切り替えはスムーズで、全体からいってもロードしている時間はかなり少ない。エリアの移動で自動セーブされ、それはプレイヤーが任意でセーブするファイルとは別に保存されるので、勝手に書き換えられることはないものの、思わぬところでやられてしまっても近場からやり直せるようになっている。
フィールドが広くて移動が大変で、詳細なマップ表示もないことから掌握しにくいところがあるが、ストレスなく進められるのがよい。
敵は瘴気ストームが出現したときのみ出現。エリアごとに出現位置が決まっているようだ。敵をすべて倒し、ストームの中心を閉じるととりあえず平定したことになり、最初の1回のみミルラの結晶を得られる。これはゼルダの伝説でいうところのハートの器に相当し、ライフが1つ増える。
同じ場所でも新種のモンスターが出現した場合にはまた平定するとミルラの結晶がもらえる。
ストームを閉じるのが簡単な場所もあるが、敵の種類や数、地形などによっては難易度が高くなっている。ストーリーにそっていけば2回目の平定はわざわざそこまで出向く必要がなかったりするのだが、無理に平定しなくても、ほどほどなライフゲージでもクリアできるようになっている。
■□プレイアブルイベント□■
もっとも特徴的なのがストーリー進行をムービーだけでなく、実際プレイヤーに体験させるということ。
突然それは始まり、下の方にちょこっと説明が出るが、強引に進んでいく。ミニゲームのような感覚で進行し、失敗したときは直前からやり直しが可能だ。
自分がやっているときには出なかったが、説明書には「あきらめる」という選択肢も出るように書いてあって、それを選ぶとクリアしなくても先に進めることができるようになっているようだ。「NEWスーパーマリオブラザーズWii」でも8回同じところで失敗するとヘルプ機能が働くそうだが、それと似た考えに基づいているのだろう。
■□モンスターの動きも観察□■
ストームが出現している時間は限られており、必死になって敵を倒そうとするのでなかなか観察している余裕がないのだが、モンスターはなかなかユニークな動きをみせている。
敵は闇雲にレイルに襲いかかってくるわけでもなく、場合によっては追いかけると逃げるそぶりをするモンスターもいる。
レイルが投げ飛ばしたゴブリンの上半身が土に埋まってしまうと、仲間のゴブリンが掘り返して救い出そうとしていたりする。
逆にレイルがはじき飛ばされてダウンし、そのまま起きあがらないとおしっこをかけてくるウルフもいるのだ。
骨だけのモンスターを攻撃し、頭蓋骨を持っていると物欲しそうにレイルの周りに集まってきたり、水中の敵は引きずり出すのにちょっとしたコツが必要だったりと、レイル自身の攻撃方法は地味ながら、様々な変化がある。
レイルが投げ飛ばした敵が合体していって巨大化することもあるのだ。
■□ヒントを知る□■
上記にあるようなそれらのヒントは勲章一覧でも見ることができる。勲章とはなにか隠された要素を発見すると獲得することができて、まだ得ていない一部の勲章についてはその勲章を得るためのヒントが書かれている。
勲章は敵の動きに関連するだけではなくて、はじめて素材を入手したときや幽霊出現を目撃するなど多岐にわたる。
郵便配達をしているモーグリから手紙を受け取る(奪う?)こともできて、そういったことからも情報を入手することができる。牛が連れ去られる事件とか、ぶどう狩りのお手伝いとか、ミニゲームも多い。
UMA通信はどこそこにどういう魔物が出て、どんな素材をゲットしたかという情報が掲載されている。
レイルの装備はイヤリング、リング、アミュレットの3種で、射程距離、集中力、幸運、攻撃、防御の能力を高める。モーグリのお店で買うこともできるが、高いので自分で拾ってきた素材から合成して装飾品を作り出すのが主となる。
■□自由度が高いゲーム□■
今作の方針であろうが、クリアするのにそれほど苦心することはない。ストーリーに沿って進んでいくだけではあっさりしすぎてもったいないくらい。
でも、序盤を過ぎてからは比較的自由に行き来できるので、楽しみ方はプレイヤーにゆだねられている。モンスターを倒して素材を集めたり、勲章を集めたり、プレイアブルイベントでハイスコアを目指してみたりとやれることは多い。
ストーリー進行上訪れない箇所を探してみるのもいいし、ストームを閉じるのに精を出すのもいい。大型の敵が出現していると時間内に倒すことが難しく、周りの物をうまく利用することを考えたりと、上級者に向けてもきちんと作り込まれている。
個人的にはクリア後や2週目で遊び尽くすより1週目でストーリーをぼちぼち進めつつ、1回で楽しみきりたいので自由に動けるのはいい。
サガシリーズが自由度が高いと評判だが、このゲームはストーリーこそ一本道だが、ストーリーそっちのけでいろんなところに行けるのでこちらの方が遊び心があって自由度が高いように思う。スローリー分岐や複数の主人公というのは周回プレイ必至なので面倒に思ってしまうのだ。
だが、敵の出現方法はもう少し考慮する余地があったのではないかと思う。フィールドには人々がいて、敵が出現すると消えてしまう仕組みになっていたので、ミニゲームをやろうと思って行ってみたら瘴気が出て腰を折られることがある。
そうなると消えるまで待つか、暇つぶしに敵と戦うかしかない。
レベル上げが必要ないので無駄な戦いがなくていいのだが、少々さみしい側面も。瘴気以外では敵が出現しないので、敵陣へ潜入してもリルティ兵士と戦闘にはならないとか、レイルはお尋ね者のはずなのに追われている感じがしないなどといったことがある。
あと、このゲームはRPGではないけれど、ダンジョンを探索するような場面はやっぱり多数ほしかった。そのあたりに物足りなさを感じるし、グラフィックがきれいなだけに、やはりもったいない。
スクウェアエニックスのメンバーズサイトではこのゲームのスクリーンショットを募集しているが、このゲームではSDカードを挿入しておけばムービー進行中でもいつでもどこでも写真撮影ができる。ゲーム内ではなぜか閲覧できないようなのだが、Wiiの写真チャンネルやパソコンで見ることができる。
たまに心霊写真のような物が写っていたりしておもしろい。
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