ボタ山の雪

ボタ山のテッペンに子供が二人
冬の夜の木枯らしに震えながら
兄と弟の子供が二人
ひもじい ひもじい子供が二人 

赤い頬を濡らして 弟はいうた
「兄ちゃん 帰ろうよ お家に帰ろう」
兄は悲しげに小首を振った
幼い 幼い小首を振った

白い息を吐きながら 兄はいうた
「やつれた母ちゃんの すまなそうに
『今日も又 何にも食うものが無かよ』ていうじゃろう
あの顔が可哀想だもんな」

やがて そのうちに 疲れた子供は
可愛いうなじを抱きおうたまま
うちらうつらと眠ってしもうた
まつげに 涙を溜めたまんまで・・・・・。

兄弟は夢をみた
弟がいうた
「だんだん ボタ山の・・・・・小そうなったよ
ぼくたちは お星さまになってしもうたよ
お星さまの金平糖 いっぱい食べよネ・・・・」

ボタ山のテッペンに 星がふたつ
冬の夜の寒空に瞬いている
苦しみ多い世の中を眺めている
悲しげに 悲しげに眺めている

なんて悲しい唄なんだろう、こんな唄があるなんて・・・
これを聞いて、ある民話を思い出した。
小さいときに父親が眠るときに読んでくれたもので
すごくこわい恐ろしい話なのに、なぜか聞きたかった。
『鳥取の布団』という題だったような・・・

 ある旅館に、おかしな布団があるという。
その布団に客が寝ると、耳元で、子供の声がする・・
「兄さん、寒かろ」「弟、寒かろ」という兄弟の声が。
それは、食べる為にその布団を手放した一家のものだった
という・・その子達は死んでしまった・・・
そのあとどうだったか、覚えていないが、「兄さん、寒かろ」
「弟、寒かろ」の所がかわいそうでたまらなく、泣くくせに
聞きたかった或る民話

美輪明宏 作詞・作曲

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