環境のーと





環境法の理念!環境基本法

 
 
法の性格
目的
  • 環境保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進
  • 現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与
  • 人類の福祉に貢献
規定内容
  • 環境保全の基本理念
  • 国・地方公共団体・事業者・国民の責務
  • 環境施策の基本的事項
策定の背景  これまでの公害、自然環境の問題に加え、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済システムによる都市・生活型公害や地球環境問題など環境問題が複雑・多様化してきました。従来の規制手法を基本にした法的枠組みでは限界が生じてきたため、環境保全についての基本的施策の方向を示すための法律が必要となりました。
機能  この法律は、国民・事業者などに対して直接の法的義務や権利を設定したりするものではなく、環境保全施策を総合的に進めるための基本的指針を定めるプログラム法の性格を有しています。
基本理念
環境の恵沢の享受と継承
環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築
国際協調による地球環境保全の積極的推進
責務
国の責務  本法に定める基本理念にのっとり環境の保全に関し、環境保全に関する。基本的かつ総合的な施策を策定し、実施する。
地方公共団体の責務  基本理念にのっとり、国の施策に準じた施策、自然的社会的条件に応じた施策を策定し、実施する。
事業者の責務 基本理念にのっとり、
  • 公害を防止し、自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる。
  • 事業活動に係る製品が廃棄物となった場合に適正な処理が図られるように必要な措置を講ずる。
  • 事業活動に係る製品が使用・廃棄されることによる環境への負荷の低減に努める。
  • 事業活動に伴う環境への負荷の低減、その他の環境保全に自ら努め、国・地方公共団体が実施する環境保全に関する施策に協力する。
国民の責務 基本理念にのっとり、
  • 日常生活に伴う環境負荷の低減に努める。
  • 環境保全に自ら努めるとともに、国・地方公共団体が実施する環境保全に関する施策に協力する。
基本的施策
環境基本計画  政府の環境保全関連施策の総合的・計画的な推進を図るために策定する環境保全に関する総合計画です。策定は政府の責務とされています。この計画により、政府は環境部門全体について環境保全の推進を計画的に管理されることが期待されます。ドイツ・オランダなどはモデルとなる同様の計画を制定しています。
環境基準  「人の健康を保護し、および生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準」として環境基準を定めることを規定しています(9条1項)。この制度は公害防止基本法から継承されました。環境基準は常に科学的判断を加え、科学的評価の変化に応じて改訂される必要があるとしています(9条3項)。環境基準の遵守については国民・事業者に対して法的拘束力をもたず、行政の努力目標という性格をもっています。ただし、他の法律により規定がある場合は、法的義務となる場合もあります。
公害防止計画  この制度は、環境汚染が著しい地域の環境基準達成及び、環境汚染のおそれがある地域において未然防止を図る上で重要な役割を果たしてきました。本法には以下の地域の都道府県知事は公害防止計画を策定することが規定されています。
  • 公害が著しく、かつ、施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難な地域。
  • 人口および産業の急速な集中などにより公害が著しくなる恐れがあり、かつ、施策を総合的に講じなければ公害の防止が著しく困難な地域。
 内閣総理大臣が基本方針を示し、それに従い都道府県知事が公害防止計画を策定することとなっています。
国が講ずる環境保全のための施策
  • 国の施策の策定等に当たっての配慮
  • 環境影響評価の推進
  • 環境保全上の支障を防止するための規制
  • 環境保全上の支障を防止するための経済的措置
  • 環境保全に関する施設の整備、その他の事業の推進
  • 環境負荷の低減に資する製品の利用の促進
  • 環境保全に関する教育、学習
  • 民間団体等の自発的な活動を促進するための措置
  • 情報の提供
  • 監視等の体制の整備
  • 科学技術の振興
  • 公害に係る紛争の処理及び被害の救済
国際協力 省略
地方公共団体の施策 省略
費用負担
および財政措置
  • 原因者負担
  • 受益者負担
  • 地方公共団体に対する財政的措置
環境審議会
環境省 環境省に中央環境審議会を置くことが規定されています。
都道府県 都道府県環境審議会を置くことが規定されています。
市町村 条例で定めるところにより、市町村審議会を置くことができます。


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規制的手法の代表!
大気汚染防止法


日本の環境保全手法は規定的手法に偏っていると言われます。特に日本の公害規制は世界有数の厳格さと、強力な執行体制を持っています。ここでは、その典型的な法律となる大気汚染防止法について。

法の性格
目的  大気汚染物質の排出に関する規制等により、国民の健康を保護するとともに生活環境の保全を目的としています。また、損害賠償責任を規定し、被害者の保護を図ることを目的とします。
規定内容
  • ばい煙に関する規制
  • 粉じんに関する規制
  • 有害大気汚染物質対策の推進
  • 自動車排ガスに係る許容限度
  • 大気汚染の状況の監視等
  • 損害賠償
機能  工場等の排出口から排出される大気汚染物質(ばい煙、粉じん等)の排出規制、大気汚染物質を排出する施設を設置する際の施設規制などの規制的手法により、固定発生源からの大気環境負荷を低減する機能を有しています。また、都道府県知事に対して、大気汚染状況の監視などの環境保全措置を取ることを義務づけ、大気汚染防止の確実な推進を図っています。また、大気汚染による人への健康被害が生じた際の、事業者の損害賠償責任を明確にし、被害者の救済を図っています。
ばい煙に関する規制
ばい煙の定義
  • 燃料その他の物の燃焼に伴い発生するいおう酸化物
  • 燃料その他の物の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生するばいじん
  • 物の燃焼、合成、分解等に伴い発生する有害物質(政令で定められます)
規制対象  ばい煙発生施設(ばい煙を発生し排出する一定の施設、政令で定めることとなっています)。
施設規制  ばい煙発生施設を設置・変更等をしようとするときには、都道府県知事に届出を行わなければなりません。届出受理後、60日間は設置・変更を禁じています。また都道府県知事は、届け出られた計画では排出基準に適合しないと認められる場合には、届出受理後60日以内に計画変更ないし廃止を命ずることができます。
排出規制  ばい煙発生施設設置者は、排出口において以下の各種排出基準に適合しないばい煙の排出を禁じられています。排出基準不適合のばい煙を継続して排出する恐れがあり、人の健康または生活環境に被害を生じると認めるときには、都道府県知事は改善命令、施設使用停止命令を行うことができます。
排出基準  いおう酸化物、ばいじん、有害物質、特定有害物質のそれぞれについて政令で排出基準が定められています。施設単位の基準となるため、施設集中立地地域では効果に限界があります。
特別排出基準  いおう酸化物、ばいじん、特定有害物質の発生施設集合地域において、複数の施設からの重合によって一定の水準を超える汚染が発生し、または発生する恐れがある場合に、その施設集合地域の全部または一部の地域について定めます。
総量排出基準  工場・事業場集合地域においては、施設単位の排出基準では限界があります。そのため排出基準だけでは環境基準を確保することが困難と認められる地域については、都道府県知事は、一定規模以上の工場・事業場(特定工場等)を対象に指定ばい煙(政令でさだめる)の総量削減計画を策定し、総量規制基準を定める義務を負います。
燃料使用基準  都道府県知事は、燃料使用量の季節変動が著しい一定の地域および指定地域において燃料使用基準を定めることが出来ます。燃料使用基準の不遵守は遵守勧告、遵守命令の対象となります。
粉じんに関する規制
粉じんの定義  物の破砕、選別その他の機械的処理またはたい積に伴って発生、飛散する物質を粉じんと言います。さらに粉じんは以下のように区分されます。
  • 特定粉じん:アスベスト等、健康関連被害を生じる恐れがある一定の指定物質。政令で定める。
  • 一般粉じん:特定粉じん以外の粉じん
施設対象
  • 一般粉じん発生施設:工場又は事業所に設置される施設で一般粉じんを発生・排出・飛散させる一定の施設で、政令で定める施設が対象となります。
  • 特定粉じん発生施設:工場又は事業所に設置される施設で特定粉じんを発生・排出・飛散させる一定の施設で、政令で定める施設が対象となります。
施設規制  一般粉じん発生施設の設置は届け出制となっています。構造、使用、管理基準の遵守義務があり、不遵守の場合は遵守命令、一時使用停止命令の対象となります。
 特定粉じん発生施設の設置についても届け出制となっています。届け出受理後60日間の設置が禁じられ、以下の敷地境界基準遵守が義務づけられます。届け出られた計画では規制基準に適合しないと認められる場合には、都道府県知事は届出受理後60日内に計画変更・計画廃止を命ずることができます。
敷地境界基準  特定粉じん発生施設については、施設の隣地との敷地境界における規制基準が設けられています。敷地境界基準は、特定粉じんの種類ごとに大気中の許容濃度として政令で定められます。
自動車排ガスに係る許容限度
許容限界  環境庁長官は、以下の事項について許容限界を定めることが規定されています。
  • 大気中に排出される排出物に含まれる自動車排ガスの量
  • 自動車燃料の性状(必要があれば)
  • 自動車燃料中に含まれる物質量(必要があれば)
 以上の許容限度を確保するため以下の措置を取ることが規定されています。
  • 運輸大臣は、「道路運送車両法」に基づく命令で、自動車排ガスに係る規制を定める場合には、上記の許容限度が確保されるように考慮しなければならない。
  • 通商産業大臣は、「揮発油等の品質の確保に関する法律」に基づく命令で自動車の燃料に係る規制を定める場合には、上記の許容限度が確保されるように考慮しなければならない。
 以上の規定により、「道路運送車両法」の排出規制、「揮発油等の品質の確保に関する法律」の燃料規制が具体化されています。
監視等
常時監視  都道府県知事は、大気の状況を常時監視し、汚染状況を公表しなければなりません。
ばい煙排出者  ばい煙排出者は以下の義務を負います。
  • ばい煙の量・濃度の測定、記録義務
  • 特定物質の発生施設に関する事故時の応急措置、復旧義務
  • 報告義務、検査受認義務
粉じん排出者  特定粉じん排出者は排出濃度の測定、記録義務を負います。
緊急時の措置  大気汚染の状況が一定の水準を超える場合には、都道府県知事は市民に対する周知、ばい煙排出者に対する排出削減協力要請義務を負います。汚染水準がさらに著しい水準に達する場合には、ばい煙排出者に対する命令権限を有します。
自動車排ガス  藤堂府県知事は、自動車排ガスによる大気の著しい汚染が生じ、又は生ずるおそれがある道路の部分について、大気中の自動車排ガスの濃度の測定を行うことが規定されています。 
損害賠償
無過失責任   工場又は事業場における事業活動に伴う健康被害物質の大気への排出により、人の生命・身体を害したときは、当該排出に係る事業者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。



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