いま話題のテーマなので、多くの人には分かっていると思われるけど、いちおう状況から。近代麻雀に「オバカミーコ」という漫画が連載されていて、その10月15日号にこんなトラブルのシーンがあった。
オーラス、主人公のオバカミーコだけがテンパイ。ミーコが何家か明確ではないが、状況から云って北家。親から順に3人がノーテン宣言したあと、ミーコもテンパイ宣言 and 手牌オープン。ところがそのあと、最後に海底牌をツモるべき親が、ツモっていなかったことが判明した。
そこでどうするかという話になり、会場責任者である枕木プロの裁定を仰いだ。すると枕木プロが下したのが、「ツモ牌が残っている=終局していない。しかしノーテン宣言者は手を伏せただけなので問題なし。終局していない状態で手牌を開いたミーコのみチョンボ」という裁定。
読んだとき、(いかにも漫画らしいオチ)と思って面白かった。ところが思いがけなくあちこちのbbsでコレが話題に。σ(-_-)も勢いで、某bbsに書き込みした。(^-^; そこで、今回、σ(-_-)なりの考えを書いてみることにした。
ルールに明記されていないトラブルが生じ、当事者間で解決できないときは主催者の裁定を仰ぐことになる。裁定をあおいだ以上従うのは当然であるが、その裁定が順当なものであるかどうかは別問題。この裁定も、いかにも強引に感じる。
いかに「状況や理由に関係なく、ゲーム中に手牌公開があればその時点でゲーム終了。手牌公開プレーヤーがアガっていなければチョンボ」と云っても、ノーテンとかテンパイ宣言は、いわばその1局の終了宣言。
ゲーム終了という裁定はまだしも、プレーヤー全員が終局宣言したものを、「ゲーム中に手を公開したがアガっていない」として手牌公開プレーヤーをチョンボとするのは理に走りすぎている。言うなら“角を矯めて牛を殺す”のたぐい。
この裁定でゆくと、仮に状況が「ツモ忘れプロがノーテン。残りの3人がテンパイ宣言していた」と云う場合、「ツモ忘れプロは手牌を公開していないのでノーペナ。あとの3人はペナルティ」となるのか。あるいは「最初のテンパイ宣言(手牌オープン)があった時点でゲームは終了=そのプレーヤーだけペナルティ」となるのか、などという問題がさらに生じる。
トラブルに対する考え方には、プライベートゲーム的なものとオフィシャルゲーム的なものがある。たとえば終局時、“テンパイしていてもノーテン宣言できるか=手牌を公開する必要があるか=そのままノーテンと認めさせることができるか”という問題がある。
プライベートゲーム的な考え方では、「本人がノーテンと云っているのだから、問題ない=手牌を公開する必要もない=そのままノーテンとして認める」という発想になる。
しかし成績は得点の多寡で決定される。テンパイ・ノーテンで得点の移動があるとすれば、それはプレーヤー全員にかかわる問題。「本人が損するだけだから」、「オレが損するだけだから」というのは、自己都合だけのプライベートゲーム的な発想でしかない。
「ゲームは可能な限り正常な状態で進行する」というのが、オフィシャルゲーム的な考え方。そこで“テンパイでもノーテン宣言できるか”かという問題は、「テンパイしていればノーテン宣言できない=たとえノーテン宣言しても手牌を公開して確認を得る必要がある=そしてテンパイしていれば、テンパイ料を取得する、ということになる。
現実には見せなくても“あ、そう”という感じでそのまま進行している。しかしこれは「見せて確認を受けた」とプレーヤー全員から“認定”されたということである。とうぜんプレーヤーの誰かから、手牌公開を求められれば応じる義務がある。
そこでノーテン宣言のケースは、オフィシャルゲーム的な考え方ではテンパイ者がノーテン宣言をしても、それを押し通すことはできないことになる。これは“役満をアガっても、千点でいいと云えるか”、“裏ドラを見ない権利はあるか”という話に通じる。
すなわちルールに明記がないトラブルが発生したとき、プライベートゲーム的な発想しかないと、よく云えばケースバイケース、悪く云えば行き当たりばったり、要するに事が起きてみなければ分からないという話になる。
ではオバカミーコのケース、オフィシャルゲーム的な考えではどうなるか。
麻雀でのトラブルは一事不再理の原則によって処理するという考え方がある。たとえばゲーム途中で開門場所やドラのめくり間違いなどに気が付いても、いまさら正常に戻しようがない。
「開門場所やドラのめくり間違いは洗牌からやり直し」と明記してあればそれに従えばいい。また明記がなくても、やり直しは一つの解決法である。しかし明記がなければ状況によっては、いくらでも異論がでる。そのようなケースのトラブルを、「現状を有効として、このまま進行しましょう」というのが一事不再理による解決法である。
プロ野球でホームランがあったとき、うれしさの余りベースを踏まないで回ってしまうことがある。仮に1塁を踏み忘れたとする。守備側が気が付かず次のプレーに入ってしまえば、そのバッターは“正常に塁を回った”と認定されてホームランは有効となる。
もちろん守備側が気付き、プレーヤーが次の塁を踏んだあとに1塁に送球すればアウト。ホームランは無効となる。たいてい打たれたピッチャーは呆然としているだけだが、ヤクルトの古田あたりになるとランナーの走塁をじっと見ている。
この前なんか、中日の○○(誰だったか忘れた)がホームランを打ってベースを1周しているとき、古田はホームベースを背にして走塁を見ていた。そして○○がホームを駆け抜けようとした瞬間、クルッと振り向いて○○がホームを踏むのを確認した。(おお、そこまでやるかと)と思わず....いかん、話が横道に....(-_-;
この一事不再理を適用し、「全プレーヤーが終局(ノーテン・テンパイ)宣言を終えている。その時点で、このゲームはプレーヤー全員の認定によって終局が確定。その時点でのテンパイ者(この場合はミーコのみ)はテンパイ料取得」とするのが一つの裁定である。
じっさい一般のゲームでは、誤ロンの場合でも手牌を公開した時点で終局としていることが多い(キツイところでは、「ロン発声で終局」ということも)。そこでオバカミーコのケースも、全員の終局(テンパイ・ノーテン)宣言が終わった時点で、ゲーム終了とするわけである。これは云わば合理主義的解決法。
しかし本来一事不再理とは、さきほどの開門場所やドラのめくり間違いなどのように、途中で気が付いても正常に戻しようがない事案について適用される解決法。
このケースはたしかにプレーヤー全員の終局宣言はなされたが、それが間違いであることが残り牌の状態によって確認できる。また正常な状態で終局させることが可能である。そしてゲームは正常な状態で終局できるのであれば、そうするというのがオフィシャルゲーム的な考え方。
そこでもしσ(-_-)が裁定者なら、「ミーコは手牌を立て直し、ツモ忘れプロはハイテイ牌をツモり直して1枚切って終了」とする。もちろんミーコは“ミスによってゲーム中に手牌を公開”したことによりアガリ放棄”。
ノーテン宣言したプレーヤーは、手牌を公開していない。しかし公開の手続きを省略しただけで、ルール的には手牌を公開してノーテンの承認を得たのと同じこと。したがってミーコと同じく、“ミスによってゲーム中に手牌を公開”したことによりアガリ放棄”と裁定する。
全員アガリ放棄なので、ツモ忘れプロが海底牌をツモり直してテンパイしてもテンパイ扱いにならない。そこで全員アガリ放棄なら、ツモり直しをする必要があるのかということになるが、正常なゲーム進行と、誰かがノーテン扱いになるかならないかということは別問題。そこであくまでツモ忘れプロは海底牌をツモり直し、1枚切って終局する。
参考までに、同様なことが純麻雀で起きたらどうなるか。
純麻雀に王牌は無いので、壁牌はすべてツモ牌の対象である。壁牌が1枚でも残っていれば絶対に誰かのツモ牌。そこで壁牌が放置されたまま流局することはない。またノーテン罰も無いので、流局したからといってテンパイ者が手牌を公開することもない。
仮にまだ壁牌が残っているにも関わらず全員が終局と勘違いし、さらに「残念だった」と云って手牌を倒示したプレーヤーがいたとしても、純麻雀ではゲーム続行可能な状況であれば、当該プレーヤーは手牌を立て直してゲーム続行となる。もちろん当該プレーヤーはアガリ放棄となる。
なお純麻雀では、誤ロンによって手牌が倒示されることがあっても、ゲーム続行可能な状況であれば、「誤ロン者はアガリ放棄。手牌を立て直してゲーム続行」となる。
|