先般、bbsにカンサキの話題が投稿された。カンサキについてはこれまでもいろいろ書いてきたが、改めて。
日本語でも外国語でも、一つしか意味を持たない単語もあれば、状況によって複数の意味を表すものもある。これをマルチ単語と称する(今 作った(笑))。で
日本語では「先」というのもマルチ単語で、4つの意味で使われる。
(A)むかしむかし、つまり かなり過去のことを意味する場合。
先祖=むかしむかしの親
先の中納言、水戸光圀公にあらせられるぞ=むかしの中納言さま
※これに近い意味として「前(まえ・さき)」というのがある。「前」は通常、「位置が前(前方)」の意味で用いられるが、時間的に過去を表す場合がある。
例 前宮(まえみや)
「前方の お宮(神社)」ではなく、昔の お宮(現在のお宮さんの以前に建てられていた お宮)。そこで「先の中納言」を、「前(さき(以前)の中納言」と表現するのも可。
(B)直近の過去のことを意味する場合
先代=当主の親、または直近の主(あるじ)
先ほどの話だけど=すぐ前にあった話
さっきの出来事=すぐ前にあった出来事
(C)これから行うこと、つまり直近の未来のことを意味する場合
真っ先にやれ=最初にやれ
※これに近い意味として、場所や位置を示す場合もある
先に立って,先端,先っ緒(さきっちょ)、など。
(D)ずっと後、つまり かなり未来のことを意味する場合
先になって苦労するぞ=後になって苦労するぞ。
先々のことが心配=後々(あとあと)のことが心配
この先、どうなることやら=今後、どうなることやら。
もともと麻雀でいう「先付け」は先付け小切手(先の日付け=後の日付けを記入した小切手)からきたスラング。すなわち「先になって(=後になって)役を付ける」ことを、先の日にち(後の日にち)になって有効になる先付け小切手にたとえ、「先付け」、または「お先」と称した。これは当然(D)の意味。
そしてビジネスの世界で「先付け」といえば先付け小切手に決まっているし、勘違いされることはない(まさか「先付けですが」と小切手を渡されて、「最初に銭をポンしなければいけない小切手か」とは思わないだろう....)。しかし麻雀の世界では、聞き慣れない表現。
そこで初めて先付けという表現を聞いたプレーヤーが(C)の意味、すなわち「最初に役をつけること」と思ってしまったのもムリもない。ところが相手がやったのは、最後に役牌だけでロン。これじゃあ「なんだ、先付けどころか後付けじゃないか」と思ってしまったのもムベなるかな。そこで「これからは最初に役を付けるのを徹底させよう」という話になってしまった。完先(完全先役付け)ルールは、こうして誕生した。
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