Rule 規則

    (13)先付け


 最初に数牌などを副露し、最後に役牌と数牌の双ポン聴となり、その役牌の一翻でアガリとなること。この「先付け」という名称については、商業上使用される「先付け小切手」に由来する、あるいは先物取引(先に商品取引を行い、あとで決済する)に由来する、などの説がある。

 先付け小切手とは、たとえば4月1日に小切手を振り出すとき、なんらかの都合で1週間とか1カ月先の日付けを記入して振りり出された小切手のことをいう。

 するとたとえば1カ月先の5月1日付けとして振り出された場合、1カ月先にドンと現物になるというわけである。即ちここでいう「先付け」とは「先付け」の意である。

※小切手である以上、いくら先の日付けが記入してあっても商法上は無意味。したがって1カ月先の先日付け小切手であっても、貰った相手がその日にその小切手を銀行へ持参し現金引き出しを要求すれば、振り出し人の残高がある限り、銀行は支払いに応じざるを得ない。それを防ぐために、小切手の隅に「期日以前無効」と付記したりもする。

 もちろん付記があろうが無かろうが、商法上無意味であることに変わりはない。しかしそこまで振出人の意志が示されているものを無視して、銀行が支払いに応じることもない。かと云って手形でない以上、無条件に拒否もできない。そこでこういう場合、銀行は必ず「振出人の了解をとってくれませんか?」という。もちろん了解を得るために振出人に連絡を取れば、「おひぃ!、話が違うじゃないか」と大騒ぎになることは間違いない。(笑)  それなら最初から手形を振り出せばいいようなものであるが、手形より安直なのでよく代用される。

 そこでこれを麻雀に例え、最後に役牌でドン!となるアガリを「何だ、先付けかぁ」とか「お先め!」などと互いに揶揄していた。じっさい昭和30年代では、先付けのアガリがあれば「何だ、先付けめ」などと合いの手があるのがお約束みたいなものだった。ところがこれを初級者が「先付け=先付け」と勘違いした。

 「『先付け』と云ってるが、後で役を付けてるじゃないか。どうもおかしい。ダマされてるみたいだ。先付けという以上、役を先に付ける事を徹底させようじゃないか」というので自然発生的に誕生してきたルールが「完全先付け」、略称「完先ルール」である。

 もちろんこの「完全先付け」は「完全先付け」の意味であって、「完全先付け」の意味ではない。すなわち本来の意味の「先付け」と「完全先付け」では正反対の意味となる。

 じっさい完全先付けというルールが流行りだした頃、「ルールは完全先付けです」と云われると、もちろん完全先付という意味だということぐらいは分かっていたが、(なんだか“絶対に最後に役を付けてアガらなければダメ”というルールの意味みたいだなぁ)と思って、どうもなじめなかった。

 しかし近年は、「完全先付け」という用語からの連想で、本来の意味「先付け」も「先付け」という意味で認識されるようになり、本来の意味のアガリ方(数牌などを先鳴きしておいて、最後に役牌でドン)を示す用語がなくなってしまった。

 そこでいつのまにか本来の「先付け」のアガリ方は「後付け」と表現されている。この「後付け」は、もちろん「後付け」の意味である。そしてさらに現在では、先(役)付けと後付けという用語/ルールから、中(役)付けという用語/ルールもかなり普及している。

 しかしそれにしてもややこしい。もう本来の意味なんてどうでもいいから、完全先付け/中付け/後付けでいいや。。。。

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