Piller stone 柱石 

    (4)雀力(バックボーン)


 雀力、すなわち麻雀の実力ということになる。しかし「実力がある」というと、単に「強い人」というイメージしか湧いてこない。もちろんそうには違いない。しかし雀力とは、判断力と精神力の総合力だと思う。そこで、まずは判断力の話。

 麻雀がたぶんに偶然性が伴うゲームであることは誰しも承知。とはいえ、雀力に差があれば一定期間の間には成績の差となって表れてくる。その雀力の差、それは瞬間の判断力の差

 もちろん麻雀に限らず囲碁・将棋でも、実力の差とは判断力の差である。しかし「長考」という言葉で表されるように、囲碁・将棋などではたとえ瞬間的に良い手が閃いても、“閃いた瞬間に打たなければならない”という事はない。

 また瞬間に良い思案が浮かばなくても、あわてて打たなければならないという事もない。もちろん「だからヌルいゲーム」というのではない。それはそういうゲームであるからだ。しかし麻雀は、常に瞬間の判断力が要求されるゲームである。

 通信世界でもバックボーンが太ければ大量の情報を誤りなくスムーズに処理できる。バックボーンが小さければ、情報処理のスピードは非常に遅くなる。それでも無理に早く処理させようとすると、判断の連続の中でミスも発生しやすくなる。麻雀でいえばその積み重ねが悪い成績として表れる。ミスをおそれて誤りのない処理をしようとすれば、摸打がモタモタする

 さんとさん、麻雀の成績はどちらか云えばさんが押し気味。しかしほぼ互角の成績をあげてきた。そこでさんはさんをライバルと目していた。そのさんは、いつもコンスタントにX秒で打牌する。さんはいつもはY秒くらい、ときにはZ秒で捨て牌している。別にさんは何も云わない。和気藹々の友達麻雀。そのさんがさんのグループで打つことになった。

 さんのグループはなかなかの打ち手そろいというウワサ。さんも腹帯しめて雀荘に向かった。いざ始まったら、そのグループ、みんなさんと同じX秒ペース。さんだって負けてはいられない。自ずからそのグループのペースで打った。そうなったらもういけない。手牌を見るのが精一杯で、場なんぞ見るヒマぜんぜんない。互角どころかココはドコ、ワタシはダレ状態。これがすなわち雀力の差

 ヘボと思われるのは悔しいので、自分もできるだけ同じペースで打つことを心がけている。といっても不要牌がいっぱいある、あるいは敵の攻撃などあまり考えなくていい序盤なんかでは切り牌に迷う事もない。

 しかし中盤過ぎ、右へ行こうか左に行こうか、あいつに何がアブナイかなんて状況になってくるとそうは行かない。思わず手がとまり、しょっちゅう「ウ〜ム、ウ〜ム」の連続となる。

 すなわち、どんな状況でもコンスタントにX秒で適切な判断を下して打牌できるプレーヤーと、たとえ同じ打牌を選択しても、しょっちゅうコツンコツンと止まるプレーヤーでは、その雀力は余分にかかった秒数のX倍違う。すなわち雀力の差とは、瞬間の判断力というバックボーンの太さの差といえよう。

 では雀力アップを図るにはどうしたら効果的か。それはミス選択をおそれずに、瞬間に判断を下して打牌することを心掛け続けること。それが基本の第1歩。それを自分に強制して実行すると、最初のうちは切った瞬間に、思わず「アッ!」と声が出るような牌ばっかり打つ。(~0~; それはいままでヌルい麻雀ばっかり打ってきた証拠。

 しかし勝つ負けるを度外視して、それを実行し続ける。するとするとアラ不思議。訓練とは恐ろしいモノで、そういうミスタッチがどんどん少なくなる。もちろん人間だからミスがゼロになることはない。要はどれだけ少なくするかという事だ。
 そんな訓練を積んだあと、むかしの友達と打ってみる。きっとダンチの差がついている(かもしれない.....)

以前へ 以降へ 目次へ