Other stone 他山石 

     (19)相手に失礼、の思い出


 こんな手がある、と言っても某スポーツ紙に出ていた何切る問題だ。

 五萬五萬五萬六萬七萬四筒五筒六筒七筒八筒八筒五索六索七索   ドラ東

 オーラス、2万点ほどマイナスしたラスめの北家。そんな北家を後目(しりめ)に、1位と2位は楽しそうにトップを争っている。そんなところへ北家がツモ七萬。ここで何切る。

 もちろん裏ドラおよび三筒六筒でのアガリを期待して八筒切りリーチでも構わない。しかし何かもったいない。まぁ、四筒切りの仮テンとして、四萬六萬のくっつきを狙うというのが順当か。じっさい回答もそうだった。

 それはいいけれど、その解説で思うことがあった。
 「満貫手が見えているのに八筒切りはもったいない」としたあと、「それだけではない。1位と2位がトップを争っているとき、ヘタするとリーピンのみで終了させてしまうなど相手に対して失礼だ。しかし満貫アガリなら許される。それが男の花道だ(←この部分はウソ...m(_)m.)」とあった。

 20年ほど前、メンバー10人ほどの麻雀サークルに属していた。メンバーはほぼ同年輩だったが、それでも上と下では7,8才の開きがあった。そしてσ(-_-)は年少組。

 まぁ競技麻雀の同好会のようなもので、別に会長とか社長はいなかった。しかし自ずから年上のメンバーがサークルの中心だった。

 その年上グループが常々云っていたのが、「自分がラスめのとき、安手でアガったり、安易な放銃で勝負を決定づけるのは、トップを争っているプレーヤーに失礼だ」ということ。

 そこでσ(-_-)も、「なるほろ、競技麻雀とはそういうものか」と思っていた。そんな頃、某新聞社の企画で麻雀対局があった。その企画にサークルのメンバーが交代で出場した。

 そして或る日、ABCDの4人が対局、WXYZの4人が採譜係りということがあった。σ(-_-) は年上グループのDさん担当だった。

 で、オーラスになったとき、親のAさんは2万点、Bさんは1万点ほどプラス。逆にCさんは1万点、Dさんは2万点ほどマイナスという状況。

 そんな中でDさんの配牌を見ていたら、幺九牌が5,6枚で、あとはそれなりのメンツという状態。するとDさんは、そこから国士をやりだした。

 (満貫も難しいし千点でアガるわけにもゆかない。まぁ、投げというところか)なんて思いながら見ていた。ところがそれから幺九牌ばっかり入ってくる。もちろん有効牌ばかりではない。いろいろダブって入って来る。

 断幺(タンヤオ)牌を整理したあと、ダブった字牌もどんどん切るが、まるで狙っていれば大三元だって出来たんじゃないかというくらい....そうこうするうちに中盤の終わり頃になって、国士の一上聴(イーシャンテン)になってしまった。

 (あらぁ)と思っていると、そこで危険牌らしきものを引いた。1位めも2位めもリーチしていないが、ひょっとしてどっちかダマ聴かも知れない。たとえ自分が千点でアガらなくても、どちらかへ放銃すればラスめが勝負を決定づけることになる。

 そこでせっかくの一上聴だが、Dさんはその牌を止めて幺九牌を切り出した。ところが下家の2位めが、あっさりとその危険牌をツモ切り。次のDさんのツモが、本来なら国士のテンパイ牌。

 と云ってたっていまさらどうしようもない。いまや安全牌らしくなったその危険牌を切って、一上聴に復活。それからこちゃこちゃしている内に、最終的には安全牌も危険牌も関係なく、ベタベタに崩してしまった。

 ゲームの結果は、流局してトップめの逃げ切り。もちろんDさんがホントに国士を狙ったとすれば、捨て牌そのものが違ってくる。となればチーポンがあったかも知れず、Dさんのツモも自ずから異なってくる。

 そんな神様しか分からないような話はさておいて、このときのツモだけで云うと、Dさんは2巡後くらいに国士ツモで逆転トップだった。

 そんな事云っても仕方ないので、σ(-_-)は何も言わなかった。しかし何も言ってないのに、なぜか他のプレーヤーの採譜をしていた年上グループがうるさかった。

 「いいか、浅見さん、Dさんはリッパだった。ヘタなあがりや放銃で、ラスが迷惑かけちゃいけないと国士に走った。結果的に国士をツモった形になったけど、そんなものは愛嬌だ。じっさいに国士をやっていれば、ツモはどうなったか分からない」

 ツモについては、そりゃそうだけど、なんとなく釈然としなかった。ゲームが終わったあともそんな顔をしていたので、それでいろいろ云われたのかもしれない。(-_-)

 その後、つらつらと考えてみるに、やっぱりどうも納得できん.... 競技麻雀なら、なおさらトップを取るために、あの状態から国士一直線じゃないかいな。

 そう思うようになってから、相手に失礼だとか、ラスめがどうこうのなんてことは考えないことにした。「ふん、他人のことなんか知ったことか」である。

 といってもそのサークルでゲームしているときは、年上グループがウルサイので、しないようにしていた。そのうち、そのサークルも解散した。

 で、そのときウルサく云ってきた年長者が、この何切るの出題者.... そいで、(20年経っても同じこと云ってるなぁ。それはそれでリッパだけんど)と思って、思わずカキコする気になった。

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