Mahjan talk 雀話

    (30)大明槓


 先般、あるコラムで「大明槓がどうのこうの」とあるのを見て、ちと昔話を思い出した。

 昭和45年、一所懸命、ルール解説を書いていた。ところがそのとき槓子の説明で非常に面倒な思いをした。それは槓も刻子みたいに暗刻と明刻の2種ならいいが、槓には暗槓明槓A明槓Bの3種があるからだ。

 もちろん明槓Aとは暗刻があるとき4枚目を槓したときのもの、明槓Bポンしているとき、手牌中から同一牌を加えて槓したものである。明槓Aであろうと明槓Bであろうと、できてしまえば形も点数も同じこと。

 おまけに中国麻雀では明槓Aによる嶺上開花であっても、責任払いなんてルールはない。そこで中国には明槓A明槓Bを区別する用語は無い。

 しかし解説を書いているとき、両者を区別する用語がないと面倒くさい。たとえば上記の文章でも、これをAとBに分けないとすれば、明槓Aは「暗刻があるとき4枚目を槓」、明槓Bは「明刻に同一牌を加えた槓」と表現しなければならない。

 槓の解説はチーポンの倍くらい面倒なのに、これではたまらん。そこで両者を区別する適切な用語を考えた。もちろん明槓Bには加槓(チャカン or かカンという表現はある。しかし「チャカン」は搶槓(チャンカン)と間違えやすい。「かカン」は「か音」が連続して発音しにくい。

 そこで大四喜/小四喜にならって、単純に大明槓/小明槓とした。いや実は最初は短く「大槓/小槓」にしようかとも思った。しかしこれだと明槓ということが分かりにくい。そこで結局、大明槓/小明槓とした。

#後年、中国に川牌(かわハイ)という1スート5枚の麻雀と親戚のゲームがある。この川牌では、手牌に4枚あるとき槓するのを大槓ということを知った(他の中国ゲームでも、同じ表現がある)。

 で、印刷にかかる前、完成した原稿を持って先生の処へ持参した。もちろんチェックして貰うためだ(大西太郎という方で、σ(-_-)の師匠)。

じっ〜と読んでいた先生、
浅見君
ハイッ
この大明槓とか小明槓というのはなんだね?
はいっ、あの、かくかくしかじかというわけで・・・
ふ〜ん、しかしねえ浅見君。麻雀という伝統的なゲームに勝手な用語を使っちゃいかんよ
....(_ _;

 しかしもともと自費出版。先生にはグッサリ言われたが、こだわりもあった。そこでそのまま出版した。出版したと言ってもインターネットどころか近代麻雀もない時代。いや、仮りに専門誌があったって、若僧のルール解説本などPRされるわけがない。まぁ、なにかの表紙に口の端に乗るだけ。※本のタイトルを「麻雀法学セミナー」という。とっくの昔に絶版になっているが、いま見つかれば超貴重本....(^-^;

 そして10年くらい経ち、麻雀誌などにルール関係のことを書く機会が多くなった。その中で特に“大明槓だ、小明槓だ”と宣伝した記憶はない。しかし気がつくと、あちこちのルール解説やコミックの中で「大明槓」という表現をチラホラ見かけるようになった。いまではけっこう市民権も得ているようだ。

 元はと言えば必要に迫られての造語、別に流行らそうと思って作った用語ではない。第一、ルール解説を書いている当時、好きで書いているだけで、どれだけの人の目に触れるかと言うことなど、大して考えなかった。

 しかし今日、先生にクレームをつけられてもそのまま活字にした用語が、思いがけずみんなに使われているのを見ると、けっこう嬉しい。(^0^) #それにしても、小明槓はほとんど見かけないな....

PS:実はこの他にも結構使用されている造語がいくつかある。大明槓にくらべればポピュラーではない。それでも「実はこれは」と言えば、たぶん「ウッソー」という反応が返ってくると思ふ。でも全部が全部、「σ(-_-)が造語した」という証拠があるわけではない。そこで内緒なのだ。(^-^;

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