Mahjan talk 雀話

    (27)接待麻雀


 20年ほど前、σ(-_-)の勤めている会社は松○屋百○店と取引があった。あることで話が非常にうまくゆき、うちの社長が宴会に招待された。こっちは会社で残業していたら、午後8時頃になって電話がリーン。

 出ると、それは社長からだった。
「いま宴会が一段落して、麻雀をしましょうという話になっている。しかし知っての通り、ワシは麻雀ができん。そこで“うちの社員にはうまい奴がいるんだが”と言ったら、“ぜひ一度、呼んでみてください”という話になった。どうだ、いまから出てこられないか」
「はい、大丈夫です」と返事して、さっそく指定された料亭に出向いた。

 座敷に通ると、松○屋の重役さんをはじめ、社員の方が12,3人。みんないい状態にできあがってご機嫌な様子。そして横の方に麻雀卓が用意してある。うちの社長もσ(-_-)の顔を見ると、「おお、来たか」と大変、ご機嫌。「では早速」というので席に着いた。

 勝っても負けてもσ(-_-)に金銭的な問題は生じない。そこで特にどうこうという気負いはなかった。それでもわざわざ呼ばれて恰好悪い姿は見せられない。おまけにσ(-_-)には変な?ポリシーがあった。

 それはどんな経緯からのことであっても、わざわざσ(-_-)が対局者として希望され、応じた以上は一所懸命打つ。特にこういう接待麻雀では、一所懸命打つことが最高の接待になると信じて疑わなかった(形としては、向こうがうちの社長が接待してくれてるんだけど)。もちろん結果的に勝った負けたは別問題。

 そこは座卓だったが、σ(-_-)は正座でピシッと決めてゲームに入った。もちろん相手はみんなできあがっているからあぐらをかいて和気藹々。

 東の1局はジャブかなんかの感じで、誰がアガったか記憶もない。2局目、やはり大した手でもなかったが、ドラの9索が1枚だけある。(こりゃあ、ドラを活かすしかないな)と思いつつ、手を進める。すると結局ドラ単騎の聴牌となった。そこで即リーを打つと、一発でツモ。裏ドラアリのルールであったが、リーチ一発という役はなかった。しかしいずれにしても8千点。

「おお、なかなかやるね〜」なんてチャチャを「いえいえ」なんて生返事で返しながら、次の局へ。東の3局はσ(-_-)が親だ。大した手ではなかったが(たしかタンヤオドラ1くらい)、あっさりと2900をアガった。すると近くにいた社長が手を伸ばして、σ(-_-)の腰のあたりをちょんちょんとつつく。

 (なにかな・・・?)と思って振り返ると、社長が首を軽く振っている。「ン?」と思ったが、すぐ(ほどほどにしておけよ)という意味だと分かった。しかし社長、そんな見え見えのサインなんて・・・・

 そんな見え見えサインの後にワザと放銃するような牌を打ったら、却って相手は気を悪くする。それに麻雀なんて、放銃したくなくたっていくらでも放銃する。ヘタすると、ホントに放銃したんだってワザと放銃したと思われちゃうよ....なんてことを思いながらゲームに戻った。

 ところがその次、タンヤオドラ1という手をさっさとテンパッた。リーチしてから、ほどなくロン。。。すると社長が、またつんつん・・・・困ったなぁ、まさかいまさら猿芝居はできないし....そこでつんつんは無視してゲームに集中することにした。するとなんだかZONEに入ってきた。

 それからもリーチドラドラとかリーヅモタンヤオで即リー攻撃。連荘が済んだあとの相手の親は、一鳴き千点二千点でけっ倒してアガリ続けた。

 南の3局になったころはダントツ状態で、相手からは途中で「社長さん、この人、強すぎるよ〜」なんて声がなんども出ていた。そのたびに社長は「いやぁ、アッハッッハ.....」と困ったような笑い声・・・。

 1時間余かかって1ゲーム終わったときには、なんとなく2ゲーム目はナシという雰囲気になっていた。終わりなら終わりで構わない。こっちはお役目を果たした気分で、席を後にした。

 翌日、社長に呼ばれた。
「浅見君、昨日のアレはなんだね」
「・・・・」
「浅見君は、つき合いということが分かっとらんのじゃないかね」
「しかし社長、昨日はたまたま勝っただけで.....麻雀なんて勝てるなんて保証はないですし....」
「そんなことは分かっておる! 勝とうと思って打つこと自体がイカンのだ。ああいう麻雀というのは、勝ち負けよりも場を和ませることが目的だ。そんなこともワカランのか」
「しかし....自分が真剣に打つことが最高の接待ではないんでしょうか....」
「バカモンなにが真剣だ。お前が真剣になったって誰も喜ばん!
「・・・・」

 きっと社長は、「ポリシーはポリシーにしても、TPOが大事」ということが云いたかったのだと思ふ今日この頃。。。。 

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