Mahjan talk 雀話

    (110)大相公


 大相公(ターシャンコン)と発音する。相公(シャンコン)とは旦那さんと言う意味。そこで大相公は、大旦那さん(老相公(ラオシャンコン)とも云う)、小相公(シャオシャンコン)若旦那さんと云うことになる。もっとも日本での大旦那、若旦那同様、中国でも大相公、小相公はあまり使われなくなっているようだ。相公にはオカマという意味もある。

 いま中華人民共和国(中共)と中華民国(台湾)は政治的には対立している。しかし経済的にはかなり取引があるという半友好状態。しかし20年前は、まだ緊張状態だった。そのころ、σ(-_-)は王さんという親しい中国人家族がいた(いまでも親しい)。そこで遊びやら仕事やらで、よく台湾へ出かけていた。

 王さん外省人。つまり蒋介石総統と一緒に、大陸から台湾へわたって来た人。そこで多くの国民党の関係者とつきあいがあった。王さんは麻雀はしないが、奥さんの瞬さんは大好き。そこで瞬さんを交えたメンバーで、よく台湾16枚麻雀を打った。

 しかし中国麻雀は、完全なバクチ。そこで麻雀本来以外のおかしな動作は厳しくとがめられる。たとえば一見のグループ(初めての相手)とゲームしてるときなど、かゆいからと云って、ゲーム中にうっかり首筋を掻いたりすると、「首筋に牌を隠そうとしたのではないか」というので、即チョンボになる場合だってある。

 σ(-_-)も、こんな経験がある。落牌(らくハイ)したので何気なく身をかがめて拾おうとしたら、瞬さんが「待ってっ!

 (えっ)と思ったら、「私が見てからっ!
 要は勝手に拾うと、“そのスキにすり替えるのでは?”と疑われる。そこでかならず第三者が見ている状態で拾うようにしなければいけないということ。まぁ、これも場所、グループなど状況次第で、全部が全部 このように厳しいわけではないらしいけど。

 しかしこっちで使用していた雀卓には、全部 縁(へり)が無かった。そこで日本のように、縁を利用して手牌をそろえることが出来ない。そこで縁の代わりに牌尺というものを使用する。牌尺はプラスチック製の30センチ物差しみたいなもの。これを上手に使って、手牌をそろえたりする。

 時には自分がアガって手牌を開けたあと、つっと牌尺を伸ばして上家や下家の手牌を倒したりする(もちろん勝手に人の手を開けるのは失礼なので、目上にはやらない。σ(-_-)はヘボなので、しょっちゅうやられた(^-^;)。しかしこの牌尺も、慣れないうちは使い勝手が悪い。σ(-_-)なんかは、かえってジャマだった....

 余談はさておき。
 そのメンバー中に、さんという80才くらいの老人がいた小太りで、みるからに温厚そうな老人。80過ぎているので もう現役を引いているが、もとは台湾の政府関係の人で、或る意味 国会議員よりエライ人だという話しだった。

 ある時、そのさん σ(-_-) 瞬さん、Xさん(名前忘れた)という4人で麻雀した。すると或る局でさんが多牌していることが判明した。中国麻雀では、多牌少牌は即チョンボ(牌を何枚か隠し持って、すり替えるイカサマをしようとしていたと判定される)。もちろんさんも即チョンボとなった。そのとき瞬さんとXさんがさんを指さしながら「大相公、大相公」と云って大笑いしてた。

 さんはたしかに80過ぎの大相公(大旦那)であるが、実は中国麻雀で大相公多牌チョンボの意味がある(少牌チョンボ小相公)。そこで「大相公(大旦那)大相公(多牌チョンボ)した」というので、大笑いとなったわけ。

 多牌 少牌を大相公 小相公と呼ぶのは、単なる俗称。そんな俗称の由来など、ハッキリしたことは分からない。まぁしかし日本でも旦那芸といえば、ヘタの代名詞。きっと中国でも、同じような主旨で使われるようになったのかもしれない。

#ついでながら、旦那はもともと仏教用語。語源はサンスクリット語のdana(ダーナ=布施をする人=スポンサー。旦那または檀那と当て字される。檀家は「檀那の家」の意)

 大笑いされたさん、一緒になって「ホッホッホ」と笑っていた。σ(-_-)もそれくらいの中国語は分かるから、ニコニコしていた。すると笑い終わった瞬さん
「あのね、浅見さん。こんなおじいちゃんだけどね、大陸からは暗殺命令が出てるんですよ」
「えぇっ!(゚0゚)」
 #最近はいろいろ事情は変わってきたが、当時の台湾の人にとって、中国とは中華民国(台湾)のこと。そして中華人民共和国のことは「大陸」と呼んでいた。

 びっくりしていると、
「Sさんはね、大陸で国民党が政権をとっていたとき、秘密警察の責任者だったの」
「はぁ...」
「それで共産党幹部をかたっぱしから捕まえて刑務所送りにした。それで大陸が共産党政権になったあと、人民の敵に指定されたの」
「......」
「もう現役じゃないけど指定はそのまま。いまでも命をねらわれているから、台湾から一歩も外へ出られないのよ」
「ふ〜ん....」(と云うしかない....)

あらためて顔をみたが、どう見ても人の良さそうな大相公だった。


izumick 投稿日:2004/11/01(Mon)

↓のページに、多牌・少牌を「相公」と呼ぶ理由について書いています。
寧波方言から来ているという盛キ先生のお話なのですが、どの程度信頼できるものなのでしょうか。

http://chinese.g.hatena.ne.jp/izumick/20041031#p2


あさみ 投稿日:2004/11/01(Mon)

考相公という表現は初めて聞きましたが、「老相公」が“大旦那”ですから、「考相公」は“若旦那”という意味なのかな?。

で疑問の主旨は、
「多牌・少牌を相公と呼ぶのは、“考相公・老相公=合格できない(アガれない)=多牌・少牌”なのか、“多牌・少牌=ヘタクソ=旦那芸(相公)”なのか、ということですよね。

これは同じことを、違う表現で云ってるだけだと思います。

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