Laboratory 研究室 

     (37)ベストスパン


 プロ野球、バットマンのタイトルの1つに、年間の打率トップを争う首位打者がある。しかし年間打率といっても、出場ゲーム数はプレーヤーによって異なる。そこで1シーズン中の最低限の出場ゲーム数が規定されている。

 この最低限の出場ゲーム数規定打席という。すなわち首位打者は、規定打席以上バッターボックスに立ち、最高の打率を残したプレーヤーである。

日本プロ野球の場合、規定打席は下記の要領で計算する。
チームの試合数× 3.1 (端数切捨て)=規定打席数
そこで1シーズン中のゲームを130試合とすると、403打席が規定打席となる(130ゲーム× 3.1 (端数切捨て)=403)

規定打席に不足しても、不足した打席数を凡打として打数に加え、算出した打率が最高値なら首位打者の資格がある。

 また打率は安打数/打数で計算される。しかし四球、死球、犠打、犠飛、打撃、走塁妨害による出塁などは打数には数えない(打席数には数える)。したがって打席数=打数ではない。しかし面倒なので、そんな話しは無視する。(-_-;

 1シーズン、フル出場したとすれば、1ゲームで4打席くらい回ってくる。130ゲームなら520打席。そこで403打席はおおよそ全体の78%弱に相当する。

 いま○○ドッグズのA選手とXXキャッツのB選手がいる。
 シーズン終盤、それぞれ2ゲーム残したところで二人ともちょうど400打席、すなわち規定打席に達している。この時点でA選手は400打数140安打で打率0.35、B選手は400打数136安打で0.34だとする。
#話しを簡単にするため、規定打席数を400として計算する。

 B選手がA選手に追いつくためには連続7安打が必要である。しかし残り2ゲームで8打席は可能であっても、連続7安打は至難の数字。逆にA選手にしてみれば、401打席目に凡打すれば打率が下がる。そこでA選手の出場回避という状況が発生する。

 こういう事態が起きると、“男らしくない”とか“スポーツマンシップがどうのこうの”という論がよく起きる。しかしσ(-_-)は“そこに至るまで、いかに闘ってきたのか”と云うことを思うので、批判の気持ちは生じない。

 しかし一プロ野球ファンとしては、最後まで白熱のバットマンレースを見たい気持ちもある。またA選手のファンとしても、せっかく球場に足を運んだのに、A選手のプレーそのものが見られないのは心さびしい。

 実は、このような状況は麻雀でもある。
 むかし参加していた麻雀サークルで、いろいろな部門で年間成績を表彰していた。しかし1年を通じて誰もが同じゲーム数をこなすことはできない。そこで最低ゲーム数が設けられていた。すると終盤になるとプロ野球と同じようなことが起きた。

 熱心に例会に参加して好成績を挙げている会員が、ある時から顔をみせなくなる。1人のプレーヤーが複数の部門で良い成績を挙げている場合もある。しかし別々のプレーヤーが別の部門で良い成績を収めていると、それぞれが顔をださなくなる。

 年間タイトルが掛かって立場になってみれば、理解できる。しかし追いかける立場のプレーヤーとしては、相手の顔が見えない状況でプレーすることになる。サークルとしても、有力プレーヤーが終盤に顔をださなくなるのはちと寂しい。

 このような状況を少しでも軽減し、できるだけ最後まで白熱した闘いが行われる方法はないものか。そして苦節数十年?、着想したのがベストスパン方式ふう、やっと本題に入ったぞ。

 現在の規定打席は、プレーヤーが初めて打席に立ったところから計算が始まる。すなわち計算の始点が固定されている。しかしベストスパン方式は、始点が流動的。規定打席が400打席であれば、全520打席のうち、400打席以上で最高の打率を残した区間を評価する。

 これはAB両選手にとってメリットがある。
 まず400打数140安打で打率0.35のA選手は、残り2ゲーム(約8打席)に出場し、8連続凡打しようと打率は下がらない。規定打席はクリアーしているので400打数140安打=打率0.35は維持できる。

 逆に401、402打席目に安打すれば、「規定打席以上バッターボックスに立ち」であるから2安打を加算して打率をアップできる(142/402=0.3532)。すなわちA選手は、打率が上がることはあっても、下がることはない

 いっぽうB選手。仮に初ヒットが3打席めとすれば、最初の2打席をカットし、3打席目を計算の始点とすることができる。この場合、残り2ゲームの段階で、B選手は398打数136安打で、打率0.3417となる。するとB選手がA選手の0.35を上回るには7連続ではなく、6連続安打で良い(142/404=0.3514)。

 もしB選手の初ヒットが4打席目だとすれば、3打席カットできる。すると残り2ゲームの段階では397打席136安打=0.3425となるので、5連続安打でA選手の0.35を上回る。もちろん5連続ヒットも容易なではない。しかし7連続に較べたら、月とスッポン。「ひょっとしたら」と云う数字である。

 AB両選手をくらべた場合、B選手のメリット度の方が大きいと感じられるかも知れない。たしかにB選手の初ヒットが5打席めとか6打席めであれば、打席カットによる効果は大きくなる。しかしカットした分だけ規定打席が減少する。そこで残りゲーム数によってカット可能打席にも限界がある。

 また初打席から3連続安打などしていれば、カットしたくてもカットできない。ましてやA選手の打率は、上がることはあっても下がることはない。となればどの打席を計算始点とするかなんて事は後の問題。とりあえずは、ひたすら打ちまくるだけ。

 それを考えれば、打率が上がることはあっても下がることのないA選手のメリットも、B選手に遜色はない。それよりも何よりも、最後まで白熱のバットマンレースが見られるファンにとって超ワンダフル。自画自賛(笑)

 なんだか野球祭都のような話しになったが、麻雀の年間タイトルでも同じこと。
 ゲーム数の異なる状況での年間成績を規定打席数のベストスパンで評価すれば、終盤になって有力プレーヤーの対局回避という状況が減少し、白熱のタイトル争いが行われる。

 もちろんこんな計算を手作業で行うのは困難である。しかしいまやPC時代。計算ソフトに数字さえ入れれば簡単に算出できる。

 実はこのベストスパン式、すでに雀検で採用している。

http://www.asamiryo.jp/spe1.html

成績:300ゲーム以上(300ゲームピッタリでも可)で、以下の1つでも該当すれば可。
勝率30%以上 or 順位率2.25以上 or プラス率60%以上。

注1:たとえば500ゲーム行い、その中で勝率30%以上、順位率2.25以上、あるいはプラス率60%以上になる300ゲーム部分があれば、その部分を対象ゲームとして良い。

注2:通算300ゲームでは勝率29.9%でも、つぎの1ゲームを加えて301ゲームなら30%になるという場合、301ゲームで申請しても良いということ。


 雀検は純粋に雀力だけを検定するものであるが、そのシステムを年間表彰とかタイトル戦に応用したもの。云うならベストスパン方式はゲーム全体の高点法システムというところ。

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