Laboratory 研究室 

     (34)レーティング


 とても“研究”というレベルの話ではないが....

 麻雀大会となれば、もっとも点数を稼いだ人が優勝というシステムが一般的。それがジャンブルとなれば、いつもニコニコ現○払いが常識である。中国だって事情は同じ。麻将といえば、中国ではイコール賭け事。そこでいつもニコニコ現○払い。終わったときに幾らの現金が手に残っているかだけが問題となる。しかし日本には麻雀伝来当初から、競技麻雀の伝統がある。そこでその日だけでなく通算成績が問題となる。

 その継続的な成績を争う競技麻雀となれば、勝率・順位率・プラス率などを評価する。もちろんこの他にも、順位点方式やら得点ポイント化方式などいろいろあるが、本題ではないので、さて措く。

 そんな麻雀界へ10年くらい前に登場したのがレーティングなる評価法。聞くところによれば、これはもともとチェスで用いられていた評価法とか。それがバックギャモンや将棋にも応用され、麻雀にも応用されてきたらしい。

 レーティングと云っても、横文字とか数字には弱いので、どんなものかよく分からない。要は、あらかじめ定められた順位点(スタート値)を持ってゲームをスタートする。あとはゲーム終了時の順位とかプラスマイナスによって、獲得できるR値点が大きくなったり小さくなったりする。とうぜん成績が良ければ獲得できるR値点は大きくなる。

 しかし固定的な順位点方式の場合、ゲームスタート時の互いの持ち順位点などゲームの結果に関係がない。たとえばトップが10点、2位が5点という決めであれば、トップを取ったときに10点が加算されるだけである。

 しかしレーティングでは、自分より大きなR値を有する相手との対局の場合と、自分より小さなR値の相手との対局で勝った場合では、同じ勝ちでも獲得R値に差が出る(とうぜん前者の方が獲得R値は大きい)。そこでレーティングをあえて日本語に直せば、「順位点案分方式」と云うことにでもなるのかも知れない。

 そしていま、麻雀の新しい潮流として普及しつつあるネット麻雀の成績評価は、このレーティングがメインに用いられている。こういう新しい試みは大いに結構なことであるが、いろいろ問題もあるようだ。

 もともとレーティングは、本来二人対戦型ゲームに対する評価法。そこで4人対戦型ゲームにどれほど適応できるのか、という疑問がある。たとえばいまネット麻雀を主催しているwebサイトはいくつかあるが、採用しているレーティングの数式やスタート数値(スタート順位点)がかなり異なる。これは単純に云って、式作成者の認識による。

 たとえばスタート値。σ(-_-)の知ってる範囲内でも、1000、1500、2000の3種類がある。スタート値が違う上、数式が異なっていれば、導き出される数値が異なるのは当たり前。これでは「自分はR1500」と云われても、聞いてる方は、いい成績なのかどうかワケワカメ。これではそのR値は、そのグループ内だけでしか通用しない評価値となる。

 もちろん麻雀レーティングもまだ揺籃期。数式やスタート値の統一化は今後の課題。しかし或るレーティング式を作ったプログラマーにしてみれば、たぶん自分の作成した数式がベストと思っている。

 そこでゲームの結果によって自分の式を改訂することはあっても、それぞれのプログラマー同士が話し合い、数値や式を統一するなんて事は考えにくい。そこで自然に統一されて行くとすれば、“VHS vs B-max 普及度でVHSの勝ち”というように、式の優劣より普及度の大小によるのかも知れない。

 また仮に将来、レーティング式や数値が統一されたとしても、実戦でどこまで活用できるかという問題もある。

 ネット対戦となれば、どんなに複雑なレーティング式でも、すべてコンピュータが処理してくれる。プレーヤーはひたすらゲームするだけで、何もしなくても良い。しかし実戦となるとそうは行かない。

 勝率といえば、トップ数を全ゲーム数で除するだけでいい。プラス率にしても、プラスで終了したゲームを全ゲーム数で除するだけでいい。どんなにゲーム数をこなしたあとでも、電卓1台で簡単に計算できる。

 しかしレーティングとなれば、プレーヤーが1ゲームごとに変化する自分や対局者のR値を、その都度算出しなければならない。もちろん手作業で算出することは不可能なのでノーパソを持ち込むとしても、1ゲームごとにR値の変化を算出するというのも超面倒な話。第一、ゲーム以前にコンピュータのノウハウが無いと麻雀できないような話にもなる。

 こういう点から考えると、コンピュータが情報を自動処理することが前提条件であるレーティングという評価法は、たとえ数式が統一されたりしても、あくまでネット対戦専用の評価法ということになるのかも知れない。

 もちろんネット対戦専用であっても、それなりに数式が統一されれば、麻雀評価法の1ジャンルとして、その位置を占めることは間違いない。じっさいもっとも規模の大きいネット対戦である東風荘では、これまでに全体で数百万単位のゲーム数をこなし、貴重なデータを提供している。

 とまぁ、なんだか分かったような分からないような話になったが、このレーティングには、ちと思いで話がある。

 昔、まだ麻雀におけるレーティングというものがこれほど認識されていない頃、これを麻雀の成績評価法として採用することを強く奨めていた人が居た。「勝率とか順位率、プラス率などの評価法ではいけないのか」と問うと、「そういう評価法に比べて、レーティングは、もっとも完璧な評価法。したがって麻雀に導入すれば、その数値はプレーヤーの実力を明確に現わす」いう主旨の返事であった。

 まだレーティングなるものがよく分からない頃なので(今だってよく分からんが....)、あんまり突っ込んだ話にならず終わってしまったが、この話には続きがある。

 彼氏いわく。「麻雀は、ツキ主体で実力差なんて無いゲーム。そこで仮にスタートR値1500でスタートした場合、ツキによって途中でR値が変動しても、長いことやっていれば全員R値1500くらいに収まってくる

 長いことと云うのがどれくらいのゲーム数を指すのか曖昧だったが、まぁ最低でも1000ゲーム以上の雰囲気だった。しかしσ(-_-)は、麻雀だってそれなりに実力差があるゲームだと思ってる。そこで長いことと云うのが仮りに2000ゲーム、5000ゲームであっても、全員はR値1500くらいに収まってくるとは思えない。そこで「そんな事にはならないだろう。レーティングだろうが何だろうが、強い人は強いという結果が出ると思う」と云ったが、水掛け論に終わった。

 東風荘はレーティング評価法を用いて長いことゲームされていると思うが、それであの水掛け論に対する結果は出ているようだ。しかし彼氏にそのデータを見せても、「数式が完璧でないので誤差が出ているだけ」とか、「“長いこと”と云うのは最低1人10万荘」なんて反論してくるだけかも知れない....

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