KM Q&A 難問奇問 

         (16)アガリ宣言語
(月刊近代麻雀・昭和61('87)年12月号)


この前、ある麻雀大会に出ました。大会の後、エキシビションがあったので見ていました。するとゲストのプロだけが、ツモってもロン、出てもロンと云っていました。
しかしツモったときは3人から貰うわけですから、やはりツモと発声して、ツモアガリであることをはっきり示すべきではないでしょうか。(埼玉・吉田○彦)


 結論から云えば、筆者も出アガリは“ロン”、ツモアガリは“ツモ”と宣言した方がベターだと思います。実際に今 日本で行われている麻雀のほとんどは、そのように行われています。にもかかわらず、どうしてそのゲストが出アガリでもツモアガリでも“ロン”と発声していたかですが。

 中国麻雀では、アガリはすべて和了(フーラ=胡了とも表記すると云います。しかし日本人がフーラ、またはホーラと発音するとなんだか間延びした感じになります(“フーラ”は実際には“フィラ”に近い発音で間延びなどしていません。しかし日本人には発音が難しい...)*1。そこで日本ではツモアガリの場合は自摸和(ツモフー(略して自摸ツモ)と発声されるようになりました。

 ツモアガリはそれでいいとして、そうなると出アガリ用の発声が必要になります。そこで当時の先駆者であった林茂光(りんもこう)が、中国麻雀に出アガリ専門の表現はないかと調べたところ、“ロン”という表現があることを知りました。その時点では字が分からなかったので仮に「栄(ロン)」という文字を当てて紹介しところ、その文字と表現が普及しました。
 後(のち)に“ロン”は「揃える」という意味の「」であることが判明しました。しかしそのときにはすでに栄(ロン)が完全に普及しており、いまさら訂正できなかったといいます(林茂光「麻雀競技法とその秘訣」S4.12.12四六書院)。そのような事情で日本ではツモアガリは“ツモ”、出アガリは“ロン”という宣言語声が定着し、現在に至っているわけです。

 このように“ロン”は出アガリ宣言語として登場したのですが、やがて当時の中心的団体である日本麻雀連盟ではツモアガリでも“ロン”を用いるようになりました。理由ははっきり分かりませんが、「アガリ宣言語は1つあればよい」ということと、「“ロンの方がフーラより語呂がいい」ということだと思われます。そして現在でも日本麻雀連盟では、ツモアガリも出アガリも“ロン”と宣言しています*2。そこで吉田さんが見たという大会ゲストは、おそらく日本麻雀連盟系の出身の人だったのだと思います。

 ではアガリ宣言語は日雀式にツモアガリも出アガリも“ロン”だけにした方がよいかと云えば そうは思いません。中国麻雀ではツモアガリでも出アガリでもどのもち3人払いなので*3、アガリ宣言語が一つでも特に問題はありません。しかし日本麻雀ではツモアガリでも出アガリでは精算法が異なります。精算法が異なる以上、アガリ宣言語も2種類あった方がはっきりして良いと思うからです。
*1 現在の中麻公式麻雀では、すべて“和(フー)
*2 このQ&Aを書いた当時の話。いまはどうなっているか知りません。
*3 中麻公式麻雀でも出アガリ3人払い。ただしアガリ点を負担するのは放銃者だけ。他家は基本点だけの支払い(もともとはアガリ点も負担した)
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