(09)プラスの1局 (月刊近代麻雀・昭和61年4月号No.1)
|
ゲームが終了してから気がついたのですがオーラスのあと、もう1局やってしまいました。洗牌(シーパイ)のときチーチャマークが卓の下に落ち、それを卓上に置き直したとき間違えたのが原因らしいのです。おまけに最後のアガリで逆転トップとなった人が出ていたのでトラブルとなりました。
そして「4人とも同じ条件でゲームをして決着したのだからプラス1局は有効」という意見と、「プラス1局を無効にすれば正規の形になるのだからそうすべきだ」という意見に分れました。こういう場合、どのようにしたらいいのでしょうか。〔東京・酒井○有)
|
麻雀には“ゲーム中、開門場所の間違いに気が付いた”とか“ゲーム中、ドラのめくり間違いに気が付いた”など、元に戻しようがないトラブルが発生します。このようなトラブルは、最初からやり直すか、そのまま進行してしまうかのどちらかしかありません。
しかしそのトラブルの解決法が、“開門場所の間違いの場合はこう....”、“ドラのめくり間違いの場合はこう....”というように行き当たりばったりでは、ルールが煩雑になるだけでなく、一歩間違えば矛盾の山となりかねません。
そこで競技麻雀では、このように現状に復すことが困難なトラブルを包括的に解決する方法として、「一事不再理(いちじふさいり)」という原則を適用することが主流となっています。これは元々は法律用語で、「一旦確定した事項は、再度 審議しない」という主旨の原則です。
※「たとえ間違いであったことでも、成立してしまった事は有効としてゲームを進行する」というトラブルの包括的解決法は、日本麻雀連盟の故・手塚晴夫理事長を初め多くの先人が示唆しています。しかし「一事不再埋」という明解な表現によってこの原則を提唱したのは101連盟の創立者である古川凱章氏です。
もちろん親睦麻雀であれば、どんなケースでも話し合いで解決できれば問題ありません。そこでこのケースでも、話し合いで解決できるなら「プラス1局はナシとする」でも、「プラス1局を有効とする」でもいいのですが、どうしても話し合いで解決できないとなれば、前述した一事不再理法に準拠して考ることになるわけです。
以前にも述べたことがありますが、麻雀はプレーヤーそのものが審判でもあるゲームです。そこで一事不再理法に準拠して考えれば、たとえ全員の錯覚に基づくにせよ、そのプラス1局は審判全員によって有効として行われ決着したのですから有効に成立ということになると思います。そしてこのプラス1局が有効に成立となる以上、この局で大きなアガリが飛び出し、トップがひっくり返っったようなことがあつても、とうぜんそのアガリも有効となります。
ではどの時点で気が付けばゲームの中止=無効をアッピールできるのかということになりますが、これは「ゲームが決着するまで(アガリが飛び出すまで。あるいは流局が確定するまで)」とするのが順当と思います。
固く考えれば、アガリが発生しても精算が終わらない段階なら無効をアッピールできてもいいような感じです。しかしそうなると、たとえばAの逆転トップというアガリがでたあと、下位に転落したBなどから「いま気が付いたが、これはプラス1局だ。精算も終わってないから今のアガリは無効」というアッピールがあり得るなど、恣意的な要素が働きかねないからです。
聞くところによれば野球の珍記録の中に、審判の勘違いで3ストライクや3アウトのあと、アウトやチェンジが宣告されなかったのでさらに攻撃が行われ、結局
「4ストライクでバツターアウト」とか、「4アウトでチェンジ」なんてことになったケースがあるそうです。
これは運良くアウトやチェンジになったたので珍記録で済んでいるようですが、もし3ストライクや3アウトのあとにホームランでも飛び出していたら、超珍記録になっていたと思います。#これはもちろん有効となるとか(念のため、今日 某スポーツ新聞社に確認 )。
これはもちろん3ストライクや3アウトのあと、さらに攻撃を続けることを審判が認め、両チーム(関係者全員)とも何の抗議もしなかったので、その攻撃は有効となるわけですす。
そこでホームランがでたあと、守備側が「3ストライクまたは3アウトがあった時点で攻撃は終わっているはず。したがって今のホームランは無効」などといっても後の祭りとなります。つまりたとえ本来は正しい主張であっても、時期を失した主張・抗議は却下されてしまうわけです。
そこで麻雀でもプラス1局無効のアッピールは、「その局のアガリが飛び出すまで(あるいは流局が確定するまで)」とするのが順当と思われるのです。またもちろんプラス1局中に間違いに気がつけば、その時点で即終了となります。
#たしか10年ほど前の高校野球。3アウトのあとに審判が何も言わなかったので、攻撃側の監督が次のバッターに「おまえ、行ってこい」と指示。そのバッターに対してピッチャーが1球か2球
投げた後、守備側の監督が気が付いて抗議。審判も(なにかヘンだな)と思っていたので、即チェンジを宣告。あとで攻撃側の監督は厳重注意を受けた、ということがあった記憶。
|