(07)錯和の成立 (月刊近代麻雀・昭和61年2月号)
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オーラス、で三倍満というメンチンをテンパイしたとき、断トツのAが誤ロンしました。チョンボかと思ったら、Aは「手牌を崩していないからチョンボではない。そのまま続行だ」と云いました。
しかしAがチョンボ料を払うと逆転トップになるBは、「手牌を倒していなくても、ロンと云ったんだからチョンボだ」と云ったのでトラブルになりました。いったいどちらが本当なのでしょうか。
また私はたとえAがチョンボになってもトップには関係ありませんが、倍満がわずか2千点では納得ゆきません。(東京・染谷○徳)
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質問はチョンボの成立時点とチョンボ料の二つとなっています。そこでまずチョンボの成立時点について。
チョンボは錯和と表記し、意味は“間違った(錯)アガリ(和)”です。原音に近い発音では“ツォホー”というところですが、日本では“チョンボ”と訛(なま)っています。そのチョンボの成立時点は、現在 日本にある多くの麻雀団体でも「アガリを表明した時点」、「アガリを表明したのち、手牌を倒した時点」という二つに別れています。とうぜん前者ルールでは手牌を倒していなくてもチョンボ成立=罰点払い、後者ルールであれば悪くてもアガリ放棄くらいで罰点は生じません。単純に云えば、前者は厳しく、後者は緩やかです。
どちらにしても事前の打ち合わせがあれば問題は生じませんが、それが無かったのでこういうトラブルになるわけです。結論から云えば、両者がナットクできるような理屈はありません。敢えて云うとすれば、打ち合わせにない事がおきた場合、緩やかなルールを適用する方が順当ではないかと云うことぐらいです。“発声=チョンボ”を主張しているBさんにしても、自分がその立場になれば後者ルールを希望すると思います。しかしそれでも両者が納得せず、二者択一をせざるを得ないのであればジャンケンでもして決着をつけるより仕方がありません。
では今回はともかく、今後はどちらの方法をというのであれば、後者ルールを採用するのが順当と思います。誤ロンがあっても手牌を倒していなければ、ゲームの進行になんの支障もありません。となればペナルティとしてアガリ放棄を課すくらいで、ゲームは続行というのが望ましいと思うからです。そうなればトップをねらっているBさんにしても自力トップの目は残りますし、染谷さんにしても倍満の可能性が残るわけです。
ではチョンボは“手牌を倒した時点で成立”とすれば問題はないのかと云えば、そうでもありません。それは一つの解決策に過ぎません。前述したようにゲームはできる限り正常な状態で終了するのが望ましい。となれば“手牌を倒した時点”ではなく、“ゲーム続行不可能な時点”でチョンボ成立とした方が望ましい。
そこでたとえ手を公開してしまっても手牌を立て直し、チョンボ者はアガリ放棄でてゲーム続行というくらいが良いと思います。問題はチョンボ者が手牌を崩して続行不可能な状態にしてしまった場合ですが、その場合はその局をやり直し。チョンボ者はやり直し局を最初からアガリ放棄でゲーム進行というところでしょうか。
チョンボの成立時点に関しては以上のようですが、「二千点では安過ぎる」というチョンボ料についてです。たしかに二千点では安過ぎるようですが、これが現在のもっともメジャーなルールですから仕方ないと思います。今回
たしかに染谷さんは倍満の手だったわけですが、チョンボが発生したときノーテンであるケースもあるわけですから。
ただ現在メジャーなのはチョンボ者の満貫払いですが、古典麻雀(二十二麻雀)でのチョンボ料は半満貫でした。「何だ、これでは今より安い」と思われるかも知れませんが、そうではありません。
古典麻雀の持ち点は二千点。そして満貫点(役満点)は子供が二千点、親が三千点でした。この半分がチョンボ料ですから、子が千点、親が千五百点となります。現代麻雀の持ち点は三万点で、役満点も子供で三万二千点、親で四万八千点。そこで昔の半満貫を現在の点数に直せば、子一万五千点、親二万四千点くらいとなります。
ここから考えると現在一般的なチョンボ料である満宵払いは、ずいぶん安くなっているのことはたしかです。そこであるグループでは、倍満払いとしたルールを採用しています。これならたしかにほぽ古典麻雀に近い点数となります。とはいえ罰点を払うのは痛いですから、チョンボ料の増額はなかなか同意を得られないかもしれませんが。
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