(02)摸打の1巡 (月刊近代麻雀・昭和60年9月号)
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払どもは「同巡当たりなし」でや?ていますが、ボンとカンの時がよくわかりません。同巡について細かく書かれた本も見つかちないので、その定義を教えてください。(広島・徳田
○浩)
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まず結論から述べますと、現代麻雀における同巡(漢打の1巡)とは、「自己の取牌から次回の自己の取牌までの間」を言います。そしてこの間の他家のボンやカン(以下省略)は、自分には何の関係もありません.
そこで自分の次のツモが来るまでに他家が数回のボンをくり返しても、自分にとっては同巡内です。しかし何度かポンをした他家は、そのたぴに次巡に入ります。すなわち摸打の一巡は、4人に一様に来るものではなく、各プレーヤーごとに別々に来るのです。これが同巡の最大のポイントです。
もともと中国麻雀には、振りテンの概念がありません。そこで捨て牌は河(ホー)の中央付近に雑然と放置されます。もちろん捨て牌をチーポンしたいプレーヤーがいるかも知れません。そこで捨てる前に牌種を呼称しながらチラッと見せたりします。その牌に何も声が掛からなければそのまま捨てられます。以後、その牌は浮屍辟(フースーパイ=水死牌)となり、各プレーヤーの手牌とは何の関係もなくなります。
たとえばいま東家が勘違いなどでアガリ牌のを捨てたとします。打牌が完了した時点で東家の手牌とは無関係となります。そこで続いて南家がを切れば、それでロンできることになります。
ところが麻雀が日本に伝来してから、捨て牌を雑然と捨てるのではなく、各自の前方に整列させるようになりました。とうぜん誰が何を持てたか一目瞭然となります。この状態で切りのロンがあると、放銃した方はどうも釈然としません。そこで初めて振りテンルールが登場し、その関連で“同巡”という概念が発生しました。
このように振りテンルールと同巡は密接な関係にあるので、振りテンルールの歴史をたどれば、同巡の問題もより深く理解できることになります。単純に云って中国麻将と同様に振りテンルールをナシにすれば、同巡の問題も消滅します。しかしその問題は次の機会にゆずることとし、今回は現在、日本で一番普及している振りテンルールと同巡の問題に的を放って話を進めます。
現在、日本でもっとも普及している振りテンルールは、「アガリ型となる牌を自分が捨てている場合、以後ツモアガリのみ」という方式で、“振りテン全責任法”と呼ばれています。
そしてこの全責任法は、アガリ型となる牌を自分が捨てていない場合にも適用されることがあります。それが T さんの質問のポイントである、「アガリ型となる最初の牌でロンを表明しなかった場合、その同巡内に限り、その後のアガリ型となる牌でロンできない」というルールです。これは「同巡内の選択アガリ禁止」と呼ばれます。
具体的に言えば、東家がいまを打ち出して下図のテンパイをした直後、南家がを打ったが見送ったとします。
そのを北家がポンして打。それを南家がポン。これで東家はツモ番を1回飛ばされたことになります。しかし東家はを捨てたあと一度も取牌していないので、まだでのアガリを見送った巡目内(同巡内)です。そこで南家がをポンして打としても、そのでロンできません。そこでこのにロンをかけると、同巡内の選択アガリ禁止に該当してチョンボとなります。
この同巡内の最初の牌(この場合は)は、その牌でアガリ型になるかどうかということが問題であって、その牌で上がると一翻縛りをクリヤーできるかどうかという事は関係ありません。そこでこの揚合、東家は南家のでロンできませんが振りテンをしたわけではありません。そこで一度摸打を済ませた後、誰かがを打ち出せばロンできます。
ここで注意しなくてはならないのは、牌譜に記載されている“巡目”の問題です。牌譜にもとずいて観戦記などに述べられている“8巡目”とか“11巡目”というときの“巡目”は便宜上の巡目であって、ルール的な意味の巡目とは必ずしも同一ではないという事です。
ゲームの経過は牌譜に記録されます。ポンして打牌することは通常の摸打をしたことと同じですから、ポンしたプレーヤーの摸打欄にはそれが記入されます。しかしポンでツモ番を飛ばされたプレーヤーの記入欄は空白のままです。しかしツモ番を飛ばされたプレーヤーが次回の摸打を行ったとき、その空白欄を使用すると、ポンしたプレーヤーの記入欄と巡目のズレが生じます。
これではあとでゲームを検証するとき、前後関係がチグハグして状況を把握しにくくなります。そこで牌譜では、ポンでプレーヤーのツモ番が飛ばされた場合、飛ばされた欄は空白のままにしておき、ポンしたプレーヤーと同じ巡目の記入欄から使用します。
これはあくまでゲームの進行をあとから把握しやすくするための処置であって、ルール上の問題ではありません。そこで飛ばされたプレーヤーが、記録上はポンしたプレーヤーと同じように巡目が経過したようになっていても、じっさいはまだ同巡内なのです。
ところが一部にはこの記録上の表記を理由に、「牌譜では、ポンで飛ばされたら4人とも次巡に入るように記録されている。そのように記録されている以上、ゲーム上の1巡もそのように解釈すべきでは」という論があります。
この発想でゆけば、さきほどの例の東家は、南家のでロンできることになります。さらに南家の打牌がではなく、前と同じであってもロンできる事になります。
しかしボンでツモ番が飛ばされれば、飛ばされたプレーヤーの手牌は変化しようがありません。そしてもともと同巡内の選択アガリ禁止は、「手牌の変化がありえない状態では、最初のアガリ相当牌以外ではロンできない」というルールです。
そのようなルールを採用しながら、最初のアガリ牌以外でのロンを認めるというのは論理に矛盾を生じます。やはり「ポンでツモ番が飛ばされても、該当プレーヤーにとっては同巡内」というのが順当な解釈と云えましょう。
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