Hands 和了役

    (6)嶺上開花


 いうまでもなく、開槓があったとき王牌より補充される王牌の末尾牌によるアガリ。それはいいとして、この補充牌について不思議なことがある。

  全員の配牌が終了したあと、東家の第1ツモ壁牌の上段牌南家の第1ツモはその下段牌。以下、この調子で進んで行くと、海底牌は壁牌末尾幢(←この字は使いたくないが、適切な字がフォントで見つからない)の下段牌となる。

 ゲーム自体はそこで終わりである。しかしそこまで進んできた調子で王牌の方へ上下、上下と進んでゆくと、王牌の最終牌は、王牌末尾幢の下段牌ということになる。

 槓があった場合、王牌のうしろの方のから順に牌が取られてゆく。そこで最初の槓で嶺上牌として取得される牌は、王牌末尾幢の下段牌となる。そして昔の麻雀では、ちゃんとその最終牌(最終幢の下段牌)を最初の槓の補充牌として取得していた。

 しかし末尾牌の上段には、2番目に取得されるべき牌がのっかっている。これでは壱番目の嶺上牌をツモるのに大いに邪魔になる。そこで配牌が終了した時点で、その2番目の嶺上牌を王牌のさらに上に乗せ変えていた。

 これで第一嶺上牌をツモるのに支障はない。しかし王牌の上に載せられた第2嶺上牌はよく目に付くが、第一嶺上牌は下に残ったままなので分かりにくい。そこで第一嶺上牌も、王牌の上に載せ変えていた。

(末尾牌)
第1補充牌 第2補充牌
     ↓  ↓
     □  □         壁牌
     □□□□□□   □□□□□□□□□□
     □□□□□□   □□□□□□□□□□
        王牌      ↑
                海底牌

 第一嶺上牌を王牌の上にさらに置くわけであるから、山の頂(嶺)のような感じに見える。そこで嶺上牌という名前がついた。日本麻雀も最初はこの方法で行っていたが、いちいち2枚もの牌を置き直すのは面倒くさい。そこでやがて第2嶺上牌のみを上に置き直すようになった。

       第2嶺上牌
          ↓
          □              壁牌
 (末尾牌)   □□□□□□   □□□□□□□□□□
第1嶺上牌→ □□□□□□□   □□□□□□□□□□
            王牌        ↑
                      海底牌

 見ると、第1嶺上牌は王牌に生えたしっぽのよう。そこで第1嶺上牌)は(ウェイ)とも呼ばれた。これで手間は少しへったが、槓が2回あると、また第4嶺上牌を王牌の上に乗せ変える必要が生じる。これも面倒くさい。というので、しばらくすると嶺上牌の乗せ変えをしなくなった。

 こうなると、一番先に手が届くのはもちろん第2嶺上牌。そこでいつの間にか、第2嶺上牌を第1嶺上牌とするようになってしまった。とうぜん本来の第4嶺上牌は第3嶺上牌となり、本来の第3嶺上牌が現在の第4嶺上牌となった。今となっては、そんな事があったのか、というレベルの話だけんど。。。。

 こういう変化が起きたのは第2次大戦前の話。そして現在もこのように行われている。しかしこの第1嶺上牌、なにかの拍子によくポロリと落ちる。ただ落ちるだけならまだしも、ご丁寧に上向きになって落ちる。1ゲームに2回、3回の槓があることは珍しいが、1回ぐらいならしょっちゅう起きる。

 そのときの嶺上牌が事前にポロリとなって、何牌か分かっていては、ゲームに支障をきたす。そこで配牌終了直後に、第1嶺上牌を下段におろすようになっている。これはむかしの(ウェイ)を彷彿とさせて面白い。

 さてこの嶺上開花、現在の一般リーチ麻雀では一翻であるが、清麻雀成立当初(1850年代)には一翻役ではなく、加符役(加四符)であった(榛原茂樹「想定寧波規則」)。これを嶺上符と呼ぶ。そして嶺上開花したときは四符を取得する代わりに自摸符はつかなかった。

 嶺上符はやがて加十符となり(「麻雀牌譜」1880年頃出版か?)、次に一翻となった。一翻となっても相変わらず自摸符は加算されなかったが、1930年頃、「嶺上開花であっても自摸符を認めるべきだ」との声が高くなり、徐々に認められるようになった。現在ではほとんどのルールで認められているが、まだ一部には認めないルールも存在するようだ。

 嶺上開花は、暗槓/明槓に関係なく自摸アガリであるが、一般麻雀では大明槓による嶺上開花を1人払いとするルールもある。どんなルールでも採用者の自由であるが、このルールでは、たとえば 待ちの振り聴というとき、大明槓によってでも嶺上開花したとき、ちと困る。

 そこでこれは、「振り聴をアガらせたのだから、普通の放銃より悪質」というの、やはり1人払いとするルールと、「振り聴に放銃するような結果になるのはおかしい。そこでこのケースではアガリを認めないことにする」なんてルールも聞いたことがある。う〜ん、なんかこれも変な話。。。。

 また振り聴であるか否かに関係なく、大明槓の後、連続して開槓し、嶺上開花した時(連槓開花という)、「最初の槓のみが1人払いの対象」とか、「連続だから2度目の槓の嶺上開花も対象」などさまざまなローカルルールがある。

別にどんなるーるでもいいけれど、あまりこだわりすぎると、かえってトラブルのもと。やはり「嶺上開花はすべてツモアガリ」としておくのが、もっともシンプルでトラブルもおきないルールと思ふ。

 嶺上開花には槓上花・槓頂花・吹打開花・槓上和・崗山なんて異名もあるが、日本には嶺上開放なんて当て字もある。いや、これは傑作だ。(笑)

 英語では Flower on the mountain top (山頂に咲いた牌)なんてのが綺麗な訳。あっさりしたところでは、Draw of the loose tile (遊離した牌で和了)てなところ。

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