(56)西湖十景
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西湖(せいこ)は浙江省 杭州市(上海の西南の方角)にある湖。宋(960〜1279)の時代の記録に、「上に天堂(極楽)あり、下に蘇杭あり(蘇州・杭州)」とある程の景勝地。※詳しくはココを。ホームページを見るだけで美しい!
http://www.alachugoku.com/cityinf/hangzhou/SHtop.htm
蘇軾(そしょく)は号を東坡(とうは)といい、北宋有数の大詩人として有名。どれくらい有名かと言えば、代表作である「春夜」という七言絶句。題は知らなくても、出だしの「春宵一刻値千金(しゅんしょう(“しゅんや”とも)いっこくあたいせんきん)は誰でも知ってると思う。
1089年、その蘇軾が西湖の存在する杭州の知事をしていた。そして西湖を浚泄させた時、排出した泥で湖中に島を3つ作った。その島の一つが現在の中国の1元紙幣の図柄に使われている三潭印月(さんたんいんげつ)。
この三潭印月を始め、特に景勝が優れている周辺の十カ所を西湖十景(せいこじゅっけい)と呼ぶ。そこでと筒子(湖)で西湖、筒子の合計数で十景を表してアガリ役の名称としたもの。とはいえ複数の人が考案しているので、複数のパターンがある。
(一) の槓仔(カンこ)と筒子で西湖、同位牌対子全セットで十景を表す。「麻将学(盛[土奇])」※同位牌とは、2枚の数の和が10になる組み合わせ。
(二) の刻子(コーツ)と筒子の2刻子の組み合わせ。ただし筒子の2刻子は、同位牌刻子であること(たとえばと、あるいはと=十景)。[中国麻将打法与技巧]
(三) と同位牌対子の3枚組。[中国麻将打法与技巧]
どの組み合わせも、のほかは同位牌セットというのがポイントであるが、の槓仔(カンこ)に筒子の一通もどきをそろえなければならない(一)の難度が一番高いだろう。難度が高いというより、まず出来ないんじゃないか。
なお(三)のはおかしな組み合わせに思えるが、これは風喜(フォンシー)という組み合わせの1種。
麻雀の話はこれで終わりだが、実は冒頭にあげた蘇東坡の代表作、「春夜」については強烈な思い出がある。「春夜」の結句は鞦韆院落夜沈沈(しゅうせんいんらく、よるしんしん(“ちんちん”とも)=ブランコがある中庭で、夜は静かにふけていく)。
中国文学が好きで、子供の頃から結構漢詩を読んでいた。この絶句を見たとき(へぇ、中国にはこんな時代にブランコがあったんだ)と思い、印象に残っていた。
それから何年か経った中学1年だか2年の漢詩の授業のとき、この詩が出てきた。(おお、あれか)と思っていたら、先生が
「誰かこの詩の意味が分かるヤツ、いるか」
喜んで「はいっ」と手を挙げたら、
「よし、あさみ。言ってみろ」
そこで得意満面で「春の夜は....」とやり始めた。みんな感心して?ふんふんと聞いていたようだが、最後に「ブランコがある中庭で....」と言ったとたん、教室中が大爆笑。
わけがわからずキョトンとしていると、先生まで大笑いしながら
「あさみっ」
「はいっ」
「どこにブランコなんて書いてあるっ」
まさかそんなところで突っ込まれるとは思ってもいなかったので、しどろもどろ。
「いえ、あの、その....(たしか鞦韆はブランコって意味だった筈.....)」
「どこにも書いてないだろうっ」
「はぁ.....(先生が言うんだから、σ(-_-)の記憶違いか....)」
「よし、わかった。もう座れっ」
「はい....」
大恥かいて座ったが、頭の中は真っ白。このあと先生がなんと解説したのか、と言うより授業全体がどう進行したか何にも覚えていない。(-_-)
家へ帰ってさっそくむかし読んだ本を探した。しかし焦っているせいか、その本は見つからなかった。後年、別の本で確認したが、やっぱりσ(-_-)の記憶は正しかった。半世紀近く過ぎた今でも、そのときの先生が「鞦韆院落」をどう解釈していたのか不思議に思っている。(?-?)
春夜
春宵一刻値千金(しゅんしょういっこく、あたいせんきん)
花有清香月有影(はなせいこうあり、つきにかげあり)
歌管楼台声細細(かかんのろうだい、こえさいさい)
鞦韆院落夜沈沈(しゅうせんいんらく、よるちんちん)
※蘇軾(1036年〜1101年)、字は子瞻、北宋一の大詩人。21才で科挙の試験に合格。兵部尚書(国防大臣)、礼部尚書(文部大臣)を歴任するが政変により失脚。海南島へ左遷されたが名誉回復し、帰京途中、66才で没っした。
詳しくはココを。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%98%87%E8%BB%BE
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jetrug 投稿日:2005/03/04(Fri)
僕も鞦韆はブランコ、院落は庭だと解釈してました。現代中国語からは他の意味には取れないように思うので、僕もあさみさんの先生の解釈が非常に気になってしまいました。
今度、中国人に聞いてみます。
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あさみ 投稿日:2005/03/05(Sat)
こんにちわ、JETRUGさん
いま振り返れば同級生が爆笑したのは、漢詩の話なのにいきなりブランコという現代用語がでてきたせいだと。それはいいとしても、本当に先生はどのように解釈していたんでしょうね。
ただσ(-_-)が「どこにブランコって書いてあるっ」と言われて(記憶違いだったかな....)と思ってしまったのには、もう一つ理由が。
「秋扇」という表現があります。
※秋になれば扇は不要になります。そこで皇帝の寵愛を失った女性が「秋の扇と捨てられて....」と嘆いたときの表現。
これも音読みは「しゅうせん」。そこで先生に「どこにブランコって書いてあるっ」と言われたとき、(あれ、鞦韆(しゅうせん)は扇の意味だったかな....)という思いもよぎり、「鞦韆がブランコですっ」と返答できなかったという....
ところで、ブランコは現代中国語では「秋千」と表記するらしいですね。だんだん「秋扇」に近づいているような。(^-^;
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jetrug 投稿日:2005/03/06(Sun)
>そこで皇帝の寵愛を失った女性が「秋の扇と捨てられて....」と嘆いたときの表現。
恥ずかしながら知りませんでした(^_^; 出典は何でしょうか?
早速調べてみたところ、中国語の辞書にも収録されていませんでした。広辞苑には載っていましたが・・・仏教然り(元はインドですが)、いまや中国よりも日本か韓国のほうが中国の文化が残っているのではないかと思うことがよくあります。
> ところで、ブランコは現代中国語では「秋千」と表記するらしいですね。
そうですね。中国の最近の辞書を引くと、寧ろ「鞦韆」と書いてはいけないと書いてあります(^_^;ただ、日本の辞書にあったコラムがちょっと面白かったので、もうご存知かもしれませんが紹介させていただきます。
「一説によると、漢の武帝の長寿を祈って始められた”千秋万寿”の意味の遊戯で、それが”秋千”と逆になり、さらに”鞦韆”と書かれたとされる。のちには清明節での宮中の女官たちの遊びとなった。」
この説が事実だとすると寧ろ「秋千」と書くのが正しいということになりますね。
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あさみ 投稿日:2005/03/06(Sun)
>出典は何でしょうか?
漢の成帝の宮女、班捷[女予](はんしょうよ)が君寵が衰えた自分の身を秋の扇にたとえて詩を詠んだ詩です。しかしその詩の題や文章全体は覚えていません。m(_
_)m なにせその詩が載っている本を読んだのは50年ほど前なので。(^-^;
※[捷]は手偏ではなく、女偏。
>「一説によると、漢の武帝の長寿を祈って始められた”千秋万寿”の意味の
へぇ〜、それは知らなかった。いや、面白い話です。この話から、「筆」という字を連想しました。「筆」は象形文字で「キ」(竹棒の下部に毛がある形)。後に上部に筆を持つための手(ヨ)が加わって「聿」。さらに材料を表す「竹冠」が加わって「筆」。それが現在の簡体字では「竹冠に毛」。なんか字の世界でも「歴史は繰り返す」って感じ。(^-^;
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