Free talk 雑談
(69)ASAMI Ryo
小学校の時、ローマ字を習った。それはいいけれど、「日本では姓・名の順だが、外国では名・姓の順。そこで横文字で名前を書くときは、名・姓の順で書く」と習った。ふん、そうかと素直に聞いたが、中学ぐらいから疑問を覚えるようになった。それは「日本人がアルファベットで書くときは名・姓の順というなら、アメリカ人が日本語で名前を書くときは、どうして姓・名の順で書かないんだ?」というもの。

 それでも中学ぐらいのときは疑問に感じるくらいであったが、大学時代になると、はっきり「こりはおかしい」と思うようになり、20才以降くらいからすべてAsami Ryoと書くようになった(いまは世界標準に会わせてASAMI Ryoだけどね)。しかしこの逆転表記の風潮は、かなり世の中に浸透している。

 10年ほど前、ぶらりと立ち寄ったゴルフショップ。ひょいと見ると「いま○○クラブをお買いあげいただいた方には、もれなく名前書き入れサービスします!」との張り紙。「おお、名前書き入れとはかっこいい」。まんまとショップの術中にハマリ、そのクラブを注文した。

すると店員が「名前はアルファベットでしか入らないんですが」という。
「ああ、構わないですよ。ではAsami Ryoでお願いします」
「分かりました。R Asami ですね」
「アール アサミ?」
「あ、お名前の方は頭文字だけということになっておりまして・・・」
「いや、そうじゃなくて、σ(-_-)はAsami Ryoだから、R Asami じゃどうも・・・」
「でもAsami R じゃおかしいでしょ」
「(当たり前じゃ、このボケ....)」
 結局、そのクラブにはAsami とだけ書き込んで貰うことにした。

 7年ほど前、ある縁でテキサスから来日した観光団とのパーティに出席することになった。あまりσ(-_-)は乗り気ではなかったが、これも浮き世のつき合いと思っていたころ、幹事の人から電話があった。
「楽しい交流のため、全員ネームプレートをつけることになった。そのためみなさんのスペルを教えてほしい」という。たしかにそれは分かりやすくていい。そこで
「スペルはAsami Ryo です」と答えると、
「はい、スペルは Ryo Asami ですね」
「(う、またか・・・)いえ、プレートはAsami Ryo とお願いしたいのですが」
「だって浅見さん、日本人が英語で書くときは、名前をひっくり返すのが常識なんですよ」
「(な〜にが常識だ、根地苦笑)いえ、σ(-_-)は名前をひっくり返すのは好きじゃないんで」
結局、納得?して貰ったが、そばで女房が(また始まった)という顔でみていた(-_-;

 こんな風潮はマスコミにも染み付いている。1992年、中国と韓国で国交が樹立した。そのニュースを伝えた日本の英字新聞、韓国大統領をRohTaeWoo(廬泰愚)、中国首相をLi Peng と表記しているのに、宮沢首相だけKiichi Miyazawaと表記している。日本の英字新聞でも、これだから・・・。

 それでもこうして洋風に合わせて姓・名を逆転させて書くのは、日本が戦争に負けたせいだと思っていた。しかし後年、アエラという朝日新聞社系の雑誌で、そうではないと言うことを知った(1992/9月号)。

 それによると、ペリーが来航した1854年以降、日米交渉が始まったが、当時の日本側の署名はすべて漢字のみだったそうだ。そして1860年、勝海舟や福沢諭吉を乗せた咸臨丸がアメリカに渡った。そのときの軍艦奉行、木村摂津守の英文名刺は姓・名の順。明治になっても姓名の表記が多かったが、ぼつぼつアメリカ流に名・姓で表記する人が出てきた。きっといまで云う、恰好をつけたかったのだろう。

 そんな中、明治16年(1883)、政府は不平等条約改正のために鹿鳴館を建て、にわか仕込みの欧米化を進めた。どうもそのとき以来、一気に逆転表記が広まったという。それでも明治21年(1888)発行の旅券(パスポート)、ときの外相・大隈重信の署名はOkumaShigenobuとなっているそうだ。うん、さすがは大隈重信!

 最近は姓名の順で署名する人も多くなり、σ(-_-)としては大いに喜ばしい。それでも役所関係の書類などは、嫌でも応でもRyo ASAMI と書かねばならないのがたくさんあるので大変気に入らない。小泉総理!、なんとかしてちゃぶだい! 

PS:ハンガリーは日本と同じ姓・名の順であるが、外国へ行ってもひっくり返して表現したりしない。

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