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       (294)電話のカルチャーショック


 手近の辞書でカルチャーショックを見たら、「異なった文化環境に触れて受ける精神的衝撃」とあった。じっさいその通りで、はじめて台湾へ行ったとき、空港から降りたとたんに強烈なカルチャーショックを受けた。

 小学校で「漢字は中国から伝来した文字」と習った。その通りに違いないが、生まれてこの方、「日本語」として読み書きしている。その漢字がほんとに外国文字だったと思い知らされてカルチャーショックだった。(^-^;

 20年ほど前、縁あって某中国女性の留学生の身元の引受人をした(彼女は、いま上海に住んでいる)。その彼女が日本へ来た頃、「なにか日本へ来て驚いたこと、あるかい」と聞いたら、「電話の多さに驚いた」といった。

 いまは携帯電話の普及で公衆電話もあまり見かけない。しかし当時は数百米おきに電話ボックスがあった。店々にも、必ずピンクの置き電話があった。しかし当時の上海ではそこまで普及してなかったので、電話ボックスの多さに驚いたそうだ。

 (なるほろ)と思ったが、電話ではこっちも驚いたことがある。
 むかし香港の街を地元の人と歩いていた。どこかに電話する必要が生じて、連れが「電話、電話」と探しはじめた(もちろん、まだ携帯が無い時代)。こっちも街角をキョロヨロしてみたが、公衆電話なぞ影も形もない。
 すると連れが、「あった」といって、急に近くの洋菓子店のガラスケースの上の黒電話に近寄った。店頭には男性と女性の店員が二人ほどいた。そこで一瞬、(店の人に頼んで、電話を借りるのかな....)と思った。ところが店員にはひと言も声もかけす、 いきなり受話器を取り上げてダイヤルを回しはじめた。
 (えっ!)思ったが、物も云えない。店員も知らん顔。数分、電話で話をしたあと、「連絡がつきました。さぁ行きましょう」といいながら、受話器を置いてサッサと歩き出した。もちろん店員の方を見向きもしない。驚いたが、とにかく後を追って歩き出した。

後日、別の地元の人にその話をした。すると香港では、電話は定額料金で掛け放題という話だった(いまはどうなっているか知らない)。そこで店々では自分とこの電話を店頭におき、公衆電話として通行人に自由に使わせているんだと。
 「へぇ、そうなのか、ちーっとも知らなかった....」てなわけで連れの行動は理解できた。それでも「ちょっと借りますよ」とか「ありがとね」のひと言ぐらい云ってもいいんじゃないのと思った。(^-^;

 電話では漢字とののからみで、もう一つミニカルチャーショックがある。
 初めて台湾へ行ったとき、ある電車の駅で電話をする必要が生じた。σ(-_-)一人しかいなかったし、電話したい相手は中国人。しかし相手は日本語がパラペラなので、その点は心配ない)。
 見回すと公衆電話らしきものがある。(おう、あったあった)と近寄ると、そばに「公用電話」と書いてある。ちとビックリしたが、どうみてもお役所サマ専用電話とは思えない。そこでこれは公衆用電話の略だろうと思って、その電話を使った。何事もなく用は足りたが、電話してるあいだ、なんとなくヘンな気分だった。(^-^)

公衆とか公園、あるいは公共などと使われるように、もともと漢字の「」に「役所」とか「地方自治体」という意味はない。役所は全部「」だ。

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