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       (290)靴みがき憲兵


 久しぶりで女房と映画を見に行った。見に行ったのは「007 カジノロワイヤル」。ところが時間を間違えていたので、3時間ほどの待ち時間。仕方ないので「硫黄島からの手紙」にした。まずまずの佳作で、それなりに良かった。

 映画の中に憲兵が出てくる。住宅街を夜間パトロール中、飼い犬の吠え声がうるさいというので、民家の中に押し入って射殺してしまう。いくら軍人が威張りまくっていた時代とはいえ、そんなむちゃくちゃな憲兵がいたのかいな。いずれにしても、そんなシーンを見ていて、ある話しを思い出した。

 昭和50年(1975)ころ、N市のN社で働いていた。そのビル街の一角で50代半ばの男性が靴みがきの店を出していた。店を出していたといっても路上営業。そこで雨の日とオフィス街にひとがいない日曜祭日はお休み。
 修理も手がけていたので、近所のOLとサラリーマンでけっこう繁盛していた。OLやサラリーマンは慣れたもんで、適当な時間に来て靴を預け、修理が終わって磨きあがった靴を受け取って帰る。
 σ(-_-)もよく利用していたが、通りかかったときに靴をみがいてもらうだけ。そこで磨きあがるまで、スリッパを借りてボーっと待っている。自然に靴屋さんと雑談をするようになった。

 その靴屋さん、左手と左足が少々不自由。親しくなってから聞くと、戦争で負傷したという。なんでも数メートル離れたところで砲弾が炸裂したそうだ。それで軍人恩給などが支給されているけれど、それだけでは不十分なので仕事をしているのだとか。

 そんな話をしているうちに、もっと若いときの話になった。じつはこの靴屋さん、某大学出。学生時代に同級生が左翼運動に関係していた。その同級生がビラ配りかなんかで警察につかまったとき、靴屋さんも一緒につかまった。
 いくら自分は関係ないと云っても、警察は信じない。「このアカ学生め」と竹刀でぶったたかれたりして、さんざんな目にあった。それでも どうやら関係ないらしいということで、なんとか釈放された。もちろん“間違えてゴメンナサイ”の一言もない。やがて大学も卒業し、なんだかんだとするうちに、なんと憲兵になってしまった。そうなってから思い出した。“あの警察やろう”

 そこであるとき、その警察署に「聞きたいことがあるので、○月○日に出向く」と連絡した。当日、警察署に行くと、署長以下全員がお出迎え。その幹部が居並ぶ署長室で、「我が輩を覚えておるか
 (はて、こんな若僧 覚えはないが...)といぶかる幹部連に、「我が輩は、ン年前に○○事件で誤認逮捕された○○だ
 アッと驚く幹部連に「憲兵になるような人間が、アカ学生であるワケないだろうが!」と怒鳴りまくって、思いっきり溜飲を下げたそうだ。

 ヒマ時間に聞いたむかし話ので、どこまでホントか分からないが、あの時代なら、ありそうな話。

PS:硫黄島は「いおうじま」ではなく「いおうとう」の筈なんだけど、そのように入力すると「云おう等」としか出ないのは、どういうワケだ。.一太郎も米軍に占領されたんかい。★O=(`_` )メガパンチ!

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