Free talk 雑談
(18)台湾話<6>対々
 若いとき、友人が「外国へ行くとき、言葉は通じないとしてもYes/No/Where is toilet/How much/I'm humgry だけは覚えておいた方がいいぞ」と言った。そこで初めて台湾へ行くとき、それだけは覚えて行った。で中国語でハイは是(ス)、イイエは不是(プス)という。「是」は日本でも「是認」の「ぜ」であるから、なるへそと思った(「ぜ」はもちろん「ス」が訛ったものだろう)。

 ところが台湾へ行ってみたら、テレビのアナウンサーなんかは「是」と返事をしているものの、普通の会話の中では「テー」または「テーテー」と言ってる。「テー」はどんな字を書くのか分からなかったが(そのときは別に聞こうとも思わなかった)、どうもこれは日本で言うところの「うんうん」と言という感じらしかった。

 なるほど、「うんうん」は「テーテー」というのか。それじゃあこれから自分たちも「テーテー」にしようと思った。そこで同行の日本人と一緒に、中国人との話で合槌を打つときは、「テーテー」を連発していた。

 そのころ、非常に親しくして頂いていた王林さんという女性がいた(もう亡くなられてしまったけど....)。王林さんは戦前、日本語教育を受けてみえるので、日本語ぺらぺら。あるときその王林さんから、「みなさんは話をしているとき、よく“テーテー”とおっしゃる。昔の日本語にはそんな表現は無かった筈だが、現在、それはどういう意味で使われているのか?」と聞かれた・・・・(℃°

「いえ、あの、これ..中国語で“うんうん”という意味じゃないんですか?」
「え〜、違いますよ」
「だってみなさん、テーテーと言ってるみたいなんですけど」
「そんなこと、言ってません」
「では“うんうん”はなんて言うんですか」
「テーテー」
「・・・・」

 頭が混乱したので、とりあえず分かったような顔をして話は終わった。しかしどうもすっきりしない。そこで別な人に「テ−」の字を聞いた。するとそれは「対」だという。
「おお、対(たい)か。中国語なら、これは対(トゥィ)。ひょっとすると彼らは“トゥィ”と発音しているのかな?」
どう聞いても“テー”としか聞こえないものの、意味としては理解できる(麻雀のポンと同じ感じ)

 その次から“テーテー”ではなく“トゥィ トゥィ”とやってみた。すると相手の中国人、「浅見さん、中国語が上手になりましたね」
しかし同行の日本人には、やっぱり「テーテー」と聞こえたそうだ。

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