Free talk 雑談
(16)言葉は世につれ
 捏造旧石器の話を書いていて、思い出した。
 歌は世につれ、世は歌につれ、じゃないけれど、むかしの言葉というか発音はどんどん変化してゆく。大昔、蝶々は「てぷ てぷ」と言ったそうな。それが「てふてふ」となり、ついには「ちょうちょ」となったと言う。

 そこで昔の発音がどうであっても、いま「蝶々」に「てぷ てぷ」と振り仮名をすると、入学試験ではペケになる。(笑) ペケになるのは、現在、多くの人が蝶々を「ちょうちょ」と発音しているからではない。

 日本には国語審議会というのがあって、漢字の書き方読み方はすべてここで決めている(筈だ・・・)。だから、世の中でどれだけの人が、何をどう書いていようと発音していようと、そこでOKが出ている書き方読み方以外はペケになるのだ。

 余談だけど、むかし知人の中国人留学生が、大学の日本語の試験で「類」という字を書くことになり、左側に「米」と「犬」、右側に「頁」と書いたらXをくらった。教授に聞くと、「左側の『米』の下は『大』と書くのが正しい」と言われてびっくらこいたという。(笑)

 でも彼がいくら「 Dog 」が正しいと頑張っても、国語審議会が「 Big 」と決めたら、日本ではそれが正しい字。それくらい国語審議会は Big なのだ。しかしそんなビッグな存在の国語審議会だけど、どうも漢字の読みに対する対応は遅い。

 そこでようやく本題、「捏造」の話。
 たぶん多くの人が、これを「ねつぞう」と発音してると思う。しかしこれは慣用音であって、ただしくは「でつぞう」と発音する。分かりやすく言えば「でっちあげ」の「でつ」だ。そこでたとえ日本人の過半数が「ねつぞう」と発音していても、はたまた辞書に「ねつぞう」と振り仮名してあっても、国語審議会が認めていない以上、入学試験などで「ねつぞう」と振り仮名すればペケになる(筈・・・・)

 こんな例はまだまだある。といってもいまパッと思い出すのは、消耗品に洗滌、煌々ぐらいだけど。消耗品は一般に「しょうもうひん」と発音する。しかし国語審議会が認めているのは「しょうこうひん」。洗滌は「せんじょう」ではなく「せんでき」、煌々は「こうこう」ではなく「きょうきょう」、いずれも正音以外は入学試験などでペケになる。

 しかしいくら「でつぞう」、「しょうこうひん」、「せんでき」、「きょうきょう」などが元々の発音であっても、いつまでこれを正音として引っ張るつもりだろう。どう考えても世の中での力関係は完全に逆転してる。そんなに古い発音にこだわるならば、蝶々だって「てぷ てぷ」に戻して欲しい。(笑)

 書いてるうちに、もう一つ思い出したぞ。
 さっきの中国人の話に出てきた「類」。つくりは「頁」だ。この「頁」の正音は「おおがい」。しかし「おおがい」で国語辞典を引いても出てこん。ワープロだって出てくるのはせいぜい「大貝」か「大谷」。これじゃあ意味としても間違っている。しかしワープロで打つときは、「ページ」と打つと一発で出る。(笑)
※(「おおがい」という読みは「大きな貝」から出ているが、「頁」本来の意味は「大きい頭」)

 国語審議会さん、早く「頁」の正音も「ページ」にしてくれたまひ。

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