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     (144)日本海、波高し


 20年ほどまえ、初めて韓国へ云ったとき、韓国では日本海を「東海(韓国語で“トンヘ”)」と呼ぶことを知った。「東海(トンヘ)」とは、もちろん「韓国の東側にある海」という意味。

 “日本海(Japan Sea)”とは日本だけの独自の呼称ではなく、国際海図協会だか地理協会だかで承認されている国際的な名称。しかし韓国としては日本の領海でもないものを“日本海(Japan Sea)”と呼びたくないというわけだ。

 「東海」という名称については、そのときは“なるほろ”と思っただけであるが、数年前、その韓国が、名称を認証するその国際組織へ「日本の領海でもないのに“Japan Sea”はおかしい。“East Sea”と変更すべきだ」と正式に提訴したというニュースを見た。

 そのときσ(-_-)は、「日本の領海でもないのに“Japan Sea”はおかしい」というのは判るが、かといって「“East Sea”と変更すべきだ」というのもおかしな話だと思った。

 「東海=East Sea」というのは、あくまで韓国から見た方角。日本だって、京都から見て東の地方は東海道だし、西の地方は西海道、北は北海道だ。

 韓国も“Japan Sea”が北側にあれば“North Sea”、西にあれば“West Sea”と呼んでいた筈。たまたま自国の東側にあるから“East Sea”と呼称したにすぎない。名称変更を提訴するとしても、そんな自分中心の呼称を主張するというのもずいぶん身勝手な話。

 この韓国側の提訴に対して、日本は、「“Japan Seaはずっと以前から自然に呼称されており、国際学会でも当初からそのように認知されている。いまさら変更する必要はない」という主旨の反論をした。

 σ(-_-)はこのときの日本の反論に全然インパクトを感じなかった。それは「ずっと以前から」といっても、まさか平安時代、室町時代からそのように呼称されていたわけではない。この辺りの歴史ははっきり知らないが、“日本海”という呼称が登場したのはたぶん明治時代ぐらいだろう。

 この時代、日本は韓国を日本領土としていた。このときの日本から見れば、この海は“日本”に囲まれていた。となれば日本の感覚としては、これを“日本海”と呼称することに、なんの問題も感じない。もちろん韓国が異論、反論、オブジェクションできる状況になかったのは云うまでもない。

 どこからも何の異論も無いとなれば、関連機関がすんなり“Japan Sea”を国際的名称として認知するのは当然の話。しかし韓国が何の異論・反論も出来ないときの状況を前提に、「国際学会でも当初からそのように認知されている」と云っても、そんな勝っ手な理屈にインパクトを感じなかった次第。しかしこのときは国際学会でも「どっちもどっち」という事になったのか、名称変更の件は見送りとなった。

 しかし今年、また韓国がこの問題を国際学会へ再度持ち出してきた。ニュースにならないので知らなかっただけで、毎年、持ち出していたのかも知れないが、とにかく今年は韓国も強硬だったらしい。日本も当初からの主張を繰り返して抵抗したが、国際学会の結論は「世界の国に意見を聞いてから考える」ということになったらしい。

 そして世界には、たとえば大西洋の南米沖にある群島が、イギリス名「フォークランド諸島」、アルゼンチン名「マルビナス諸島」と呼ばれているように、国際地図に両名併記の地名がたくさんある。そこで今後のなりゆきによっては、この海も“Japan Sea”、“East Sea”の両名併記になるかもしれないとのこと。

 まぁ、それはどっちでもいいが、ほんとにナショナリズムというものは難しい。韓国にしても日本にしても、自国のものでもない海の名称のことでナショナリズムを発揮しても仕方がないと思うが。せっかくワールドカップで盛り上がっても、これじゃあ台無しだ。

 世界には紅海や黒海もあることだし、どうして“Green Sea”とか“Blue Sea”、あるいは“Central Sea”など、あたりさわりのない名称で合意できないのかいな。

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