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  (141)街路灯


 我が家から数キロ行った隣町。畑の真ん中に、20軒ほどの集落がある。その集落の真ん中をメインストリート(といっても幅員6メートル)が1本走っており、集落の外周道路(やはり幅員6メートル)にアクセスしている。

 集落から外周道路にアクセスする唯一の道路ではないが、おのずから他のアクセス道より交通量が多い。といっても田舎の畑道みたいなもんだから、信号などはない。そのメイン道路と外周道路の交差点で、自転車同士、あるいは人と自転車との接触事故が半年に1度くらいのペースで起きていた。発生は、いつも深夜になってから。

 自己の理由は簡単そのもの。その交差点には街路灯がない。そして畑のハズレの道のこととて深夜は真っ暗。そこを無灯火の自転車がノンストップで走りまくる。無灯火自転車の方は、「自動車がくればヘッドライトですぐわかる。そしたら気を付ければいい」くらいにしか思っていないが、互いに無灯火自転車では、気を付けようがない。そこで無灯火自転車同士がガッシャーンとやる。

 その集落のはずれに公民館があって、女房の参加しているサークルがよく利用する。そのついでに事故の話を聞きこんでくる。で、二人で話す当たり前の結論。「あそこに街路灯を付ければいいのに

 そうこうしているうちに、そこに街路灯がついたという。それも話に寄れば、単なる蛍光灯タイプではなくて、オレンジの光を発する立派な水銀灯。(ふ〜ん、それは結構なことで。村も金を奮発したな)とは思ったが、それ以上の感想はなかった。

 ところがしばらくして、その交差点で自転車同士の接触どころか、バイクと乗用車の人身事故が起きたという。(いったい、あの村の人間は何やってんだろう)というのが正直な感想だった。

 それからしばらくして、女房のサークル活動の関連で、夜、公民館へ出掛けることになった。その交差点に近づくと、なるほど立派な水銀灯が設置され、オレンジ色の光芒をはなっている。

 σ(-_-)はそれを一目みて、「あ、これは事故が起きて当たり前だ」と云った。
 女房が「どうして?」と聞く。
お前、よく見てみろ。水銀灯が明るいので、ヘッドライトの光がわかりにくい。夜、左右の道から車がくるかどうかは、ヘッドライトの光で判断することが多い。それが判りにくいので、自転車は“左右の道からは自動車がきていない”と錯覚して、徐行もせずに交差点につっこむんだよ

 女房は「ふ〜ん」と感心していたが、そんなこと感心するようなことでもない。そもそも安全確認もせず、勝手な思いこみで深夜の交差点につっこんで行く方がおかしい。

 それで女房に「ほっといたら、また事故が起きるぞ。街路灯の照明度をもっと落とすように、誰かに云っとけ」と云ったが、「だって私、隣町の人間だし....誰に云ったらいいのか....」

 「う〜ん、そうだな....そいじゃあ公民館の管理人に云っておいたらどうだ」なんてやり取りをしたが、やはり隣町のこととて、話はそこで終わってしまった。

 そしたら先日、今度は車同士、それも片方が廃車になるほどの側面衝突事故が起きた。それを聞いたとき、(それ見ろ。云わんこっちゃない....)と思った。

 そうこうする内に、その街路灯の照明は付けられなくなった。たぶん村か警察が原因に気が付いたのだろう。そして現在、立派な水銀灯は照明が消されたまま、ただの鉄柱となっている。

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