ヤエヤマヒルギを中心とするマングローブ林の林縁。
巨大に成長し鈴生りにぶら下がる胎生芽。
花のそばを花粉を足にいっぱい着けて飛び回るミツバチ。
沖縄本島以南のマングローブに分布するヒルギ科の植物。
比較的耐塩性が強い為、マングローブ林の海に近い林縁によく発達している。
根元近くで幾本にも分岐した太い枝から支柱根と呼ばれる蛸足状の根を、無数、地中に向かって伸ばし、不安定な土壌での安定を得ている。
この支柱根には呼吸根としての役割や、塩分を濾過して水分を吸い上げる能力、光合成の能力などが知られているが、地上2、3メートルの高さの枝から伸びてくる根が同様の役目を持っているかどうかは不明。この根が支柱根として地中に潜ることはほとんどない。
一説には空中にある水分を吸収する為だとか、やはり酸素を吸う為だとか言われている。
日本では大体7〜8メートル程度にしか成長しないが、同じ仲間で熱帯地方に分布するオオバヒルギでは30メートルに達するものもあるといい、その支柱根は日本家屋の二階建て屋根部分ぐらいから伸びているという。
ところで、これらヒルギ科の植物はユニークな子孫の散布の形をとっている。
まず、花の段階で虫などによって受粉が行われる。
その後、四個のガク裂片と中央に位置する雌しべだけが残り、その根元が膨らみ始める。これが、所謂果実であり、中心には種の元となる胚が形成される。
普通の植物ではこの果実や種子を成熟させ、落果させるか、鳥などに食べてもらうことによって、子孫を散布している。
ところが、ここからがこの植物のマングローブ植物たる所以でもあるのだが、ヒルギ科ではこの胚の状態のものに母親の木が栄養を送り続け、母樹についたままの状態で発芽させてしまう。まず、伸び出した幼根(胚軸)は、果実を突き破り、母樹からどんどん栄養をもらい、長く太く成長していく。これが左上の写真。胎生芽と呼ばれるものである。
季節がよければ、このように多くの胎生芽が風に吹かれ、木の上でブラブラ揺れているのを見ることができるだろう。
この胎生芽はある程度まで栄養を蓄え、大きく成長すると母樹を離れ、落ちる。
落ちたものは、あるものは柔らかい泥土に突き刺さり、そこで芽生え、またあるものは潮流によって運ばれ、別の場所で定着する。
これらは、種子ではなく、言うならば苗に近い。
ヒルギ科の植物は種ではなく、苗の状態まで子供を育ててから散布しているのである。