カマイ猟の季節

イノシシのヌタ場。イノシシは体についたダニを落とす為にこういう水が常に染み出る場所で、泥を体にこすりつけて転げ回る。こういうヌタ場やケモノミチを探しながら、イノシシが確実に通り、足を着きそうな狭い場所を選び、罠を仕掛ける。

先の尖った鉈で、地面に10センチぐらいの深さの穴を掘り、そこに竹の杭を打つ。杭には垂直に人形という木片を差し込む。この時、ダシチャーと呼ばれる弾力性のある木の棒が少し離れた地面に突き立てられており、グッと力をかけ湾曲させた棒の先は手元に収まっている。

ワイヤーで出来た輪を穴の周囲に沿わせて埋め込む。この輪は引っ張れば狭まる。ワイヤーの先はダシチャーの先端に括り付けてある。ダシチャーは現地調達の為、山歩きの荷物にはならない。

竹の杭と人形の隙間に更に小さな木片を挟み込む。これにも糸が結び付けられており、糸はダシチャーの先端に結わえてある。この木片と糸で弾力性のあるダシチャーが元に戻ろうとするのを繋ぎとめているわけだ。

ダシチャーの先端部分を落ち葉などで覆い隠す。目ざといイノシシから罠を見つからないようにする為だ。

穴の淵に軽くかかるよう、人形に対し垂直に小枝を並べていく。

先に並べた小枝に対し、格子を組むように更に小枝を並べる。穴の中のどこをイノシシが踏んでも落ちた小枝が人形に当たり、人形が外れるようにとの工夫だ。

小枝の格子の上に大き目の葉っぱを並べて穴を覆い隠す。

更にその上に落ち葉を被せる。これで罠は完成。後は鉄の匂い、人間の匂いを消してくれる雨を待つのみ。

西表の山中には、カマイと呼ばれる小型のイノシシがいます。昔から、農耕を営んできた西表の人たちにとって、カマイは畑を荒らす天敵でもあり、また大事な蛋白源でありました。
11月の解禁が迫ると、島の男達はどこかワクワクとし始めます。自分なりの工夫を凝らした罠を一つ一つ作り始めたり、道具の手入れにも余念がありません。
かってはこのカマイを、犬で追いたて槍で突いたり、芋などの餌で誘導し、大きな石を積んだ木組みの下にカマイが入ると、木組みが外れ、大石がカマイを押し潰すという「ビッタガシヤマ」という罠などで獲ったと言います。しかし、今では戦前に台湾人労働夫たちが持ち込んだというハネ罠が主流です。この罠の特長は、山を歩くのに余計なものを持たなくて済むこと。ワイヤーの大きさを調整する事でヤマネコが罠にかからないで済むようになったとも言います。
この時期、山には豊かな恵みがもたらされます。ピカピカ光る樫の木のドングリ、椎の実、などなど、こうした地に落ちた木の実を食べてカマイたちは太ります。
そんな脂の乗ったカマイを今度は人間がいただくのです。

(1)カマイが罠に足を踏み入れる。

(2)格子に組んだ小枝が折れ、人形を押さえつけ人形が傾く。

(3)人形と竹杭で挟んでいた木片が外れる。

(4)瞬間、木片で引っ張られていたダシチャーが、跳ね上がる。

(5)ダシチャーに結び付けられたワイヤーも同時に引っ張られ、ワイヤーの輪は縮み、その中に踏み入れられていたカマイの足を締め上げる。

(6)小さなものならそのままブラ下げてしまうが、大きなものは足をワイヤーに絡めたまま暴れまわる。が、ダシチャーが邪魔をする為、遠くへは逃げられない。

(7)見回りに来た猟師がそれを見つけ、捕まえる。

カマイ解体作業へ

血の嫌いな方、心臓の弱い方は御覧にならないで下さい。

罠がカマイを捕らえるまでの過程

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