西表のイノシシは美味い!内地産のものに対しかなり小型ではあるのですが、その分、身が柔らかく臭いもきつくない。
獲れたイノシシは主に汁や刺身、チャンプルーの材料として利用されます。
ですが、せっかくイノシシを獲っても、そのままではどうにもなりません。獲られたイノシシは男達の手によって解体され、綺麗な肉の塊、出汁のもとになる骨、内臓とに分けられていきます。
それはなかなかに手早く、慣れた手つきで進んでいきます。ここではそんな解体作業の風景をご紹介しましょう。

罠にかかり、猟師の手によってその場で仕留められたイノシシ。西表では年間600頭以上が狩られ、自然死、事故死を含めたイノシシの年間死亡率は全体の50%に達するが、絶滅要因にはならないようだ。イノシシは大型哺乳類には珍しい早熟多産で強い繁殖力を持っている。

庭に並べられたブロックの上に乗せられて、ガスバーナーの火で毛を焼かれるイノシシ。この過程で身体についていた巨大なダニも焼け落ちる。

焼けて炭になった毛をヘラでこそげ落としていく。念入りな作業。これを疎かにすると毛が残り、食感が非常に悪い。この時、死んでいるイノシシが尿を噴出することもある。

更にこんがり焼き色を着ける。イノシシの丸焼き。もうすでに美味そうである。

首を落とされた後、解体台に乗せられ、開腹されるイノシシ。前後両股関節も切り離しておく。開腹はまず肛門をくり抜き、そこに続く腸をはしっこから外していく。

食道から肛門まで続く内蔵を傷つけることなく、そのまま、きれいに掻き出す。手伝うオバアの顔が嬉しそう。

胴体から外された首や内臓。全て捨てるところはない。気が向けば、レバーや睾丸などはその場で炙って食べる。睾丸を齧ると精が強すぎるのか、頭が ボーッとしてきた。

イノシシの身体をパーツに分けて切り離していく。ここまで、さも簡単そうにさっさと作業が進んでいるが、それはやはり熟練の技。かっこいい。

肉が残るアバラも二本づつ切り分けていく。ソーキですね。切り分けられた肉はすぐにクーラーボックスの中にしまわれていく。匂いをかいで蝿が集まり始めているので、更に急ぐ。

内臓の中味をしごき出し、内臓をきれいに洗うオバア。中味と言っても、肛門近くは糞である。臭いし、蝿もたかる。大変な作業だ。また胃の中には未消化の内容物が入っており、やはりドングリなどが多かったが、昆虫類の足も含まれていた。内容物は畑の隅に埋められ肥料となる。

顎も上下で切り離す。汁の具にして食うが、上顎は脳みそ入り。下顎は舌つき。いずれも珍味中の珍味。個人的には下顎の方が美味いと思う。