2011年4月2日 三重県
宮川
この日、釣りをする谷は決めていた。
宮川には、三重県の渓流では珍しく、大小支流が結構沢山ある。現実的にフライフィッシングでアマゴを狙える最下流の支流は、奥伊勢フォレストピアが隣接する薗川だろう。(※さらに下流の支流でも釣れるとは思うが、やんごとなき領域に差し掛かるので野暮なことは控えたい。)
ちなみに、アマゴが釣れる下流域の支流と、ダム上の谷(支流)は距離にして20km以上あり、また、ダム上は舗装されていない道が続くのでスピードが出せないため、入渓点に辿り着くのにかなり時間がかかる。
危険も伴うので、ダム上の谷に入るのは、出発時刻も装備も、ちょっと気合を入れないと足を踏み入れにくいのである。
目指したのは、父ケ谷。
普段なら名前を出すこともないのだが、ダム上の谷の中では比較的入渓しやすく、綺麗な魚が釣れる、三重県のフライフィッシャーには人気の谷。
しかし!!
砂ではなく、小石がギッチリ詰まった土嚢で完全ガード。この上の橋が、まだ壊れていて渡れないらしい。
通行止めから入渓点までは、歩きだと入渓できる区間までおそらく30分以上。
一瞬歩こうかとも考えたが、釣り人のものと思われる4駆が停まっていたこともあり、苦労して登ってきたけど転進する事に決定。苦労が報われる気がしないからな。
ちなみに、その場から川へ降りて入渓し、釣り上がって帰ってくるという作戦もあったが、林道からは川は見えず。微かに水の音がするようなしないような。ガレ場に落ち葉が積もった急斜面なので、死んでもいいぐらいの気合が無いと降りれません。多分、川は100m以上下。
この谷は、気合入れて歩く人だけが楽しめばいい場所になった感がある。谷の下流は人が入れない場所もあり、入渓するのも一苦労。
5年ぐらいすれば、魚がかなり増えてそう。
さて、こうなると入れそうな谷は、放流も行われている大和谷。
大和谷は入渓も楽でいつでも釣れるので、他の谷を見て回ることにした。よく考えたら、2004年の豪雨災害後、2006〜2007年の禁漁を経て、ダム上の谷を回るのはこれが初めてだ。
正直言って、止めておけばよかった。
昔、アマゴが沢山泳いでいた谷で、こんな感じ。
岩の合間をチョロチョロと水が流れており、登ればアマゴはいるかもしれない。しかし・・・・
全体的に、砂の上に岩が積み重なっているような状態で、足を乗せればすぐにでも崩れそう。
上の2枚の写真は、これでもマシな方に分類できる状況で、岩に埋もれ、消えてしまった谷(水が無いので、山崩れの痕か谷かわからない)がいくつかあった。
フィールド紹介に載せている谷の地図だが、ただの岩場、川ではなく沢になってしまった支流がいくつかある。ダム下の支流でも、有名所の大熊谷でさえ岩や石が積もって浅くなり、少しの晴天続きで水無川になる。
10年ぐらいである程度回復するなんてとんでもない。多分、100年単位で水が流れ続けないと、復活しない支流が沢山あるようだ。
尾鷲方面へ抜けられた県道603号線。道路が一部宙に浮いていて、さらに上では土砂崩れが撤去されておらず、通り抜け不可。
写真を撮っていたら、上からバイクの人が降りてきたので、一言二言話を交わす。
「見ての通りやわ。崩れとって進めやん。もしスタックしたら誰も来やんぞ。行かん方がいい。」
「ですよねー。」
頻繁に行き交うダンプを見て、復旧工事は数年で相当進んだのではないかと、勝手に解釈していたが、人家がない奥の方は、まだ手つかずの場所が多いようだ。
結局、3時間ダム上の谷を回って、12時過ぎに成魚放流もされてる大和谷へ。
1ヵ月ほどまとまった雨が降っていないので、透明度抜群の川であっても、大量の藻が発生していて見た目はイマイチ。
大量に乱舞する各種メイフライ、黒系のカディス、あちこちで見られるライズ。
グレーのソラックス・ダン、茶色のパラシュート・フローティングピューパの#16。この2本で十分楽しめた。
動画でも映してる15cmサイズ。ニンフや管理釣り場パターンなら、沢山釣れたでしょうが、そんな気も起きず・・・。
たまーに釣れる、20cmオーバー。ヒレまん丸。朱点多し。
1匹だけ釣れた、サビが残るヒレピンの野生魚。こんな魚が、夏前には宝石のような美しさに変わる。
ただし、大和谷はダム上の谷にして唯一、成魚放流が活発な谷だったので、野生魚であっても朱点が濃いアマゴが多い。
10匹以上は釣れただろうか。
4時過ぎではあったが、荒れた谷を目の当たりにして下がったテンションもあり、終了することにした。
帰り道。
1.2mぐらい。
岩から降りて、川を歩けば、なんてことない脱渓ルート。
「ここ、ジャンプして渡れば近くね?」
頭の中で、悪魔が囁いた。
渓流釣りのモットーが、「安全に釣る」である管理人。普通だったら迂回するのだが、午前中からあちこちの谷を回ってきた事もあって、疲れから油断が生じたのかもしれない。
1歩・2歩・3歩・4歩下がって、タタタッとダッシュしてジャンプ−−−−−着地!
ズズーーーーーッッ!! 着地同時に、1mほどスリップ。
「うひょーーーーっ!!!」
素で、釣りキチ三平君になった。そして、走馬灯のように、滑っている一瞬で次の事が頭を巡った。
@このまま岩場に落ちるのはまずい。横に倒れこんで、最悪川へ落ちよう。
Aロッドも同じく川へ投げよう。このままこけたら折れる。
Bだから、無茶はするなとあれほど・・・・・。
@、Aは、本当に一瞬で思い立った。
Bは、長いのか短いのかよく分からん時空の中で、ひたすら後悔の念がこみ上げてきた。赤信号を無視して、車に撥ねられたら、多分こんな感じだ。(←本当か?)
運良く、1m程度でグリップが回復し事無きを得たが、しばらく誰もいない川で「だから!無理は絶対ダメだっちゅーの!何やってんだ!!!」と、一人で叫んでいた。脳内が緊急事態に対処すべく、変な物資で満たされたんでしょう。
宮川の岩は、大理石っぽい質感でツルツル滑るため、ウェーディングシューズでもグリップが効きにくい。
油断大敵とはこのこの事だ。
みんなも気を付けよう☆