9/9・10 長野県
太田切川 後編
大型堰堤を道間違えてようやく越えて、一休みしていると霧の固まりのようなものが山を乗り越えてきた。一瞬で周囲が真っ白になり、肌寒い。
程なく、小粒の雨が降りだす。天気予報では曇りとなっていたが、そこは山の天気、しかも標高1000m超の地点なので天気はコロコロ変わるのだろう。
雷が鳴ってきたら即刻引き上げるつもりだったが、10分程度で視界も明るくなり、雨も霧雨に変わったので釣り再開。入渓点よりやや下り、堰堤ギリギリから釣りあがる。
大型の派手な色のテレストリアルを結ぼうと思ったが、あいにく手持ちが無かったのでパラシュートを結ぶことにした。
キャストぉ・・・おぉ?の前にライズ発見!
自分が立っている場所から5m程の場所に転がっている、岩の真後ろで何かを捕食している20cmクラス。全く気付かれていない。ふっふっふ・・・うぶな奴め。
岩の1m上流にフライをキャスト。フライがナチュラルに流れ、岩で見えなくなる。目論見どおり波紋が広がったので「オラッ!」っと合わせたが、岩魚が慌てて上流へ逃げ去っただけだった・・・(汗)
そんなにうまくいくわけないか。
1匹目は逃がしたが、その後はコンスタントに反応がある。
やや小さいものの、核心部はさらに上流らしいのでこんなものでしょう。と、余裕に思っていたが大事な事を忘れていた。時刻は既に10時半を過ぎ、そろそろ引き返さなければならない(ソースカツ丼屋の開店前に並ぶ約束がある)。
核心部の入口付近まで釣り上がると、流れが2つに分かれていた。
とりあえず、左側を50mほど進む。中型の反応がポツポツあるが、意外とスレているのかフッキングまで至らず。渓相が典型的なフライフィッシング向きの流れで、どんどん釣り上がりたかったが我慢して引き返す。
次に右手の流れへ。
何度かの反応の後、半径5m程度の小さなプールへ。フライを流していると、不意にフライを見失った。「あれ?どこいった?」ラインを手繰ると、ズシッとした生命反応。
アマゴのようなローリングファイトの後、上がってきたのは20cmちょっとの岩魚。さらに上流へ進めば・・・。誘惑の甘い香りがプンプン漂っていたが、涙を呑んでここは撤収。
また来年来たらいいや(と言いながら、脱渓ポイントまでフライを流しならが帰る)。
途中、キノコがわさわさ生えていた。食えるんか?これ。
管理人、お育ちがセレブなので、山の中で見分けられるキノコは多分松茸とトリュフぐらいだ(ついでに山菜はタラの芽とアケビの新芽、フキ、ウドしか分からない)。キノコは特に、素人が手を出してはいけない代物らしい。クワバラクワバラ。
ようやく道路まで脱出。
眼下に広がる駒ヶ根の街並みを眺めつつ、ひたすら歩く(正直言って、堰堤の高巻きよりしんどかった)。しかし、アスファルト道路は歩きやすい。人間ってスゲーな。こんなものを日本中に敷き詰めたんだから。
携帯の電波が入ったので嫁さんに電話し、20分後に合流。ここからは家族サービス開始。
夏休みとは違い、目指すソースカツ丼屋がそれほど並んでいなかったので、まずは地ビールで食前酒(水分を我慢してたので、死ぬほど旨かった)。
そして、嫁さんお待ちかねのソースカツ丼屋「ガロ」へほろ酔い気分で突入。あまり詳しく分からないが、ボリューム満点でこの近辺では人気No1・2を争う店らしい。
パパ、あたしは二刀流で戦うわ
飢えた野獣が2匹お待ちかね。
自分はミックス丼(トンカツとエビ)、嫁さんはノーマルのソースカツ丼を注文した。ちなみに娘はまだスプーンやフォークは使えない。飲食店で子供用スプーンを出してもらうと、いつも握り締めているがヨダレまみれにして返却するだけ。
注文後、しばらくしてどんぶり二つが運ばれてきた。
フタの意味がねーよ!( ̄□ ̄;)
何故こんな立体的に盛り付けてるんだろう・・・?素朴な疑問はあったが、がっつく。ウマッ!エビでか!
++30分後++
ゴメン。食いきれない(汗)
半分ぐらいまでは一気に食えたが、「明治亭」や「すが野」より味が濃い感じで、学生とか若い人が好みそうな感じ。
30代にリーチが掛かって胃が弱くなったオッサンには、やや辛いものがあった(残ったらお持ち帰り用の容器もらえるらしい。後で知った)。
つーか、こんなに多いと知ってたら先にビール飲まんって。失敗した。
「ソースカツ丼はもう1年ぐらい結構っす・・・」
店を後にし、観光案内所へ宿泊先を探しに移動。前回同様、ユースホステルに予約を入れて周囲を観光する。
先に嫁さんがチェックインし、娘と一緒に昼寝するとの事。
となれば、自分がすることは一つ。今度はC&R区間に入渓。・・しようとしたが、フライフィッシャー多数が釣りの真っ最中。どこから入っても割り込んでしまう形になる。
仕方が無いので入渓点で腰掛けて追い抜いてもらい、その人の真後ろから釣りあがる事にした。
よっこいしょ。
・・・。
・・・。
まだこないな。
・・・。
・・・。
イライラ。
人が釣ってるの見てるだけって、スゲーつまらん!!
20分ほど待って、軽い会釈と共にようやく自分の前を通り過ぎて行ってくれた。
40mほど距離を開けてから、ようやく自分も釣り開始。しかし、ふと振り返ると後方100mの地点にフライフィッシャーが一人。対岸側にはもう一人。
一体何人川へ入ってるんだろう。
目立ったハッチが無いので、ブラックアントを結び、先行者が狙わなかったポイントを叩いて行く。
前を行く人が一つのプールでかなり粘ったので、それに合わせて自分もペースを落とす。人気河川って色々大変ですな。
20分ほどして、ようやくプールが空いた。アレだけしつこく狙ってたし、多分無理だろうと思いつつ、ザッと流してみると、アレレ?なんかフライ目掛けて浮いてくる影が複数ある。
立ち位置を変え、カーブキャストとメンディングを駆使して速い流れを回避する。
ゆっくりフライをくわえたのはアマゴだった。放流魚の面影がかなり残っていたが、やはり嬉しい。
まさかな・・・と思いつつ、流れをまたいだ狙いにくい場所を集中的に狙うと、2〜3度の空振り(流れが速くて魚がフライに追いつけない)を繰り返し、さらに1匹。
先程と同じような魚。しかし・・・言いたくはない。言いたくは無いが、自然渓流で、ついさっきまで別の人が狙ってたポイントで2匹引きずり出すってどうなん?
お れ 天 才 じ ゃ な い だ ろ う か ??
周囲は足跡だらけのポイントだった。
しかし、奴は気にする様子もなく、こう言い放った。
「あぁ。問題ない。いつものことだ」
軽やかに繰り出されたラインは、美しい流線型を描きながらフライを運ぶ。常人であれば、すぐに諦めるであろう難ポイントにフライが次々と打ち込まれていく。・・・いや、フライが吸い込まれていくようだ。
あぁ・・私は夢を見ているのだろうか。この男にかかれば、先行者の存在など、川面を無数に舞うカゲロウのようなものか。
そして、またフライに魚が飛び出す。
わかった・・・もうやめてくれ。
私は認めざるを得なかった。「天才」と呼ばれる者の存在を。
ウシャシャシャ! なんぼでも釣れまっせ! ここがC&R区間で良かったの〜〜、アマゴ達よ! 俺がキープ派の天才だったら、お前たち燻製にされちゃうよ。
しばらくして、別の場所から入ったと思われる釣り師が目の前に出現したので、支流を狙ってみたり一休みしたりで再度間隔を空ける。すると、上流の方から最初に出合ったフライフィッシャーが戻ってきた。
「どうですか?」
ここは控え目に言っとくのが礼儀ってもんでしょう。真後ろを釣ってて、プレッシャーかけたかもしれないので。
「ええ。ボチボチですね」
「あー、そうでしょう。どうも最近放流があったみたいで、流れに慣れてない魚が群れて渦巻いて泳いでましたよね」
て・天才じゃなかったー・・・_| ̄|○
どうりで魚影が濃いはずだ。イブニングを狙ってみたかったが、午前中の登山釣行もあって疲れていたので、少々早かったがここで引き上げることにした。
ユースホステルに先にチェックインしていた嫁さんと合流し、娘が起きるのを待って夕食に出発。
先にコンビニで酒とつまみ、歯ブラシと翌日の釣り券を購入し(ユースは小物持参が原則)3週間前と同様、観光案内所2階のレストランで地ビール全種類を制覇。
そして爆睡。
翌日、爽やかな秋晴れ。寝ている娘を起こさないよう、こっそりと抜け出す。
しかし川は昨日にも増して釣り人が増えていた。夏休みシーズンしか来たことがなかったけど、それ以外はやはり人が多いらしい。落差工のポイントを狙ってみるが無反応。
しばらく釣りあがってみたが、見える範囲で5〜6人釣ってたので早々に切り上げた。
何故か得意げ
嫁さんの両親・姉妹が旅行好きのため、1歳にもなっていないのに2府5県を旅した経験がある娘。知らない間に「旅行カバンの取っ手に乗っかって、一緒に運ばれる」という技をマスターしていた。
・・・お前、俺が知らんところで何教えられてるんだ?(汗)
あちこちの店を見て周り、昼食は再びソースカツ丼屋へ。今度こそ1年のお別れになるので、嫁さんと自分、二人が旨いと思った店に行くことにした。
それは前回も登場した「すが野」。少し並んだが、やはり旨かった。
ガロで食べた直後は「もうソースカツ丼は食えないっす」となったが、ここのはあっさりしていて胃にもたれない。
我々夫婦の中では、
1 すが野(飽きがこない感じで、あっさり系。いくらでも食える)
2 明治亭(ここも良い。ソースカツ丼以外のメニューも豊富)
3 ガロ(ボリューム満点。濃い目の味付けで若い人向き。大行列の出来る店)
という結論になった。アンデルセン、さくら亭、エリート、花洛etc...地元を含め、各方面からソースカツ丼の情報を頂いたが、さすがに全部回るのは無理。時間を掛けて開拓していこうと思う。
その後、1時間ほどロッドを振ってみたが上の写真ぐらいのアマゴ(何故か岩魚は全く姿見せず)がポツポツ釣れた。
今回は少々釣りが中心の旅行となったが、これから娘が大きくなれば、父親一人で釣りを楽しむわけにはいかなくなるだろう。
これからの太田切川への遠征は、家族サービスと釣りをいかに両立させるかの、管理人の奮闘記になっていくのかもしれない。