アマゴ発眼卵放流
2012年1月28日 三重県 安濃川 ボックス回収


 今回で7回目となるアマゴの発眼卵放流。
 自然の力の前に、大半の稚魚(卵)を死なせてしまう事態は少なからずあったが、それでも猛烈な大雨が降らなければ、アマゴの孵化率は毎年順調な数字を出してくれる。

 今回も、目立った大雨や予想外の河川改修工事はなく、無事ボックス回収の日を迎える事が出来た。

 当サイトのアマゴ発眼卵放流は、2007年より地元・三重大学の研究室との共同放流となっており、生存率や野生魚と放流魚の生息数(比率)について、かなり細かいレベルで追跡調査が可能となっている。
 2007年に2名の学生が安濃川での発眼卵放流・アマゴの棲息数調査を研究の題材に取り上げてくれた事が発端で、以後、毎年生存率や棲息数を調査できた事は、個人で放流を行っていた者からすれば、非常に運が良かったというべきであろう。この場を借りて、改めて感謝申し上げたい。


 初代の学生さん達は既に卒業・就職したが、熱意とやる気にあふれる学生さんが引き継いでくれた事もあり、今まで以上に興味深いデータを得ることが出来た。その学生さん(2代目?)も2012年3月で卒業、就職となるのだが、ありがたい事にこの日は調査を継続してくれる、3代目の学生さんが混じってのボックス回収となった。

ちなみに、この日のボックス回収作業で、私は一切水に手を触れていない。全て学生さん一任で、やった事と言えば横から余計な一言を入れたり、写真を撮っただけである(汗)
だってさー 俺がやったら学生さんの実習の機会奪うだけだしー ぶっちゃけー 水冷たいしー(←コラ)

まぁ、改めて言う事でもないが、発眼卵5000〜1万粒程度の放流であれば、二人が数時間作業するだけで事足りる。今回5000粒放流した孵化率は97.3%と概ね成功。
卵の仕入れ値と機材、、人件費を考慮しても、余程の大河川でない限り、5万円あれば必要十分。漁協の増殖義務履行方法、現状の増殖策(成魚放流)に、大いに疑問を抱く理由でもあります。

 

惰性で動くのを極端に嫌う私の影響か、安濃川での発眼卵放流は、毎年テーマを設けている。

それは、当初ではボックスの構造であったり直播きの効果だったり、最近は放流ポイントによる分散の傾向や、上流(堰堤上)から落ちてくる魚がどの程度の比率で混じるか、ある程度の大きさに育ったアマゴがどの程度移動するかなど多岐にわたる。

今回注目するのは「釣りによって採捕されるアマゴの、野生魚と放流魚の比率」と、「1カ所に集中放流した場合の稚魚の分布」が一応のテーマである。

と言うのも、発眼卵放流は孵化率・孵化後半年の生存率は、かなり高い数字を示す。ところが、梅雨明け〜8月の間に、その数は激減する事が分かってきている。
孵化直後、よちよち歩きの赤ん坊の時代を生き抜いたのに、過去の例だと6〜8月に一気に姿を消す。

高水温の影響が最初疑われたが、真夏に採捕されるアマゴが健康な肌つやをしている事、特に弱った個体が見られない事から、どうやら原因は他にあるらしい。
注目したのは、孵化7〜9か月後になると、指サイズのアマゴは釣れてしまうという事実。
そんな小さいのを持って帰る奴がいるかと当初は考えていたが、むしろ指サイズのアマゴは、天ぷらにすると頭から丸ごと食べられるそうで、ハゼの天ぷらと同じ感覚で大量にお持ち帰りする人がいるらしい。
私が確認したケースを含め、情報提供してくれた釣り具屋の店員さん、学生さんが確認した餌釣り師の方の魚籠の中身から推測すると、かなりの数のアマゴが夏前後に抜かれているようなのである。

加えて、神奈川県農林水産センターの研究レポート
やや古い研究報告だが、注目したのは電気ショッカーと釣り(タモ含む)による、放流魚(ALC標識で区別)が採捕される比率。

時期による差もあるかもしれないが、釣りで採捕したときの放流魚の比率が14〜88%(平均約52%)と高確率なのに、電気ショッカーだと0〜3.4%に激減している(ただし、この研究では最初に釣りで採捕し、後で電気ショッカーによる採捕を連続で行っているので、その間に釣りで抜かれている可能性がある)。

この内容からすると、卵から孵ったアマゴは野生魚に近いという図式は成り立たず、元が養殖魚のため、警戒心が低い=釣られやすいという仮説が成り立つ。逆に、釣られやすいから釣り人にとっては好まれるとも言え、野生魚の身代わりとなって釣られるなら、放流場所を上手く調整すれば、野生魚の個体数減少にブレーキを掛ける効果があるかもしれない。


7年やっててこの程度。徐々に分かってきたこともあるけど、他にどんどん疑問がわいてくる。
安価・高効率・低労力でアマゴを放流できることは分かったが、持続的に魚が釣れる川を維持するには、ソフト面(規則や漁協のルール)の整備が重要になってくるのかもしれない。


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