アマゴ発眼卵放流
2008年12月21日〜2009年1月18日 三重県 安濃川
〜放流ボックス回収〜

動画公開中


 動画で先行して何度かお伝えしていますが、2008〜2009年発眼卵放流が無事に終了しましたので詳細をご報告。



今回の放流も、三重大生物資源学部研究室チームとの共同で放流を行った事まではお伝えしましたが、放流効果の調査について、正式(?)に現調査員(4年生)から後輩(3年生)に引き継いで頂ける事が決定したようです。

ネット上で「発眼卵放流はしているけど、その効果はよく分からない」という記載をよく見かけますので、2007〜2010年に及ぶ今回の調査は、客観的に見てもかなり意義のある調査になりつつあるのではないかと思っています。


今回の放流は前回と同様1万粒。放流のために要した出費は、発眼卵購入費用2万円なり(研究室が半額負担してくれるので有難い)


放流方法・ポイントは全て前回と同じ内容で予定していたところ、放流直前になって支流の一つで砂防工事が始まり、その支流より下流部への放流は難しいとの判断。
結局、放流ポイントを散らすと共に、新しい放流方法を虫カゴ改造ボックスと平行して行う事となった。

それが”直播き”

要するに、卵を川底に埋める・・・つまり、自然の鮭鱒が普通に行っている方法を人の手で行うというものである。

ところが、安濃川の場合はその”普通”が通用しない。

鮭鱒の産卵に関する各種データによると、卵が産みつけられるポイントは、それなりの通水性が必要なのが当たり前の事のようである。
昨年、安濃川の川床が産卵に適したものであるか調査が行われ、私も立ち会ったがその結果は惨澹たるものだった。

「産卵場としては絶望的」

この時の調査は、その道では結構有名な研究者(教授?)による、墨汁を使った調査。
簡単に言えば、自然の魚が産卵しそうな場所で、

  @人の手で擬似産卵床を作る(川底を掻き混ぜる程度で代用可能らしい)
  Aそこへ墨汁が入った大型スポイトと空のスポイト数本を突き刺す
  B墨汁を注入
  C数十秒間隔で擬似産卵床内の水を吸い上げる


これで何が分かるかと言うと、ある程度の通水性があるなら墨汁が徐々に薄まり、時間が経って吸い上げた水ほど透明度が高まる・という寸法らしい。
無論、早く透明に近付く=水の透過が良い、と言えるのだが、・・・そう、ほとんど墨汁が薄まらなかった、つまり安濃川の川底の礫組成は、通水性が極めて低かった(小石でもなく砂でもなく泥の堆積が酷すぎる)のである。

分光機?測光機??を使って、吸い上げた水の透明度を細かく計測するとの事だったが、肉眼では区別できないレベル。ここに卵を埋めてもが酸欠で死ぬ可能性が高いことが容易に想像できた。

この時点で「自然産卵や直播きでは、孵化率がメッチャ低いんだろうな・・・」と思っていたのに、何故か今回の放流は「半分ぐらい直播きでやってみましょうか」という事に(汗)

「AとBを混ぜると、爆発して失敗する」という事前の調査結果があるにも関わらず、「よし、AとBを混ぜて本当に爆発するか試してみようというノリです。科学者って皆こんな感じなんでしょうか?(汗)


やる以上、あれこれ試す他ありません。基本的に全滅も已む無しで挑むので、卵が死ぬ原因を排除できれば新たな可能性を発見できます。
そこで、私が試したのはこの方法。

卵の位置を、石を使って川底より持ち上げる方法です。名付けてドーナツ型人工産卵床・・?
これなら酸欠で卵が死ぬ可能性はかなり低いはず。
一方、学生の皆さんは普通に埋めるだけ。正直、この時点では勝った!(孵化率・生存率)と思っていました。

直播きの効果を検証するには、死卵がどの程度発生したかを知る必要があります。そこで、卵は全て台所の三角コーナーネットに入れたのですが・・・これが惨劇を招いてしまいました。


12/21 直播きの孵化状況観察。

掘り返してみてビックリ。かなり多数の稚魚が生き残って泳いでいます。
一方で、死卵と並んで多かったのが、死んでしまった多数の稚魚。その大半が、ネットに挟まってのご臨終でした。

孵化率を調べるためには仕方ないとしても、このような形で稚魚が命を落とすとは・・・・合掌

ところが、一部直播きポイントでは8割以上孵化してそうなネットもチラホラ。しかも、学生さんらが行った”普通に埋めただけ”の場所でも高い孵化率を確認。

なんか違和感を感じたので聞いてみたところ、「ネットの中に、卵と一緒に礫(小石)を少し入れてみました」との事。

おぉい、ネットの中の条件は一緒にしようぜ(泣) つーか、そうしたなら事前に教えてよね!( ̄■ ̄;)

しかし、これである意味分かった感があります。発眼卵放流の孵化率を高めるには、死卵と健康卵をいかに隔離するか。これがかなり重要なようです。
市販品のバイバードボックス(メーカーが倒産して、もう買えないらしいけど)が何故2層形式になっているか、自作してる立場から見ても、よく考えられてると再認識しました。

結局、普通に埋めた(+死卵と健康卵が接触しないよう、礫も混ぜた)方法と、上記ドーナツ型は、6:4ぐらいで普通に埋めた方の勝ち。
卵がコロコロ転がるボックス内と違い、一度死卵からカビが発生した場合、直播きはその影響をもろに受けるっぽい。犠牲はあったけど今後の参考になった。

直播きネット回収日に確認した虫カゴ改造ボックス。ウヨウヨ泳いでます。これを見る限り、安濃川で直播きするメリットは少ないな。


1/11 生育状況観察。

今回の放流は、ボックス内に稚魚をなるべく長く留めておく事を計画していた。
過去の放流記録から考えていたのだが、稚魚を外へ出すタイミングが早すぎるのではないかとの疑問を感じていたためだ。

自然に産み付けられた卵は、小石の中でしばらく生活し、お腹の栄養分(ヨークサック)を吸収した時点で産卵床から脱出を始める(いわゆる「浮上稚魚」)。そのタイミングは、普通に考えたらヨークサックを吸収しきって、餌を食わなければならない時。

食わずに生きていける段階で、危険な外界に飛び出す理由はないはずである。

そこで、今回のボックス回収日は、いつもより遅めの放流10週目、約2ヵ月半後を念頭に置いていたのだが・・・。

暖かい日が続いてたためか、既にヨークサックの吸収がかなり進んでいる。この状態からさらに3週間置いておくと、今度は餓死の心配をしなければならない。
脱出穴があるとはいえ、基本的にはボックス内に長く留まる事を前提としたこのボックス。変なリスクを抱えるよりは、と言うことで、来週ボックスを回収する事とした。


1/18 ボックス回収日前に毎回雪が降るのは何かの呪いか??(汗)

ようやく冬らしくなったと思ったら、寒さが一気に本格化。
学生さんらと待ち合わせ、手分けしてボックスの回収に向かう。

今年は特に大雨や渇水に見舞われること無く、無事に孵化しているはず、と思ってボックスを開けると・・

隅に固まって、殆ど動かない稚魚の塊り(汗)いや、パッと見た感じはゴミの塊り

「ヤベー!!餓死したか!?」割と本気で心配し、ボックスをゆすったり叩いてみると、塊り全体がウニョウニョ動き始めた。
どうやら水温の低下に伴い、動けなくなっていただけの模様。全体の孵化率は、95〜99%と悪い数字ではなくホッと一息。

ボックスを沈めた周囲には、隠れ家になるよう小石が大量に沈めてあるので、その隙間に入り込むよう満遍なく放流。
こうしてみると大量の魚に見えますが、経費は1粒(1匹)2円なので、ボックス1つに500粒としても1000円分の魚です。

 少し嫌味な書き方をすると、1000円ってのは渓流釣りの日券で言えば安い部類に入りますよね。この1000円で、稚魚なら500匹放流できるわけです。
年券だと8000円という価格が多いでしょうか?これだけあれば、4000匹の稚魚を放流できます。

釣って楽しめる大きさに、全体の1割が生き残るのは難しいとしても、5%ぐらいなら可能性があるでしょうか。
上記の例で言うなら、日券で25匹、年券で200匹分のアマゴに該当します。
何が言いたいかというと、我々が支払っている遊漁料には、本来それだけの価値があると言うことです。

 そんな人間の事情には我関せず。懸命に泳ぐ稚魚たち。日本の渓流に、渓魚が溢れる時代はやってくるのでしょうか。目の色変えて根こそぎ持って帰るような事を止めれば、結構簡単に実現出来そうな感はありますけどね。


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