サイマー運河 Saimaan kanava 

 フィンランド東部の湖沼地帯,サイマーから水路を通ってフィンランド湾に出,その先ロシアやヨーロッパへ行きたいというフィンランド人の夢は古来ありました。

 しかし,サイマー湖とフィンランド湾との間は距離およそ42.5Km,海面との標高差が76メートルもありこの高低差をいかに克服するか,当初は自然の川を利用した運河であったため狭く,充分な川幅の確保など問題解決までには土木技術の発達を待たなければなりませんでした。
 最初のサイマー運河は,1856年(アレクサンデル2世の時代)に完成し,28箇所の閘門(閘門とは,船の上り下りを容易にする水門の仕組みで,川を2つの水門で堰き止め,その間に停船させたまま排水,注水して船を上流から下流へ,下流から上流へ水位をならす装置。パナマ運河のそれは有名。)が設けられていました。産業革命の担い手として Lappeenranta からロシアに近い Viipuri (Viborg)まで物資,旅客輸送の花形として重用されましたが,産業の発達とともに船舶の大型化が進み,運河の拡幅要求が出てきました。
 1920年代に拡幅改修工事が始まり,第2次世界大戦前までにその40%の改修を完了しました。この戦争のフィンランドの敗戦によって運河の下流約半分の領土をソヴィエトに取られたため工事は一時中断していましたが,1963年工事を再開し,1968年現在の運河が完成しました。
 新サイマー運河は, 8つの閘門があり,年間1.5〜1.8百万トンの貨物と700〜1,000艘のレジャーボートが行き来する国際運河となっています。

 港湾局ホームページ(フィンランド語) Satamalaitoksen kotisivuun

 現在ではフィンランド内陸とロシア・ Viipuri (Viborg) を結ぶ国際航路や閘門の上り下りの遊覧航路があり,後者の問合せ先は以下の通りです。

【問合せ先】

  Saimaan Risteilyt
  www.saimaanristeilyt.fi/eng/index.html
  Tel:+358-5-415 6955 Fax:+358-5-453 0220
  PL 134 FIN-53101 Lappeenranta Finland

Karelia Lines Tel:+358-5-4530 380 Fax:+358-5-4119 096

Matkustajasatama, FIN-53100 Lappeenranta Finland

 2001年8月中旬,Saimaan Risteilyt 社の観光船「 El Faro 」に乗って2時間の閘門体験航路を楽しんで来ました。写真はそのときの模様です。
 運河までは「これぞフィンランド」という湖水の美しい風景が続き,日本の観光地の遊覧船のように演歌が流れ,テープの観光ガイドにがなれることもなく静かに進みます。フィンランド一高い橋脚の橋(確か24メートル余)をくぐって,右に折れ,運河の流れ口に向かいます。途中右手にある大きなパルプ工場の臭い排煙を嗅ぐことになりますが,フィンランドの基幹産業であるのでこれは目をつぶって(いや,鼻を塞いで)あげてください。
 運河に入ると所々,右手左手に昔の古い細い運河が蛇行しているのが分かります。それにしても今の運河は昔の運河とは比較にならぬほど川幅が広くかつ深く,どれだけのダイナマイトを消費したか,また厳冬期の作業に携わった人々の苦労を考えただけでも気が遠くなります。
 まもなく前方に閘門が見えてきて静かに定位置で停船した。すると船尾の扉が閉まり,排水が始まります。この時多少舟が揺れるものと想像していたが微動だにしません。あっという間に排水し,閘門の12.4メートル下に沈んで船全体が穴倉の中に入ったように暗くなります。と思うと下流側の扉が開き,パッと明るくなって一段下流の運河に出ました。
 ここまでで約1時間,観光船はここでUターンしてまた先ほどの閘門に入り,注水,元の水位に上がり港に戻りました。
 往復2時間の船旅は快晴に恵まれ,久しぶりにのんびり,楽しい体験をしてきました。<料金大人60FIM(約1200円)>


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