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治療方針policy&FAQ

腎臓病・リウマチ性疾患について

方針イメージ

CKD(慢性腎臓病)は、腎臓病・糖尿病・高血圧・脂質代謝異常症・肥満・メタボリックシンドロームの治療が不十分な場合に合併してきます。
さらに、CKDは心筋梗塞梗や脳卒中といった血管疾患の重大な危険因子になっています。つまり、腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにもつながります。

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)とは
下記のいずれか、または両方が3ヵ月以上続いていることより診断します。

@腎障害:尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)があること。

A腎機能の低下:GFR(糸球体濾過量)<60ml/分/1.73m2。
*GFRは、血清Cr値、性別、年齢から日本人のGFR推算式(eGFRcreat)より算出します。

腎臓が悪く(慢性腎臓病)なって、尿毒症(末期腎不全)のために慢性透析治療を続けている人は、日本全国で約34.5万人おられます。

慢性透析療法を受ける人は毎年増加しており(図1)、特に1991年からは、毎年約1万人も慢性透析療法を受ける人が増えました。2008年以降、増加数は鈍化しておりますが、2019年は4,800人増えて、366人に1人が透析を受ける時代となっています。腎臓がこのように悪くならないように治療することが大切です。


腎臓病の早期発見・早期治療によって、腎機能がより温存出来るようになり慢性透析療法が必要になる平均年齢は、徐々に遅くなりました。(図2
慢性透析開始(導入)平均年齢は、1983年は52歳、1992年は60歳、2002年は65歳、2017年は70歳となっております。以前は、いわゆる働き盛りの年齢に慢性透析療法が始まったため、社会的・家庭的な仕事時間に大きな制約がありましたが、年々緩和されてきました。

慢性腎臓病には、
(1) 元々腎臓に病気がある場合(一次性腎疾患:慢性腎炎など)
(2) 糖尿病、動脈硬化症、リウマチ性疾患などの病気が腎臓を悪くする場合
(二次性腎疾患:糖尿病性腎臓病、腎硬化症、ループス腎炎など)
があります。
一次性腎疾患の“慢性腎炎”は、慢性腎不全で慢性透析療法を受ける人が一番多い病気でした。(図3)
ところが、学校検尿・健康診断によって慢性腎炎の早期発見・早期治療が行われて、慢性透析治療になる人(透析導入患者者)が少しずつ減りました。そして1998年,最も多かったこの病気の透析導入患者数が年間10,374人(年間透析導入患者の35%)No.2となり、さらに減少し続け、2019年は、年間5,575人(同15%)、20年間で半減しました。慢性腎炎の早期治療が、慢性透析療法の必要な末期腎不全になるリスクを減少させた事が分かります。

ところが二次性腎疾患の“糖尿病性腎臓病”は、日本の豊かな食料・生活状況を反映して糖尿病が増加したことにより、1998年、透析導入患者は年間10,582人(年間透析導入患者の35.7%)N0.1となり、その後も増加し続けて、2010年は、年間16,326人(同43.5%)にもなりました。

2008年メタボ健診が開始されて、糖尿病も予防と診断・治療の重要性が強く示される様になりました。2009年より透析導入患者の増加が食い止められるようになりましたが、横ばい状況が続いております。糖尿病治療薬は新薬も開発されて効を奏しておりますが、透析導入患者数の減少には生活習慣・メタボ改善がどうしても必要です。


“腎硬化症”は、全身の動脈硬化症を反映して腎臓にも動脈硬化症がおこり腎機能が低下してくる病気です。動脈硬化症になる危険因子は、肥満・メタボリックシンドローム、脂質異常、高血圧、高尿酸血症、糖尿病等、そして喫煙が上げられます。腎硬化症は慢性透析療法のNo.3の原因疾患でしたが、年々漸増して2019年透析導入患者は、年間6,330人(年間透析導入患者の16.4%)N0.2まで増えてしまいました。
“糖尿病性腎臓病”、“腎硬化症”の両者で慢性透析導入の過半数の58%にもなります。これらの病気はいわゆるメタボリックシンドロームに深く関係する病気であり、薬の治療だけではなく、生活習慣・メタボ改善がとても大切です。

“リウマチ性疾患”は、自己免疫異常により様々な臓器に炎症が起こる病気です。
“全身性ループス・エリトマトーデス(SLE)”は、リウマチ性疾患の中では腎炎を高頻度に合併して、ループス腎炎と呼ばれます。難治性のときは末期腎不全となり、1999年透析導入患者は、年間378人(年間透析導入患者の1.1%)でN0.6でした。その後、免疫抑制薬の開発により治療が進歩して腎機能が維持される様になり、2017年透析導入患者は、年間205人(年間透析導入患者の0.5%)と半減、N0.7となっています。

“関節リウマチ”では、多関節に関節滑膜炎が起きて関節が破壊されます。さらに、乾燥性角結膜炎(ドライアイ)、唾液腺炎(ドライマウス)、間質性肺炎等の関節外臓器障害を起こします。関節リウマチの治療が十分できなかった頃は腎障害により透析となった人もありました。
以前、関節リウマチは「抗炎症薬」のみで治療され、関節が変形して整形外科で手術治療された病気でした。近年、免疫異常を抑制する「抗リウマチ薬」が開発され、かつ早期診断・早期治療が進められた為、以前のように著しい関節変形を起こさず、ほぼ治癒状態(寛解)を期待出来るようになりました。
「抗リウマチ薬」は、@従来型合成抗リウマチ薬に加え、生物学的製剤であるAバイオ抗リウマチ薬、B標的型合成抗リウマチ薬と、めざましく開発され進歩しました。

CKD(慢性腎臓病)は、腎臓の働きがかなり悪くなるまで放置しますと、治療しても腎機能の回復は難しくなりますので早期の治療が大切です。CKD(慢性腎臓病)と診断された時は、どうぞ早めにご相談下さい。

食事療法を語り合いましょう

私が初めて食事療法に参加したのは、横浜栄共済病院に赴任して間もない頃でした。当時の栄養課長さんから糖尿病教室を開きたいと言われたのがきっかけでした。糖尿病について手書きのパンフレット作りから始め、糖尿病教室の講義をして、栄養士さんの栄養指導を聞き、試食会に参加しました。そして自分でも糖尿病食を続けてみました。まだ30歳になったばかりの食べ盛りで?とてもひもじい思いをしましたが体重は確実に減りました。この経験が今でも身についていて、患者さんの栄養指導の時に実感と共感がこもります。

腎臓・膠原病内科の診療をしてきましたので透析療法に多く関わってきました。糖尿病のコントロールが悪いために糖尿病性腎症が悪化して尿毒症になり、透析になる患者さんがどんどん増えて1998年には、新しく透析になる患者数No.1の病気になってしまいました。この危機的状態を大変心配しておりました。その後、メタボ健診・メタボ対策が実施された事もあり、増加傾向は鈍ったものの今でもNo.1が続いています。どうか糖尿病コントロールが改善されて腎症が進行しないようにと診療に携わって参りました。

糖尿病コントロールがうまくいかないとおっしゃる65歳男性が来院されました。45歳に禁煙され、当時は標準体重の53kgでしたが、その63kgに増加しました。55歳で糖尿病の内服薬治療を開始、10年治療して内服薬も3種類に増えましたがHbA1c 6.8%、空腹時血糖164 mg/dl、コントロールが良くないので心配と言われました。10kg増えた体重を食事療法で少しでも減量されるとインスリンの効きがよくなり、血糖が良くなることが期待できます。食事療法は、一汁一菜が基本で難しいことはありませんとお話したところ、毎月1kg減量、3ヶ月で3kg減量されて、HbA1c 5.5%、空腹時血糖117 mg/dlと改善しました。食事療法は厳しいですかとお聞きしたところ、良い結果をみると励みになるので頑張り甲斐がありますとおっしゃいました。

次の方は慢性腎臓病の37歳女性。18歳から治療していましたが、徐々に腎機能が低下して尿毒素のCr が3.4mg/dl(基準値の4倍)にもなりました。この腎機能の状況では食事療法での改善効果は難しいと思われましたが、一年かけ52kgから42kgまで10kgも減量されてCr 2.1 mg/dlまで回復されました。

治療のために薬を服用しますが、もう一つ、とても大切なのは食事療法です。食事療法だけでも治療効果が上がり、あるいは今まで飲んでいた薬が驚くほど良く効くようになることがあります。処方された薬を飲むことは比較的簡単ですが、食事療法ではカロリー、蛋白質、脂質、塩分などをどのように食するかを勉強しなければなりません。そして、食事療法で最も大変なのは習慣になった食事量を調節・減量することでしょう。食事は人生における大きな楽しみ、たっぷり食べ、ひもじい思いはしたくないと思われる方が多いからです。でも食事療法の効果を見れば関心を持たれる方も少なくはありません。

管理栄養士と共に「食事療法を語り合いましょう」。少しでも、薬だけでは得られない、良い治療効果が上がれば幸いに思います。    (2021年11月)



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