売れる詩?
ためいき


 「こうしなければ、詩は売れない」とか「読者を想定するべきだ」という某サイトの管理者の言葉を読んで、これは別にネット云々と関係なく昔から同人誌などでも語られてきたことなのだが、そういう言説を吐くひとがさっぱり売れていないのはどういうことなのか、何だか切なくなった。これは自分や自分を含むグループが、詩というジャンルの階層の上部にいるという自意識の表出以外の何ものでもない。たぶんそう語るひとは、そのことに盲目なのではなく、その空虚さに痛々しいまでに気づいていると思う。根拠がないからこそ何度でも反復される言説なのだ。

 自分自身が売れた実績がないとしても、せめて売れたものを明示的に説得力をもって語ってほしいと思う。そうしてもらわないと、こちらは根拠のあやふやな価値観を一方通行で見せられるだけで、こういう言説がまかりとおる限りは詩は絶対に売れないということを逆に確信するだけだ。いや、本音を言わせてもらえば、実際にそれで生活の糧を得ているわけでもないのに「売る/売れる」ことに執着することは或るローカルな空間でしか意味を持たない倒錯ではないのかと尋ねたい気がする。まず身近な、詩に何の興味もなく意味ありげなレトリックが通用しない他者に読んでもらうべきではないか。読んでもらうこと自体大変(それなりのコミュニケーションがなければ不可能)だし、もしそこで内容を問われたときどれだけ明確に説明できるか(先に言ったように身内的な薀蓄やニュアンスは通用しない)、それも経験しない書き手に外部なんかありえない。


TITLE:【批評・散文・エッセイ】売れる詩?
DATE:2004/08/11 03:24
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