四万十ちょっとだけ紀行(2004年8月25日〜28日)

その1 : 百々世庵(ももせあん)にて


8月も終わる頃、私と夫は、夏の旅行に出かけた。
今年の行き先は、高知県の四万十川。
私の住む香川県には、大きな河川というのが一本も無い。
だから、もう、四万十川なんて憧れの大河だ。
この川で、カッパになって遊ぼう♪
という計画なのだけれども・・・・・・・・・・・・・・・。

この時
台風16号は、沖縄方面から、ジワリジワリと九州・四国をねらって北上中だった。
果たして旅行は、無事遂行されるのであろうか?
と、
一抹の不安を抱えながらも
JRは、四万十川の玄関口、高知県中村市に到着。
私達は、そこからレンタカーに乗り換え、上流の西土佐村へと向かったのだった。





さて、今回の旅のお楽しみのひとつは、この西土佐村の宿にあった。
ちょっと変わった宿なのである。

宿の名前は<百々世庵(ももせあん)>。
何故に<百々世>かと言えば、それは、その宿が、築100年の古民家だから。



↑これが全体像。 で、↓が、入り口付近。





↑玄関を入ると、こんな感じ。

この民家を、二人で丸々一件貸ししてもらえると聞いて、私は飛びついた。
なにしろ、宿泊費がムチャクチャ安かったのだ。
大人二人で2泊3日=1万1千円。

ということは、大人一人一泊2750円。
どうです?安いでしょう〜〜〜??

もちろん、リーズナブルなのにはちゃんとわけがあって、ここでは



↑このように自分達で自炊し、かつ風呂も焚かねばならない。そしてその風呂というのが



懐かしい〜〜〜〜〜い!
と言ったあなたは、
おっさん・おばはん。たとえ若作りしていようとも!

そう、薪で焚く五右衛門風呂なのであります。


さて、常々私は、自分が
<日本が貧乏で不便だった時代を知っている、ギリギリ最後の世代>ではないか?

と思っているのだけれども
なにゆえにかと言えば
例えば、私が小学生の頃、各家庭にはまだ電話が無かった。
集落には<公衆電話の置いてある家>というのがあって
電話の無い家の者は、そこへ電話をかけに行っていた。
そして
私の<育てのおじいさん・おばあさんの家>というのは、まさにその<公衆電話のある家>で
今でも、玄関に鎮座していたピンクの公衆電話は、記憶の底に鮮明にある。
また、
TVは白黒が当たり前だったし
もちろん、TVの無い家も、あったっけ。
そして
五右衛門風呂。
私が小学校の2年生の時まで、我が家の風呂は、これだった。
育てのおじいさん・おばあさんの家も、もちろんこれで
両親や、おじいさん・おばあさんが薪で風呂を焚くのを、私は横でよく眺めていたものだった。
同年代の夫も、
小学校4年生までは、この風呂だったという。


その五右衛門風呂。

ところが、私は、この風呂を焚いたことが無いのだ!

理由は、私が風呂を焚くには幼すぎて、親がやらせなかったこと。

だから

私は、ネットで百々世庵のHPにたどり着き、「この風呂を自分で焚いて入る」と知った瞬間

「絶対にここに泊まるぞ!」

と決意した。
人生で未体験の風呂焚き、
是非ともやってみたいじゃないですか!!!!!



かくして、宿泊初日



夫はおさんどん、私は念願の風呂焚き係である。
薪やら<たきつけ>やらは、
この宿の持ち主で管理人でもある方が、ちゃーーんとすべて用意してくださっているので、私は焚くだけ♪
・・・・・・・と言っても、やはり物事にはすべて<コツ>があり
初日の私の風呂焚きは・・・・・・・・・・・・・・・。

失敗だった。

ぬるかった。

最初はちょうど良いお湯加減だったのだけれども、
水を足しながら入っているうちに、どんどんぬるくなっていって・・・・・。
そう、
これでやっと思い出したのだけれども
五右衛門風呂って、
最初は熱くて熱くて入れないってくらいまで、ボンボン湯を沸かさなきゃいけないんだった。
そして、
最後の人が風呂に入り終わるまで
炭になった薪が、釜の下で、真っ赤になって燃えていなくてはいけないんだった。
最初の人の入るお湯が沸いたからって
火力を落としてはいけないんだった。
そうだった。
だから子供の頃のお風呂は、最初、本当に本当に熱かったっけ。
それを、水でどんどんうめて、ほどよくして入っていたんだったっけ。
でも、入っているうちに
炭の火力で、また、どんどん熱くなっていってたっけ。
そうだ、そうだよ。

「全然なっとらん!」

小1から小4まで、家で風呂焚き係をやっていたという夫に教育的指導を受けてしまった、ワタクシ。

なんでもやってみんとわからんもんやのう・・・

と思いつつ



流れる煙をボンヤリ眺めた、夕暮れ・・・。
<おしん>なら、ここで涙のひとつも流していることであろう。

もちろん、休暇中だからこそ、こんな呑気な風呂焚きをやっていられるのであって
これが普通の日常だったら・・・
しんどいですよね。
仕事から帰って来て、この風呂を焚かなきゃならないっていったら・・・・・。
ああ、両親も、大変だったろうなぁ・・・
としみじみ思った、夏の終わり。





それはともかく、なんとも風情のあるこのお宿。
一日一組しか泊まれないけれど、年中大人気で、特に子供連れのお客さんには、大好評だとか。
わかる気がする。
五右衛門風呂といい



↑畑で野菜を取ってきて、ご飯を作ることといい



↑夜は、蚊帳吊って寝るし、もう、まんま<となりのトトロ>だもの。そりゃあ子供は喜ぶわ。


というように、子供にとっては、とっても素敵な宿なのだけれども
大人にとってどうか???と言えば・・・・・
自炊し、風呂を焚き、自分で洗濯して干す↓



というような、あまりにも日常的なことをやっているうちに、とうとう夫が言い出した。

「いったい俺らは、何しに来たんじゃ???(これが旅行か!?)

何しにって、五右衛門風呂を焚きに来たのに決まってるじゃん!!


そんな百々世庵。



散らかってて・・・いや、散らかしててすいませんけれども、部屋はこんな感じで



雨が降れば、こんな傘も用意されております。
番傘なんて、TVの時代劇の中でしか見たこと無かったけれど
さしてみたらば、ものすっっごく重かった。お年寄りや子供には、ちょっと大変な傘のようです。


こんな、高知の西土佐村の百々世庵。
興味がわいたら、是非一度お泊まり下さい。
もちろん、囲炉裏もあります。
私達は、暑いので使わなかったけれども。
蚊取り線香入れは、ちゃんとブタで、
でも、トイレは水洗にしてくれてます。


          
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