おまけのこぼれ話


方言というものは強烈である。
ある地方でお年寄りの会話を聞いていたら
会話中、たったひとつの単語しか聞き取れなかった・・・ということもあるくらいに強烈。
我が香川県の方言も、県外の方には「???」だろうけれど
沖縄の言葉もまた強烈だ。

かつて初めて石垣島へ行った時のこと。

私と夫はレンタカーを借りて石垣島を一周していた。
道端にはバス停がある。
これは全国どこでも見るような、丸い表示板に名前が書いてある、ごくごく普通のバス停だ。
<上原>とか<米原>とか、そういう地名を眺めながら、我々はドライブを続けていた。
と、我々の前にとんでもない名前のバス停が現れたのだ。



<ヨーン>。


思わず急ブレーキを踏みそうになってしまった!
いったい、何なんだ!?今のは!???

って、何って、<ヨーン>なのだった。
瞬間、私の頭の中には、せんだみつおが現れ(谷啓だったかな??)
<ガチョ〜〜〜〜〜〜ン!>などというギャグをかまして去って行ったのだけれど
もちろん、このバス停が、そういうギャグなわけがない。
では、何なのよ??ヨーーーーーーンって???????


この答えは、以外にあっさりと見つかった。
沖縄出身の小説家、池上永一さんのファンタジー小説<バガージマヌパヌス>というのに
この<ヨーン>が出てきたのだ。
池上さんの小説によると
<ヨーン>とは<闇>の意だと言う。
・・・そういえば、<ヨーン>のバス停のあたりは、琉球松が生い茂り、昼間でも日が差さず
とても暗い感じのところだった。
そうか、闇なのか。

<ヨーン>→<闇> なら、標準語に照らし合わせても、なんとなく変化がわかる気がする。
先に書いた、小説のタイトル
<バガージマヌパヌス>も、標準語では<我が島の話>という。
バガージマ→我が島  ヌ→の  パヌス→話
と、注釈が入れば、標準語とそう遠くないのがわかる。
カタカナで書くといよいよわからなくなるが、実は、そんなに素っ頓狂な方言でもないのかもしれない。
沖縄の言葉も。
が。


昨年の冬。
沖縄で出会ったあの人名は、充分に素っ頓狂であった。

<カマドメガ>さんである。
沖縄タイムスの訃報欄に名前が載っていた、オバァ。
カマドメガ。
カマドはわかるけれど、この<メガ>はいったい何なの??と聞きたい。
そういえば、先に書いた<バガージマヌパヌス>の登場人物にも、カニメガというおばはんがいたっけ。
これも、カニは、あの食べると美味しいカニだろうけれど、メガとは??
てなわけで、昨年来悩んでいる高橋である。
ネット上で色々調べてみたけれど、<メガ>が何か
ついにわからないままここまで来てしまった。 
よって、今年の沖縄旅行には、期待するものがあったのだ。<What’s カマドメガ??>
宿泊先の民宿の人に<カマドメガ>の謎を聞くぞ!と期待していたのだ。
しかし・・・・・・・。


聞けなかった。
宿にものすごく宿泊客が多かったり、台風襲来でドタバタしたり。
聞くチャンスをものにできないまま、旅行最終日まできてしまったのである。
こうなれば最後のチャンスは、那覇市内から空港へ向かう、タクシーの運転手さんに聞くしかあるまい!
と、果たして、乗り込んだタクシーの運転手さんは、私と同年輩くらいの女性。
名前は<新垣>さんという、沖縄出身に間違いないような方であった。ナイス!!
さて、気さくに沖縄の料理のことなどを話しかけてくださる新垣さんに
私は思いきって聞いてみたのだった。
「カマドメガってどういう意味の名前ですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聞いたことないですぅ。そういう名前。」
というのが新垣さんの答え。
ウソォ!??と思ったけれど本当なのだった。
沖縄でもかなり年配の女性の名前がカマドメガ。
そう、年配だとは思っていた。
以前、NHK沖縄局の若者向け情報番組<島ゾーリで行こう!>(島ゾーリ→ビーチサンダルのこと)
の中に、<カマドさんを捜せ!>というコーナーがあったから。
カマドさんというオバァですら、捜さなくてはならないくらい希少種だったのだ。すでに。
ましてや、カマドメガさんは。
沖縄育ちのタクシーの運転手さんですら、聞いたことがない名前になってしまったらしい。ああ・・・。


というわけで、宿題は次回に持ち越されることになった。無念。
どうやらこりゃ、博物館かどっかで聞いた方がよさそうな・・・・・・・・。
 



その変わりと言ってはなんだけれど
<トニーそば>の謎は解けたのだった。

<トニーそば>。
<エピソード3>に登場した、謎の看板のメニュー



これである。
こういう看板が、後で気がつけば、港近くのあちこちに打ち付けられていたのだった。
こんなものを見て、そのまま帰れるほど、私も夫も大人ではない!
なので、看板に書かれた地図(写真では見えないですが)を頼りに捜した。
トニーそば・・・じゃなかった、栄福食堂を。

トニー・・・・・・・・。
店のおっさんの名前がトニーなんだろうか??????
などと考えていた私の貧しい想像力は、実際の店の前で、あっけなくはじけ飛んでしまった。
トニーとは



そう、この店内に貼りまくられた写真がすべてを物語る。
夭折したかつての日活映画のスター、赤木圭一郎のことだったのである。
店のおばさんが、ファン倶楽部の会員なのだ。
今でも<偲ぶ会>に参加するほどの、熱烈な。
そして問題の<トニーそば>は、八重山そばの上に、豆腐がトッピングされたそばのことだった。
豆腐→トニー ということだろうか??<と>しか一致してないけど。
看板に<島一安い店>とあったのは本当かもしれない。
なにせ、トニーそばは一杯300円。
さぬきうどんの値段に慣れた私でも、安いなぁと思える値段だった。
ああ、でも、なんてヘンテコな・・・。


というように、興味のつきない沖縄。
今年の旅もやはり面白かった!!です。
<沖縄ヘロヘロ旅行記>はこれにて完結。
最後まで読んで下さって、本当にありがとうございました。


   
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